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トーストと目玉焼きとオレンジジュース

読書感想文    
僕とおじさんの朝ごはん    桂望実

ケータリングの仕事をしている水島健一は、とにかく面倒臭がりだ。
料理もいかに手を抜いて見栄えよくできるかを第一に考える。味はそこそこでいい。

健一のぐうたらで面倒臭がりな日常が続く中で彼がどうしてこれ程までの面倒臭がりになってしまったのかがわかってくる。

健一は腰痛持ちだった。ヘルニアと診断されリハビリセンターに通う。
そこで車椅子の少年と出会う。そうだ。小説のタイトル「僕とおじさんの朝ごはん」の「僕」だ。
少年は大谷英樹といった。13歳。
彼は生まれつき病気がちで学校にも通えていないと言う。健一の持ち前の無関心さは同情されてばかりの英樹には新鮮だった。
英樹は健一のサンドイッチに興味を示す。
リハビリでくたびれ果てて食欲の失せてしまった健一は英樹にサンドイッチを食べさせる。それはあんこのサンドイッチだ。
健一は小倉トーストやアンパンを例に出しあんことパンは合うのだと話す。
それ以来リハビリセンターで健一は英樹と健一の手作り弁当を食べるようになる。
「これ旨いね」英樹の一言で健一の胸の真ん中がじんわりと温かくなる。

この辺の健一の心の変化がいい。

この弁当もさすが腐っても料理人、手が込んでいる。塩鮭を一晩昆布で挟み余分な塩と臭みをとって焼いた鮭握りとだし巻き卵。
英樹の両親とも交流をし変化していく健一。
しかし、そんな時英樹はある決断をする…。
その決断は波紋を呼び…。
それから英樹が健一にリクエストするのが“朝ごはん”だ。
スペシャルな朝ごはん。
TVのCMででてくるようなトースト、サラダ、玉ねぎスープ、目玉焼き、オレンジジュース。
英樹の望んだ料理。
健一はこれをスペシャルにトーストの焼きめもムラなくきれいに目玉焼きもとてつもなく絶妙の焼き加減に仕上げる。
結構ラストはじーんとつらいほど切なくなる。
しかし、健一の変化は救いだ。
1から昆布を水に浸し、かつお節を削る所から料理をする。一番だし二番だし…手をかけて心を込めて…。
もうぐうたらな健一はどこにもいなかった。

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