〔ショートストーリー〕こどもの日
「子どもの日、どこか行きたい所ある?」
母が私に問う。高校生にもなって『子どもの日』というのも何だか面映ゆいが、この機会を逃すまいと私は弾んだ声で答えた。
「じゃあ、2カ月前に隣町にできた、巨大迷路に行きたい!」
母の顔がサッと強張る。そりゃそうだろう、母は極度の方向音痴だ。学校の三者面談でも、来るときは教室に表示された『〇年△組』を頼りに何とか来られるが、帰りは放っておくと玄関までなかなかたどり着けないレベル。教室を出て歩く方向を間違い、降りる階段を間違い、来るときは通って