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最期の瞬間まで”私”であるように

こんな場所が本当に日本に存在するのかと疑いたくなるほど、あたたかい介護施設をつくった、パワー溢れる人物を紹介をしよう。

株式会社『いろ葉』

生き方、活き方、逝き方の
三つのイキカタを支えることを大切にしています。

株式会社いろ葉代表・中迎聡子

はじまりは、2003年4月
3年間特別養護老人ホームに勤めた聡子さんは、鹿児島市に「宅老所いろ葉」を開所しました。
そこから20年、今では、デイサービス、有料老人ホーム、訪問介護、介護タクシーなど、幅広い介護事業のほか、就労支援、子育て支援事業など、地域の人たちの暮らしを支えています。

そんないろ葉が支える三つのイキカタを紹介しましょう。

「生きる」を支え、「死」を支える

一つ目の生き方

いろ葉が支える一つ目のイキカタは、その人の物語です。
人にはそれぞれ、歩んできた人生があり、生まれた時から今現在まで、一分一秒物語をめくっては、そのページに色をつけてきました。

わたしたちと出会ったことで、利用者さんの色がそれまでと違うものになっては困ります、と、聡子さんはいいます。

だからこそ、その人が大切にしてきたものを変えることはないのでしょう。いろ葉は利用者さんひとりひとりが生きてきたストーリーを大切にしているのです。

二つ目の活き方

二つ目のイキカタは、その人の生活習慣の尊重です。人にはそれぞれ、生活のルーティーンやスタイルのこだわりがあって、それぞれ大事にする部分は違っています。ベッド派か布団派か、お茶派かお水派か、なんて、一見小さなことかもしれませんが、本人にとってはとても大切なことだったりします。いろ葉では、その人のタイミングでその人のやり方で、その人の時間の流れを決して止めてしまわないよう日々支えているのです。

三つ目の逝き方

そして、最期は死に逝き方です。お年寄りさんの望む最期の時をサポートします。いろ葉が大切にするのは、今まで人生を共にした自分のお家で最期を迎えたい、のたれ死んでも最期の瞬間まで俺のままでいたい、最後まで治療に専念したい、それぞれの描く最期の姿を尊重してあげたいという想いなのです。また、死に逝き方を尊重することは、その家族を支えることにもつながるのです。

いろ葉の誕生

こんなたくさんの想い溢れる場所、もとは、ひとりのおばあちゃんのためにつくった場所でした。

聡子さんが介護の世界に飛び込んだのは、大学を卒業してすぐのこと。自分のやりたくないことをやってみようと一般的な施設で働くことを決めました。その現場は、まるでお化け屋敷のような、やりたくないことだったイメージそのままの世界。決まった食事の時間に、食欲関係なく食べなくてはいけない量、心地の悪いオムツ、やはりその現場を目の当たりにすると心が痛かった、聡子さんにはとてもショックなことでした。

そんな中、聡子さんにある叫びが聞こえたのです。

「人間になりたい。」
それは、他の誰でもない、はじめて担当したすみえさんというおばあちゃんの声でした。

施設での生活が、このままだとすみえさんという一人の人として最期を迎えられない気がしました。
どんなに体が不自由であっても、たとえ認知症になったとしても、その人がその人であることは変わらない。すみえさんがどんなに怪獣みたいに叫ぼうが、すみえさんはすみえさんなのに。どんなに月日が経っていっても、この世にたった一人の、これまで一生懸命生きてきたすみえさんには変わりないのに。聡子さんの心はそんな想いで溢れ出したのです。

優しくされて最期を迎えるとかいうことではなくて、その人が一人であろうと、多くの人に見守られようと、その人が”わたし”として死んでいける世の中であってほしい。自分だったらそういう風に死んでいきたいと聡子さんは思ったのです。

自分がそういう風に最期を迎えられるということは、自分以外の人もそうであるということ。そしたら、目の前にいるすみえさんがそういう最期を迎えられない状況にあって、そんなの嫌だと思った。
自分がどんなに頑張ってきても、大切に毎日を過ごしてきても、最期に、身体が不自由だとかなんとかいう理由で、なんかもうAさんBさんみたいな、最期を迎えさせられるの、苦しいじゃないですか。

そんな聡子さんの人間性と、すみえさんという女性の存在が、今のいろ葉を創ったのです。

介護戦隊いろ葉レンジャー

いろ葉では、働くスタッフのことを「いろ葉レンジャー」と呼びます。

いろ葉での節分の様子

個性豊かで、趣味も性格もみんなバラバラ。スタッフも一人ひとりが自分の生き方をしています。全てができる人ではなく、それぞれの得意、不得意を補い合って、チームワークががまさに「いろ葉レンジャー」なのです。

聡子さんは、スタッフに対し、お年寄りさんと向き合っていく中で、その人の人生を丁寧に紐解いていき、それをたぐりよせ、つむいでいくことで、いろ葉なりの支えるカタチをつくっていくことを伝えています。

聡子さんの言葉

すみえさんのために作ったいろ葉だったんだけど、いろんな人に出会っていくうちに、気がついたら多くの人に必要なものになってました。介護施設を継続するためにやってるんじゃなくて、たまたま出会ってしまっちゃってるから今もいろ葉があるだけ。そうやって、出会いの連続で続いているのがこの場所なんです。

彼女の純粋な美しい、あたたかい想いは、20年経った今でも変わらずいろ葉の介護のカタチに現れていました。

わたしも、聡子さんの、縁あって出会った人を大切にする精神は本当に見習いたいと思います。



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