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幽玄のエネルギーは環状の時に燃え

確かな手ごたえを感じ、スコップを脇に放り投げた。

分厚い軍手をはめた両手で土を掘る。指先に固い感触。沸き立つ気持ちを抑えて、慎重に、約1万年埋まっていた塊に被る土を払った。




今回も何とか、車にガソリンを補充できた。店員に代金を差し出すと、早口で何か言われた。ほとんど聞き取れない。聞き返す間もなく、クーポン券のような、しわくちゃの紙片とお釣りを返された。

急いで、考古学研究所に向かう。もっと、この異国の言葉を勉強しなくては。初めて掘り当てた、貴重な遺物。謎の古代文字が彫り込まれた1万年前の記録。その調査研究で、長期滞在するのだから。

遺物は重く巨大なため、運搬は断念し、とりあえず現地で調査研究することになった。経済が不安定なこの国では、高価な研究機器が用意できない。できれば、すぐに最先端の機器を使いたかったが仕方がない。何にも限りがある。



煌々と燃え出した、燃えないはずの長方形の石に、取り囲んでいた全員が驚愕で固まった。

消火器を持ってきた現地の若い発掘スタッフが、消火剤を噴射させる。目の前が真っ白だ。いくつもの咳き込む声が重なる。

今日は、各地から優秀な言語学者や歴史学者を招いて、異物に刻まれた言葉の解読を行う予定だった。しかし、十数時間粘っても、成果はほぼゼロ。

炎らしきマークが大きく掘られた場所を、火で炙ってみようと現地の言語学者が言い出し、皆が賛同した。私も。疲れていたのだ。どうかしていた。そんな危険なことを許すなんて。言語学者がライターを近づけた途端、この盛大な発火。

すっかり白くなった遺物に近づき、消火剤を払う。横に倒されている巨大な長方形の石の側面には、たくさんの謎の古代文字が刻まれている。良かった。無事だ。所々、消火剤が入り込んで、白く浮かび上がった文字。

咳き込んでいる現地の言語学者が脇から覗き込み、歓声を上げた。私の両肩を掴み、興奮してまくし立てて来た。

「私の想像通りだって!文字が変ってる!読めるって!」

言語学者の後ろにいた通訳士が、大声で叫ぶ。言語学者は、指先で文字をなぞりながら、呪文のような言葉を呟く。

「 1億、1億年前の、私たちから、炎の贈り物、残る骨の、魂の、エネルギー、集めた、凝縮させた、石、墓石、私たちも、送る、未来へ、私たちへ、受け取れ、火の恵みを、喜べ、そして、贈れ、未来の、私たちへ……」

通訳士が言語学者の言葉を追っていく。石の成分や埋まっていた地点の地層の情報から、1万年前の遺物であることは間違いない。1億年?1万年前の人類が、どうやって知り得たのだ?それほど膨大な時間が大地に流れている事実を、現代の数字の数え方を。

「墓石、墓石のエネルギー、エネルギーに連なりし者、その者たち、名を記す、ジャマール、ラシャド、ライアン、ナシール、シャキラ……ゼフラ、ザイド…………ナイージャ……ルル……ファリダ、オーマリー」

聞き覚えのある発音が連続して響く。それまで沈黙し、固唾を飲んで見守っていた現地スタッフたちの一群から、悲鳴が上がった。

現地スタッフたちの、名前だ。1人、2人ではない。まるで、スタッフリストが読み上げられるように、ほぼ全員の名前が、ひどく困惑した様子の通訳士と言語学者の口から出てくる。

「東の大地の民、名を記す、キリハラ、ウエノ…………イノウエ……フルサワ……」

フルサワ。ついに私の名前も読み上げられた。母国から来た他のスタッフや学者の名前も、次々と。ざわりと、全身の鳥肌が立つ。

目の前の巨石を凝視した。

これは、私の、ここにいる全員の、1億年前の骨から生成された、



化石燃料?


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