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歌モノ曲のつくり方 *パターン別* 私的な思想ダダ漏れ篇 その壱☆

こちらの追加。おまけです。私的な思想ダダ漏れ篇ですです。

歌モノ曲の歌詞は「音」

作詞を先にやる!(詞先)

の私的な思想です。

例を挙げます。

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみに……

中原中也の詩です。現代詩ですね。

現代詩は活字です。もちろん「音」にフォーカスした作品もありますが、基本的には紙の上に載せられた文字なんです。

歌モノ曲の歌詞は「音」。

その点、歌詞は「音」ありきで成立しています。
「汚れちまった悲しみに……」を1文字ずつに分けてローマ字表記にします。

yo go re chi ma tta ka na shi mi ni
kyo mo ko yu ki no fu ri ka ka ru

音の数を調べると、
1行目が「11」文字、2行目が「11」文字。偶然かどうかわかりませんが、同じ音数です。これを元の日本語(ひらがな)で切り分けてみます。

よごれ ちまった かなしみに
きょうも こゆきの ふりかかる

下に文字数(音数)を付けると、

よごれ ちまった かなしみに
3             3                5
きょうも こゆきの ふりかかる
2                 4                5

単純に言えば、この音数に合わせてメロディを当てはめればいいんです。

日本語の場合はひとつの音がハッキリしています。これは日本語の大きな欠点とも言えます。ふたつの音をひとつにするのが難しい言語です。こればかりは仕方がないですね。この例で言えば、ムリヤリっぽいですがこんな数え方もできます。

よごれ ちまった かなしみに
3             2                5
きょうも こゆきの ふりかかる
3                 4                5

「ちまった」を「chi matta」として2文字換算。「きょうも」を「kyo o mo」と3文字で数える。このあたりの音数の減らし方、増やし方は自由です。他にも「ふりかかる」を「fu ri kaka ru」の4文字、もしくは「fu ri ka ka a ru u」と7文字にしてもいいと思います。

やり過ぎは不自然さを生みますが、逆に捉えると「個性」として成立するので、このあたりのさじ加減はいろいろと試してみて、自分がしっくりくるものを見つけるのがイイと思います。

作詞を先にやる!(詞先)の場合、日本語の音数を意識した方がいいです。特に同じフレーズ(メロディ)が繰り返されるときは音数はとても重要になってきます。

言葉の音数としてわかりやすい例は俳句と短歌です。

俳句の音数は「5 7 5」。短歌は「5 7 5 7 7」

その子二十はたち櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな

与謝野晶子「みだれ髪」

字余りや字足らずありますが「5」と「7」は日本古来からあるリズムとも言えるでしょうね。

逆に言えば、それ以外の音数にすると「日本臭さ」が多少は抜けるかもしれません。

(「日本臭さ」については超長くなるので割愛)

自分の好きなアーティストや楽曲がどんな音数で構成されているのか、一度チェックしてみてください。こういう研究は自分の好みを知る上でも有効な手段になるはずです。

地味なんですが、正体の見えない雰囲気に囚われているのはそれこそ時間のムダです。「わたし、センスないから……」「自分、作詞は苦手だし……」は思考停止。絶対にそれ以上の進歩は望めません。センスない自覚があるなら磨けばいいし、苦手ならそれをどうにかしようと足掻く、これが真っ当な方向ですからね。

ただ、闇雲に思いついた言葉を並べたモノは歌詞としては最悪です。いわゆるポエム、ひとり語りですね。ひとりでつくって、ひとりで聞いて、ひとりで満足しているならこれでOKです。誰も止めません。好きにやってくださーい!ですね。

ムリして背伸びしなくて構いません。余計な力を抜いて、自然体で、詩と詞の違いを意識して、歌詞としての詞をつくる!それでいんです。

もうひとつ、歌詞についての私的な思想ダダ漏れ。

音楽つくりたい人は読書もしろー!

結論から、

歌詞をつくる際に必要なスキルは『語彙数』です。

センスとか雰囲気とかそういったやんわりとした能力とも言えない代物はスルーしておきます。

歌詞は言葉。当たり前ですが、どれくらい言葉を知っているか、どれくらい自分の知識として蓄えているか、どれくらい肌身で感じる言葉を身につけているか、これが大切です。

読書でなくても、まあ、いいです。映画やドラマ、舞台などもありですね。美術関連などの知識も役立ちます。つまりは、

音楽つくりたい人は音楽以外の創作物にも触れておきましょう!

バンド名の『ルビー・スパークス』は映画から取ったものだと思います。が、映画の原題は『Ruby Sparks』。バンド名は『Luby Sparks』。微妙に変えています。

もっと幅を広げてみます。スポーツも一種の芸術と考えれば、それも有りな世界です。何でもいいんですよ、音楽の世界だけで音楽をつくるのだけはやめておきましょー。

ユーミンの曲。ラグビーの試合から着想を得たものです。

「え?語彙数なんてないよー」って人は連想語辞典などを活用しましょう。なかなか、便利ですよ。

青空文庫にはいくつかの現代詩が入っています。詞先で後メロを練習したい方は自分で詞を考えずに、著作権切れの現代詩にメロディを付けてみるのもイイと思います。

というわけで、おひとつ。同じく、中原中也で。「春の日の夕暮」。

トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです

吁ああ! 案山子かかしはないか――あるまい
馬嘶いななくか――嘶きもしまい
ただただ月の光のヌメランとするまゝに
従順なのは 春の日の夕暮か

ポトホトと野の中に伽藍がらんは紅く
荷馬車の車輪 油を失ひ
私が歴史的現在に物を云へば
嘲る嘲る 空と山とが

瓦が一枚 はぐれました
これから春の日の夕暮は
無言ながら 前進します
自みづからの 静脈管の中へです

中原中也で。「春の日の夕暮」

どこで音を切るのか、1つのフレーズをいくつの音数と捉えるのか、良い練習になるんじゃないでしょうか?

わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
以下略宮沢賢治

宮沢賢治『春と修羅』

ただし、宮沢賢治を選ぶと平沢進になってしまうかもw

続く……



投げ銭♥