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【Podcast書く人の気まぐれラヂオ】#41 昭和から平成を彩った詩人スペシャル!その3

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。

今回で3回目となる特集になります。
意外と昭和初期から平成にかけては長かったのだな……という驚きもありつつ、そして詩人たちがどのように生きたのか、詩の向こう側に直接は触れられないけれど。
それでも、ラジオに乗せて「読む」ことでその詩人と出会いなおせた気がします。

今回は放送で自由すぎたため、この記事の「終わりに」で長めに語ります。早苗さんの好奇心を詰めました。


◆那珂太郎

1922-2014 昭和後期-平成時代の詩人。
大正11年1月23日生まれ。昭和25年第1詩集「Etudes」を刊行,「歴程」同人となる。41年純粋に音韻としての語の美を探求した詩集「音楽」で読売文学賞。48年玉川大教授。61年「空我山房日乗其他」で芸術選奨,平成3年「幽明過客抄」で現代詩人賞。6年芸術院恩賜賞,同年芸術院会員。7年「鎮魂歌」で藤村記念歴程賞。萩原朔太郎の研究でも知られた。平成26年6月1日死去。92歳。福岡県出身。東京帝大卒。本名は福田正次郎。

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那珂太郎の『音楽』を読んでから、彼の詩を声に出して読みたい衝動にいくら駆られたことでしょう。美しい詩にはいつでも美しい音楽が存在しますが、それを作り上げることは容易ではありません。しかし、それを「現代詩」の中でひたひたとことばを選んで詩を編んでいた詩人が那珂太郎のように思いました。

放送では「繭」を読んでいます。

◆金子みすゞ

1903-1930 大正-昭和時代前期の童謡詩人。
明治36年4月11日生まれ。大正12年から「童話」「金の星」などに童謡を投稿し,西条八十(やそ)にみとめられる。「大漁」「繭(まゆ)と墓」「夢売り」などの作品を発表したが,夫に反対されて筆をたった。離婚ののち,昭和5年3月10日自殺。28歳。57年矢崎節夫により遺稿512編が発見され,「金子みすゞ全集」として出版された。山口県出身。大津高女卒。本名はテル。

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声なきものの声にそっと耳を傾ける。そのことができるのが詩人のいいところだと思っています。自分のくるしみ・かなしみよりも、もっと深いところにある弱いものの声。必ずだれもがなにかが声を発しているとわたしは思っていて、弱いもののその聞き取りにくくてかすかな声に耳を傾け、一緒に泣くことのできる人が金子みすゞではないかと思っています。

放送では「繭とお墓」を読んでいます。(「大漁」を読もうとしましたが変えました)

◆相田みつを

1924-1991 昭和後期-平成時代の書家,詩人。
大正13年5月20日生まれ。生地の栃木県足利市で高福寺の武井哲応に師事し,在家のまま仏教をまなぶ。自作の詩を独自の筆法でかき,各地で展覧会をひらく。昭和59年刊行の「にんげんだもの」はベストセラーとなった。平成3年12月17日死去。67歳。本名は光男。著作に「おかげさん」など。

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いつの時代も人間関係は変わらず難しいものです。それでも、人間関係の中にいることで癒されたり、方向性を与えてもらえることもあります。人にはいろいろな人がいて、いろいろなことがあって、それでも決してひとりではないのだなと思いました。相田みつをの詩の中では「アノネ」と語りかけるような詩が多いのですが、その「語りかけ」がわたしたち詩人にとっても大事なのではないかと思いました。

放送では「途中にいるかぎり中ぶらりん」を読んでいます。

◆まど・みちお

1909-2014 昭和-平成時代の童謡詩人。
明治42年11月16日生まれ。北原白秋,与田凖一に師事。「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」などの作品で知られる。詩集「てんぷらぴりぴり」で昭和43年野間児童文芸賞,「まど・みちお全詩集」で平成5年芸術選奨文部大臣賞。6年日本人作家として初めて国際アンデルセン賞作家賞を受賞。同年路傍の石文学賞特別賞。11年朝日賞。15年芸術院賞。平成26年2月28日死去。104歳。山口県出身。台北工業卒。本名は石田道雄。

