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【試着の旅】私を表現する香水探し③

鼻が利かないという事実を前にして「私を表現する香水」を探すのは果てしない道のりだ。
それでも、その運命の香水を探す旅を続けてみることにした。


伝えなければ伝わらない

フエギアの世界に触れてみて、もう少しフエギアの香水を知りたい、このたくさんの中からたったひとつの私の香水を見つけたいと思った。
だから次の有給休暇でまた行ってみた。

前回と同じく平日の、開店してすぐ。
今度は接客していない店員さんがいて、すぐに声をかけてくれた。

独特なお店の雰囲気に慣れたのと、こちらの希望を言葉にして伝えなければ店員さんからのアドバイスももらえないことを前回経験したので「この季節らしい(当時は6月中旬、暑さを感じ始める頃だった)スッキリとか爽やかな印象のものを探している」と伝えた。

前回の説明から季節を加えたのはパーソナルカラーやなりたいイメージから私の軸を初夏だと決めたから。
「私を表現する」のなら季節感も必要だと思ったのだ。

店員さんからは「どんなシチュエーションで使うのか」「そのときどんな気持ちになるような香りを求めているのか」など前回と同じようでいて、より具体的なイメージを問う質問をいくつかされた。
その質問に答えていくうちに「仕事の合間に漂ってきたらリフレッシュのきっかけになるような、深呼吸したくなる香水が欲しい」という共通認識を得ることができた。

その後も私のイメージを読み取り「なるほど。お茶を飲んでふーっ、と息をつく感じですね」という店員さんの言語化能力が見事すぎて、そうです!と頷くことしかできませんでした。

問われたことに拙く曖昧な表現でしか答えられなくても、真摯に聞いてくれて具現化(言語化)しようとしてくれる店員さんと話が弾み、楽しく有意義な時間を過ごした。

人見知りの私が、初対面の人にこんなに自己開示をしたのは自問自答ファッション講座であきやさんからインタビューを受けたとき以来だ。

いくつかお勧めしてもらった中から選んだのは前回とは違う香りで、また肌に纏わせてもらって帰宅した。

旅は混迷を極める

前回の経験から試着(試香)に行く際には課題を決めておくと取り組みやすいことにも気づいたので「今日の暫定1位を決める」つまり「今日買うならこれだと決める」という課題を持ってお店に向かい、達成したらお店を出ると決めていた。

香りは記憶に残しにくいので、少しでも鮮明なうちに記録を取るようにした。
前回は「爽やか」を柑橘系のイメージで捉えて選んだが、今回は香りを纏いたい状況が前回より具体的になったことで、柑橘系ではなく草原にいるようなハーバルな印象を持つものが良いようだと店員さんからアドバイスをもらった。

それは例えば、ラベンダー畑のような。

爽やかでリフレッシュできそうなイメージ

とはいえ甘さを感じるものも捨てがたいし、ここで決めてしまうにはまだまだ経験値が低い。
もっと「これだ!」という感動が欲しいし、何より求める香水に対する解像度を上げるためにもう少しいろんな香水を体験してみたいと思った。

まだ、一歩を踏み出したばかりだから。

フエギアにはその後も下調べして気になった香りを見つけてはお店に出向き、自分の肌で試させてもらった。
その都度対応してくれた店員さんにお勧めを聞き、試したりもした。
教えてもらった香水の背景(コンセプト)や付けられた名前に魅かれたものもあったけれど、決め切れなかった。

香りで選ぶのではなくコンセプトから選びたくなるような素敵な意味が込められていることを知ってますます選ぶのが難しくなりました。
とはいえ店員さんから聞かなかったら付けられた名前にこめられたコンセプトも分からないままだっただろうと思うと、世界感を知ることができて良かったです。

そこで、視点を変えてみることにした。

私が欲しいのは何なのか

そもそもの話に戻るのだが、私は鼻が利かないし、相方は私が香水を纏うことを快く思っていない。

相方は私が香水を午前中に纏ったとしても、夜に帰宅して玄関を開けた瞬間にその香りに気づく麻薬探知犬(!)のような鼻を持っています。

私たちの妥協点はファブリックミストなので今私が探している香水は実際には纏うことができないかもしれないのだ。

それが分かっていても、香水探しの旅は止められなかった。
これは香水という形をした私らしさ探しだと分かっていたからだ。

実際に纏うことができなくても胸を張って「私の香水はこれです!」と言えるものが欲しかったのだ。

ところが、季節が初夏から夏に変わる頃、体調を崩して香水探しの旅に出られなくなった。
体調が良くても利かない鼻がさらに利かないような気がしたし、何より旅に出る気力も体力もなかったので香水探しもここまでか、と何度目かの諦めの気持ちに支配された。

そんなある日、ボディミストという存在に気づいた。

香水に比べて値段も手頃で、香りの持続時間が短い(1~2時間)というので相方に気兼ねなく纏うことが出来そうだと思った。
ファブリックミストから自分だけの香りへ一歩進められることもあって、ここが新しい妥協点ではないかと思い始めたほどに。

それが終着点か

何度も通ったからと言って、個人的には来店へのハードルが高いままだったフエギアに比べ、ボディミストを売っているお店はもっと気軽に足を運べるところにあった。

そうして何度か通っているうちにデパートの香水コーナーにも立ち寄る気力が出てきて、事前に下調べして良さそうだと思ったブランドの香水を試したりもした。

その中には相方も「これならいいよ」と言うような優しい香りの香水もあって、休日に出掛けたときには店頭で私の肌に載せた香りを一緒に確かめてくれたりもした。


ボディミストをいくつか試すうちに自分の好きな香りの傾向が掴めたし、香水も好みや相方の反応を含め、これかな?と思えるものを見つけることができた。

ただ、その香水を心から手に入れたいとは思えなかった。

「・・・よし。
このボディミストを日常的(業務中)に使って、相方との生活もあるから香水は概念としてこれが私(の香水)と決まったということで旅を終わりにするか。」

そう思ったときに、ふと頭を過ったのは「本当にそれでいいのか?妥協ではないのか?」という心の声だった。

フエギアの世界観や、あきやさんやガールズたちの香水選びに憧れて始めた香水探しなのに、香水を持たずに終わっていいのか。

実際には使えないかもしれないけれど、これが私だと、心から欲しいと思う香水を探し出さなくていいのか、と改めて自分に問いかけてみた。


答えは即座に出た。


こんな(旅の)結末は嫌だ
だから、旅の始まりであるフエギアへもう一度行ってみることにした。

そこで運命の香水が見つかるのだが、それはまた次のお話。

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