埋まった穴と完全性

 欠けたピースは突然に降ってきた。

 身内のところに、事務をやりたいと打診すると、すぐにでも来てほしいという話になった。履歴書を持って職場へ行くと、いつから働けるかという話が中心で、少々当惑するほどだった。行ったのが4月28日。働きはじめはなんと5月6日に決まった。月曜日から金曜日、時間は9時から16時の実働6時間。ぷらぷらしている身、困ることなどあろうはずもない。就職したら子供の送り迎えをしばらく母に委託することは話していた。

 連休明けの初出勤日。しばらく袖を通していなかったきれいめのワンピースを着た。化粧をし、朝食(平日は夫が作ってくれる)をとり、子供の登園準備をさせる。早く起きすぎて(子供も)、時間が余った。Eテレを観ていても心が落ち着かない。8時になる前に母が来てくれた。少し落ち着いた。8時9分、おかあさんといっしょが終わる。家を出て職場へ向かう。当然車だ。少しは混んでいたけれど想定の範囲内で、十分な余裕をもって、8時40分頃に着く。1年7ヶ月ぶりの「出勤」。

 それから昼休みを含めた7時間ちょっとはあっというまにすぎた。早速仕事を頼まれて書類や電卓やExcelを触った。なんという心地よさ。私に足りなかったのはこれだという確信があった。もっとも、欠けていたときから気づいていたけれど。

 退勤して帰り道にサッと買い物を済ませ帰り着くと16時40分だった。子供は機嫌よくばぁばと遊んでいた。洗濯物は母の手によって畳まれ、幼稚園から持って帰るコップやカトラリーも洗われていた。私はあとご飯を作るだけ。完璧ではないか。

 まだ2日しか働いていないけれども、ようやく自己の完全性を回復したという感覚がある。これから働き続けられるように、アクセルを踏みすぎないように、やっていきたいと思う。

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