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10円玉の価値

ここ数年、大学生や20代の子たちと話す機会が増えて感じるのは、いま多くの若者たちが現在の資本主義経済に対して違和感を覚えていたり、国同士が経済成長で競い合うといったことに疑問を抱いたり、「ほんとうの豊かさとは何か」を探し求めている、ということです。

一昔前の世代が興味・関心を持っていた、高級住宅や高級車を所有すること、ブランドファッションに身を包むことなどにあまり興味は持たなくなってきています。
逆にミニマリストやシェアハウスなどが流行っているのが、その表れであると思います。上の世代の生き方を見て、心のどこかで疑問を抱き始め、模索しているのです。

先日、ある一人の大学生の子に、次の話を紹介しました。

ある一人の女の子がいました。
その子は養護学校の寮にいて、家に帰る事は出来ませんでした。
でも、毎日毎日その日に習った新しい事を、母親に電話で報告していました。
ある日の事です。
その子をずっと教えていた先生が、算数を教えようとしてお金の問題を出しました。
「ここに、500円玉、100玉、10円玉、三つのお金があります。
どのお金が、一番大きなお金ですか?」と、その子に質問しました。するとその子は、「10円玉」と答えるのです。
先生は、「500円なのよ」と教えましたが、同じ問題を繰り返しても、どうしてもその子は「10円玉」と答えてしまうのです。
何度繰り返しても、やはり答えは十円玉だったので、先生は、「500円玉と100円玉と10円玉では、500円玉が一番沢山の物が買えるのよ。
だから、一番大きいのは500円玉でしょ?」と言うのですが、その子はどうしても違う、10円玉だと言うので、先生は「それじゃ、10円玉の方が大きいと思う訳を言ってごらん」と言ったそうです。
するとその子は、「10円玉は、電話が出来るお金。電話をするとお母さんの声が聞けるの!」と話したそうです。

さて、この女の子は間違っているでしょうか?
この当時の電話機は、10円玉しか使えないものだったわけですけども、この話を聞いて、大学生の子は「なんか感動する」と言いました。
私もこの話を初めて知ったとき、感動しました。
なぜ感動するのでしょうか。

この女の子にとって一番価値ある大事なことは、電話をしてお母さんの声が聞けて会話ができることでした。
この女の子は、お金には意味はあっても価値があると思っていなくて、お金は必要なものと交換できる単なるコインであり、言わばゲームセンターのコインと何ら変わらない感覚だったのでしょう。
ですから、電話機に使えないコインはこの子にとって価値はないのです。

これは正しい価値観です。
私たちの心は、これが正しいことを知っているからこそ、みんな「なんか感動する」のだと思います。

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