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芽吹いている、話

 この頃急に暖かくなった。と、いうより暑いぐらいだ。それとともに、私の体調も急激に良くなってきた(自分の感覚として)。まず、楽しいことが次々と頭に浮かぶ。まるで春の地面から草花が一斉に芽を出すように。子供と遊ぶのが楽しい、本を読むのが楽しい、テレビ(ドラマや野球)を観るのが楽しい、写真を撮るのが楽しい、車を運転するのが楽しい、庭の草むしりが楽しい(芝生を敷く計画をしている)。何より、文章を書くのが楽しい。

 ここまで来るのは楽ではなかった。昨年は何をどうしてどう生き延びたのか記憶がないぐらい、落ち込んでいた。じっさい、危ない状態だと夫に判断されて、精神科にはじめて入院した。なんとか子供の誕生日は病院から出て迎えたもののその後の体調も思わしくなかった。当然仕事を見つけることもできなかった。

 行き詰まった私達は、私の実家のほど近くに移住することにした。首都圏で十数年を過ごした私と首都圏から離れたことのない夫は、文化的アドバンテージや人脈の直接的なつながりと引き換えに、経済的・精神的サポートを得たのだった。それにしたって引っ越しなんてやり遂げられるわけがない、と私は嘆いていたのである。

 帰ってきてすぐに体調が改善したわけではない。実家に行っては石のように動かずただスマホでオンラインゲームをやり続ける日をどれだけ過ごしただろうか。今は移住してきてちょうど4ヶ月経過したところ。きっとこの暖かさと、現代医療の力が合わさって(1ヶ月ほど前に薬が変わった)この状態に至ったのだと思う。

 芽吹いた草には水をやらないと育たない。それは、なんだろう。この楽しさのままに少し走ってみたい。

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