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罠猟見学(イノシシ)

先日、イノシシの解体を見学する機会に恵まれました。何ヶ月間かウンウン唸りながら自力で狩猟免許や現場のことについて調べていたけれど、今日一日で数ヶ月分の疑問が解消された。その記録。

〔注意〕
・罠にかかったところからの見学だったため、罠のかけ方はわかりませんし記載していません。
・記載しているのは7キロほどの小さいイノシシの場合の話です。大きい獲物とは異なるケースもあるかと思います。
・本当にざっくりした内容です。
・本文中に写真は掲載していません。


1.経緯

もともと狩猟免許取得前に一度は狩の現場を見てみたいという気持ち(長くなるから本文中では触れません)があり、どうやって現場の人と繋がりを持とうか考えていた昨今。

春に県の担当課に連絡をとり、狩猟者さんとの繋がりをゲットすることに成功。しかしコロナによって企画されていたイベントや集まりが全て中止になり話自体が「コロナ落ち着いたらご飯でも行きましょう」的に終了してしまった。コロナが落ち着いたらまた連絡とろう…と考えていたけれど、8月も末になり「コロナが落ち着く日は来るのか!?落ち着くとは?…」と急に焦り&不安な気持ちに。

居ても立っても居られず猟友会事務所に直接電話。「現場見させてください!繋がりが欲しい!」ことを伝えたところ、新参者の教育に積極的な狩猟者の方の連絡先を教えていただきました。

電話をしてみると「じゃあ明日これる?」と言われ、急いで長靴をワークマンで調達。こんな流れで今回の見学に至りました。

連絡先を教えていただいたのが木曜日、連絡したのが土曜日、現場見学したのが日曜日、の急ピッチで全てが進み、なんだか拍子抜けした。一気にコマが進んでしまった。

2.1日の流れ

なぜこんな急ピッチで見学まで話が進んだのかというと、自分が連絡をした時点で既に罠にかかったイノシシがいたから。

かかる時もかからない時もある。平日とか休日とか関係ない。罠にかかったら3日以内に仕留める必要があるそうです(それ以上たつと死んでしまうから)。

基本的に「罠にかかりました」の一報が朝6時にあり、現地(罠にかかったイノシシのいるところ)集合が7時半、作業開始が8時、午前中には作業終了で撤収、という流れ。
今回かかったのは今年生まれた(推測)ウリボーで、7キロくらい。

下記で流れをもう少し詳しく。

①止め刺し

まず罠にかかっているイノシシを止め刺しします。止め刺しとは獲物にとどめを刺すことで、刃物や銃を使って行われます。今回は獲物が小さかったため刃物で行いましたが獲物が大きくなると銃を使うそうです。

理想は刃物を獲物の心臓に一発で突き刺すことですが、刃物が骨に当たったり心臓が小さかったりするとなかなか難しいそうです。

ワイヤーみたいなものでイノシシの首を固定してから止め刺しします。罠にかかっていても、罠の範囲内でイノシシは暴れまくります。普通に近寄った場合、人間側が怪我をする可能性が大。

②川へ

止め刺しが終わったら川に行きます。水が沢山あるから。軽トラで移動。地域の狩猟チームごとにいつも使ってる解体場みたいな場所があるらしく、今回もそこに行きました。少し山道を入っていった沢です。

水が綺麗で、小魚が泳いでいる。苔も生えてて、「ThE・川」という感じの川。

奥に釣りスポットがあって、そこに向かう釣り人が2組くらい横を通った。
「いつも何するところなのか気になってたけど、そういうことか〜」みたいな雑談をする。山の中にいきなり机とかバケツとかあったらやっぱ気になりますよね。そういうことです。そうとも限らんけど。



川にイノシシを下ろしたら、まずはブラシで全身の汚れや虫を落とします。さばいているときに自分達の手に虫(ダニなど)が付くのを防ぐ意味と、肉に泥が付いて風味が落ちることを避ける意味があります。肉は繊細で、泥や毛や血が付くとダメになるそうです。

「イノシシの肉は臭い」というのは有名な話ですが、臭い原因は捌き方が雑であることもあるそうで。イノシシ自体が臭いというより処理が甘い人がさばくと肉が臭くなるらしい。


ブラッシングが終わったらその辺の石でイノシシを仰向けに固定してお腹を割いて内臓を出します。心臓以外は処分しました。持って帰っても調理がたいへんらしい。
この時イノシシの尿道や膀胱を傷つけると肉の風味が落ちてしまうので、注意しながら内臓を取り出します。
お腹の中、臭いのかなと思っていたけれど全く臭くありませんでした。

③「ここからが本番だよ」

血を綺麗に洗い流したら川から上げて、ちょうどいい感じの台(軽トラ)の上で皮を剥ぎます。
片手に皮、片手に刃物を持ち肉と皮の間に刃を入れて皮を剥ぎ取っていくのですが、この時皮を持っている手で肉を触ってはいけません。なぜなら肉の風味が落ちるからです。

皮を剥いだら分解していきます。部位の名前は豚と一緒。ヒレ肉ってこんな少ししかとれないの?!


動物をバラバラにするのは結構大変だということが分かりました。知識がなければ無理。背骨を折るにもどこに切り込みを入れるかが重要で、バラバラ殺人事件の犯人は事前にかなり勉強しているのだろうとのことでした。


部位ごとバラバラにしたら、今度は肉と骨を切り離します。
煮込むなら骨も一緒に煮込んだ方が美味しいらしいのですが、今回は切り離しました。ウリボーで小さかったのでアバラの部分(スペアリブ的な部位)に関しては骨と肉を切り離さずそのままに。
肉に残っている血はこの時まで念入りに取り除きます。血管の中に残っている血もある。

刃物ですが、一口に刃物(出刃と呼んでいた)と言っても色々種類があり、大きく3種類(止め刺し・皮剥・肉切り分け用)があるそうです。
一回解体するごとに研ぐ必要があってなかなか大変。刃に付いた脂は研がないと落ちないらしい。
金物屋なら用途を相談しながら購入できるけど、1本目ならカインズで買うのがよろしいとのこと。

④きたときよりも美しく

肉の処理はここまで。次は処分する部位の焼却。

土管に薪を入れて着火し、その中で全てを燃焼させます。実は皮剥の段階から解体と同時進行で火の準備もしてました。火をいい感じに炊くのも難しいらしく、火を起こしてキープする役割専門の人もいるそうです。

ここで再びバラバラ殺人事件の話になり、「なんでバレるかっていうと後片付けが甘いからなんだと思う」とのことでした。

火が燃え盛ってきたら土管の中に骨なんかを放り込みます。
処分する部分は埋めるか焼くか処分方法が決まっていて、今回参加した地域では自分たちで焼却するのが一般的な処分方法でした。
若干肉片が残ってても鳥やアライグマが持っていってなくなるそうです。

3.最後に

以上、ざっくりした流れの記録です。
地域によってやり方・ルールは異なると思うので今回の記録が誰かの参考になるかは分かりません。
が、とにかく現場に行って直接見ることは大切だと実感しました。ネットで調べるより断然効率いいです。以上。

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