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「しがない」ということばがありますが、詩人でも「しがない」詩人として齢を重ねて行った詩人、まど・みちお。長く生きているあいだにはいろいろなことが起こっていたと思うのですが、その中でふと笑ってしまうようなユーモアあふれる詩を書いた詩人でもあります。

放送では「ダメダ」を読んでいます。

◆富田砕花

1890-1984 明治-昭和時代の歌人,詩人。
明治23年11月23日生まれ。石川啄木の影響をうけ,「明星」などに短歌を発表。大正以降詩作に転じ,民衆詩派のひとりとして活躍した。昭和59年10月17日死去。93歳。岩手県出身。日大卒。本名は戒治郎。歌集に「悲しき愛」,詩集に「地の子」,訳詩集にホイットマン「草の葉」など。

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いのちの賛歌のように心に響く詩を書いた富田砕花。生きてあることそのものが、生きていることそのものが、喜びにあふれているのだと教えてもらったように詩を読んで感じました。関西の芦屋の地、わたしが知らない土地で、彼はどうひとの生きる道を見ていたんだろうと思いを馳せます。

放送では「五月の歌」を読んでいます。

終わりに*語ります

先日、作業場所にしているシェアオフィスのイベント日に、ある美容に関するケアの美容部員さんたちが来ていました。

その時は収録してからだいぶたっていたけど、かかわっている詩誌いくつかの編集・校正の仕事の繁忙期で、

自分のことなどお構いなし。自分の美容より仕事のために働いていた時間の方が長かったです。

改めて、美容部員のみなさまを見ているととてもきれい……どこがどうきれいなのか。職業柄、「見ている向こう側の景色のことば」を考えてしまいました。

わたしたちが「見ている」ものには限りがあります。その向こう側を自らの感覚で理解して、ことばや音を作り出していくことが詩人に求められていることです。

気がついたら自分の髪はぱさぱさ、水も飲めていない忙しさ。
デトックスもできていない状況でした。

だから久しぶりに思えたセルフケア。一時期はメンテナンスを決して怠らなかった体なのに、気がついたらヨガもしていない。差し入れされた紅茶や備え付けのコーヒーマシーンが気力になっていた。

自分にはいらないだろうと思えたことが、今になって必要になることもあります。昔読んでいた本が、今わたしに考え事を与えてくれていることもあるんです。

髪の毛のまとめ方、お辞儀の仕方、オフィスでのマナー。
すべては普段着でできることではないです。だからこそすごく努力が必要なことでもありました。

わたしの職業としての「詩」は「ことば」や音を扱う仕事なので、一層「ことば」にも「音」にも注意深さが必要でした。それでも普段着になってしまった夕方には、気力も落ちていて。冷静に仕事着に着替えてみると、余計な修飾をしてしまったり、この助詞は削った方がいい……などわかってきます。

美しさはシンプルな立ち振る舞いや基本・基礎から生まれます。その根本を支えるものは食・習慣・体だと彼女たちは理論から見える美しさで教えてくれたんですね。

今は朝6:45から平日は毎日ラジオ英会話を聞いているのですが、英会話はとても潔いです。すぱん、すぱんとテニスのラリーを繰り返すみたいに。そのくらいの簡潔さと反射神経でことばを選び、相手に届けるスピード。感覚を研ぎ澄ますのにも技術と労力と経験が要ります。

SNSでのことば(媒体によって変わりますが)、コミュニケーションのことば、オフィスでのことば、家族とのことば、友人とのことば。

どれも服を着替えるようにことばを選んでいきます。それが叶うのは素敵だと思うし、ことばの向こう側を注意深く観察する目や耳、鼻、五感も研ぎ澄まさなければなりません。

自分をストイックに追い込んで書く方式は今に始まったことではなく、親子にわたってその方式は変わらずありました。だからわたしは少しくらいこわくても鋭くても厳しくても、追い求めるものは簡潔に美しいとわかるようになりたいと思っています。

あなたはお稽古の鬼

卑怯者ね

と朝ドラで言われてみたい。あんな憎まれ役でいるからこそ、「ブギウギ」の茨田りつ子さんは輝く。

大野さんはそう思う。

そう言って、自分の主張をストレートに出して通すことを美徳としていない「ブギウギ」の家政婦の大野さんがかっこいいのは、俳優さんの背筋がしゃんとまっすぐだから。

働くわたしを支えてくれた数々の女性たちに感謝する夜です。

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