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Cardiff5.ここで味わう日本の空気

なんて事はない、Kindleでエッセイや漫画を読み漁っているというだけのこと。

元々読書は好きだったが、こちらに来て一気に加速している気がする。しかも、手に取るのは日本の日常が感じられる内容のものばかり。
まだ渡英して2週目に入ったばかりだというのに、心のどこかでは日本を感じたくて堪らないのかもしれない。微かなるホームシック。

学校がある中心街からホームステイ先までは、移動だけでトータル1時間ほどはかかる。乗り物はバスだが、ステイ先に一番近いバス停に停車するものは1時間に1本しかない不便さである。
渡英前の私は、授業が終わった午後はどこそこ散策しようと息巻いていたのだが、この不便さと変わり映えのしない重い天気ではそんな気持ちも削がれ。一度は博物館に寄ってみたものの、それ以外の日は購入した昼食を片手にステイ先まで直帰するという、何とも味気ない日を送っている。
日本に帰国した後は、きっと「あの時もっと行動してたらよかったな〜」と後悔しそうだと思いつつも、気分が乗らないのだからしょうがない。

イギリスはステイ先の部屋で、日本の日常漫画やエッセイを読む。そして、本を閉じた時に感じられる、何とも言えない不思議な気持ち。
心と感覚は日本に戻っていたというのに、私が寝転ぶベッドがあるこの空間は日本ではない。
このギャップを、語彙力がない私には不思議な気持ちだとしか言い表せないのが酷くもどかしい。

家族から時折、実家で飼っている犬の動画が送られてくる。これは渡英する前に「思い出した時でいいから、ワンちゃんの動画を送って!」とお願いしていたからである。
暖かな春の陽気の中、はしゃぐ飼い犬の動画を見ると、正直「いいなあ」という思いが込み上げてくる。3月下旬の今、日本のだいぶ春めいてきているだろう空気感がたまらなく恋しいのだ。
時には、自分は日本を離れたここで一体何をしているのだろう、と変に心が凪いでしまうこともある。

もう少し時間が経てば、この恋しさも和らぐのだろう。現在身を置くこの環境に、日本人が一人もいないことも恋しさに拍車をかけているのかもしれない。
数ヶ月も経てば「帰国したくない!ここに残りたい!」といった風に気持ちが変化するのかもしれないが、こんなにも日本を恋しく思う気持ちは海外にいる今しか感じられないのだ。そう思えば、今感じているこの【感覚】にも愛おしさを覚えられずにはいられない。

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