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『三体II 黒暗森林』 上、下

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本の紹介をします。


劉慈欣著 『三体II 黒暗森林』 上、下 大森望 / 立原 透耶 /上原かおり/泊功訳


『三体』第二部は、文庫本だと上下巻に分かれているので、2冊紹介する。

第一部では、日常生活から一気に宇宙規模まで連れていかれる壮大なスケール物語で始まった。
続作となる第二部は、第一部をベースにさらに重厚な物語が描かれている。

感想は、思い切りネタバレありで書いてます。




ざっくりあらすじ

第一部で、地球侵略の危機が450年後に迫っていることを知った人類。
智子(ソフォン)によって、人類の見聞きする情報は敵対する三体人に筒抜けであることが判明。

第二部では、作戦として面壁者(ウォールフェイサー)が立てられる。
人類の中から4人が選ばれ、彼らは智子(ソフォン)に知られず、彼らの頭の中で対策を立てる。

<面壁者>
羅輯(ルオ・ジー)……もと天文学者で、社会学の大学教授
フレデリック・タイラー……もと米国工房長官
マニュエル・レイ・ディアス……前ベネズエラ大統領
ビル・ハインズ……科学者で、もと欧州委員会委員長


作戦が立てられた以上、次に出てくるのは破面者(ウォールブレイカー)である。
約400年後に地球に到着する、三体人と人類の新たな頭脳戦、心理戦が開始される。


感想

第一部をネタバレなしで書こうと思ったら、何も書けなくなってしまったので、今回はネタバレして感想を書く。
※自分で読んだ方が絶対に面白い。

第二部の頭脳戦と伏線回収は、イスから落ちる勢いだった。
戦いばかりかと思いきや、第二部では愛も出てくる。
壮大なスケールと、各人の持つ背景やストーリー、その出来事など。

第二部でメインキャラクターなのは、面壁者の1人である羅輯(ルオ・ジー)だ。
なぜ第一部とメインキャラクターが変わるかって、第二部の途中で時間が200年ほど経過しているからだ。
スケールもすごいが、時間もそれなりの規模を要している。
この物語の壮大なスケールは、時間と空間が織りなすものでもある。

逃亡主義の会話(地球から脱出推進派)

「……人類はみな平等であるべきだ、そうだろ?エリートだからって、無料の昼食にありつけるっていうのはおかしいだろ」

劉慈欣著『三体II 黒暗森林』上 大森望 / 立原 透耶 /上原かおり/泊功訳、75頁。

地球からの脱出を試みていた苗福全、楊晋文、張援朝3人の会話から。
人類の危機に瀕していても、その中でさらに誰が選ばれるのかが常につきまとう。

有識者が残るのか?
裕福者が残るのか?

たった一言の返答だけれど、格差社会を表現するのに十分なところが興味深い。
これが地球上だけでないというのが、この物語の良さ。
常にこの危機感がつきまとう。

第一部でも活躍した、もと警察官の史強(シー・チアン)の羅輯へのアドバイス。

相手に目をつけられないこと。莫迦な小者で、なんの障害にもならないと思わせておけ。あってもなくても気にならない、壁の隅にたてかけた箒みたいな存在だというふりをしろ。いちばんいいのは、まるで存在しないみたいに、相手に気づかれずにいることだ。相手をひねりつぶす最後の一瞬まで、自分の存在を気づかれないようにしろ。

前掲書、128頁。

このアドバイスに私は色々同意しつつ、物語内では、しっかり羅輯が最後に回収している。

思考が外にバレないよう、孤高の存在となる面壁者には、強いストレスがかかる。
一切、表に出せない。
その作戦は、地球の人類の将来を抱えるものだ。
最初の印象に比較すると、羅輯は1番大きく成長している人物だと思う。


愛について
羅輯が以前、付き合っていた彼女は、小説家だった。
その彼女に、1番の理想像(キャラクター)を創造して物語を書いて欲しいと言われる。
天文学専門だった彼は戸惑うが、「理想像(ある女性)」が頭の中に存在するようになる。
それからしばらくして彼は別れてしまうが、面壁者となった後、この時に思い描いた場所と、本当に存在する「理想像の女性」に出会う。
それまで、空虚だった羅輯が初めて愛することを知ったところだ。
家庭まで持つが、三体人との戦いが迫っている現実がある。
面壁者としての責任を果たすべく、作戦を頭の中に保持したまま、冷凍保存されて、200年の時を超えることとなる。

物語を書こうと思い、描いた場所や理想像が本当に存在したら?
そんなことを、宇宙という壮大なスケールの物語にさらりと書いてある。

キャラクター
今回は、この壮大なスケールの物語を想像してみたり、キャラクターの気持ちを考えてみたりもした。
そういうわけで、今回好きなキャラクターが出てきたので紹介。

章北海(ジャン・ベイハイ)
軍人で、200年先まで見据えて、たった1人で任務遂行まで運んだ。
一時は反逆者と疑われるが、しっかりと彼自身が見据えた作戦までは完了させる。

完全なる成功とはいかなくても、人生を賭けたりするような、大きな伏線回収作戦は1人きりのことが多い気がする。
誰にも知られずに抱え込む重荷が、どれほどのものであるかは想像出来ない。

物語の首尾一貫
プロローグでは、第一部の冒頭に出てきた葉文潔(イェ・ウェンジェ)がアドバイスをしている。

宇宙社会の公理2つと、「猜疑連鎖と技術爆発」。

ここでの会話と同等の描写が最後に出てくる時は、圧倒されるだけだ。
この壮大な物語を、この一文がすべてを繋げて引き上げる。


『三体』は、とにかく壮大なスケールと膨大な量。
SFとしてはもちろん、ミステリ要素も面白いので、おすすめ!!
第三部が待ち遠しい。





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