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防災と物流の社会問題から新機能開発をした話

こんにちは、デザイナーのS.Iです。ビジネスナビタイム事業というところに所属しています。

ビジネスナビタイム事業では物流など業務利用向けのサービスを提供しており、私自身は、トラックカーナビビジネスナビタイム動態管理ソリューション(以下動態管理ソリューション)の2つのサービスに関わっています。

この記事では上記2つのサービスで、物流業界のための防災というテーマで機能を作った時のお話をさせていただきます。
この案件ではディレクター兼デザイナーとして携わらせていただきましたので「アイデア立案」「仕様検討」「チーム開発」などを織り交ぜながらお話をさせていただきます。

■トラックカーナビ
登録した車両に応じて、車高/車幅/重量/トラック通行止を考慮した、最適なルートを案内するトラック専用カーナビアプリです。大型車や危険物積載車両にも対応しています。

■ビジネスナビタイム動態管理ソリューション
スマートフォンのGPSを活用した動態管理とナビゲーション機能を提供する運行管理システムです。PCでの配車計画や車両位置・作業状況の把握、日報作成によって運送業などの運行管理を支援します。

サービスとして何かできないか

近年、大雪や台風などの自然災害が多発しており、事故や交通渋滞の原因になっています。2019年台風19号や、2020年熊本豪雨と記録的豪雪などは記憶に新しいかなと思います。
これらの災害時でも、運送会社は荷主などからの指示により輸送を行うケースがあり、ドライバーは横転など事故のリスクを抱えて運転をしておりました。

これまでも直近の走行実績を用いて通れる道の可視化による災害支援などは行こなっていたのですが、発生してからではなくちゃんと防災として何かできないかと考えたのが最初のきっかけです。自分が「ぼんやり考えています」と業務日報に一言書いたのを見た先輩から「施策案があれば協力しますよ!」と連絡をいただき、案件としてスタートしました。

また、社会的にも問題視されており、2020年2月には国土交通省から災害時でもドライバーの安全や持続可能な輸送の維持を目的とした「異常気象時における輸送の目安」が定められています。

社会課題をどうやって機能にするまで

私たちはナビゲーションのプロであって、防災や気象のプロではありません。社内でもあまりノウハウがないような事例をどうやって機能に落とし込んだのかを説明していきます。

🔍現状を把握する

根本的な課題何が求められているのかを探るべく、営業の方と一緒に施策の概要や質問表などを持っていき、物流企業の方や有識者の方にヒアリングをさせていただきました。また、お客様よりご要望もいただき、意見交換なども行いました。

ヒアリングやリサーチから「輸送の可否を判断するためのエビデンスが様々な媒体に点在している」「ドライバーの現場感覚に依存していたりなど明確なフローが存在しない」の2つの課題が見えてきました。

📚プロジェクトで検討を行う

ヒアリング結果をもとにでコンセプトを「災害の発生前から発生後までの状況判断を1つのサービスで完結させる」として機能の検討に入りました。検討自体はプロジェクトで有志を募ってブレストからスタートしました。災害と運転を時系列にまとめてブレストから出たアイデアを照らし合わせて機能としてまとめていきました。

👨‍👩‍👦‍👦社内で仲間を集める

社内はざっくり言うとサービスを作る「事業」と、技術等を開発する「研究開発部門」に分かれています。一旦考えてみた機能が実現可能なのかどうかが不透明なので、あえて要件がざっくりした状態で研究開発部門に持っていき、仕様の段階からすり合わせを行いました。研究開発部門にも「交通情報」「ルート」「ガイドナビゲーション」「地図」「ASP」など社内で使う様々なプロジェクトがあり、そこを横断して大掛かりに開発が必要であることがわかりました。各プロジェクトに協力を仰ぎ、合同の開発チームを作りました

💪やるべきものを精査する

チームアップが完了したので次に何を作るのかを明確にしていきました。使用できる技術・データなどを調査してそこから考えていた機能「MUST」と「WANT」の2種類に分けました。「MUST」にはコンセプトとして必ずやりたいこと、「WANT」にはデータなどから実現が不透明だがやってみたいことなどを入れました。「MUST」は細かい仕様検討を行い、「WANT」は実現できるかモックアップなどから探りました。

【MUST】
コンセプトとして必ずやりたいアイデア。そのまま仕様検討に進み、実現に向けた議論を行う。

【WANT】
実現性が担保できないがやりたいアイデア。モックアップや、機能の調整を行いつつ、機能として成立するかどうかから話し合う。

リリースした機能について

検討の際に決めた「災害の発生前から発生後までの状況判断を1つのサービスで完結させる」と言うコンセプトのもと、これまでに複数の機能をリリースしました。こちらでは各機能について軽く紹介をさせていただきます。細かい内容等についてはプレスリリースの方に記載があるのでよければそちらもご確認ください。

また、すべての機能において「国土交通省通達の輸送の目安」に則り、一貫した基準で情報を提供しています。

01_トラック防災手帳

大雨や地震などの災害ごとの対応や、事前の備え等をまとめて、トラックドライバーの防災に役立つ内容に特化した情報サイトを作成しました。輸送目安を一覧で見て危険かどうかを判別したり、緊急連絡先や交通情報にすぐにアクセスして欲しい情報を確認できます。

02_防災チェッカー

これから走行するルート上に危険があるかどうかを知らせ、安全に走行可能かどうかを確認できます。ルート上の雨量と風速の予測値気象警報・注意報情報の発表時刻と詳細通過予定時刻と共に、該当する異常気象時の措置の目安をテキストで表示します。運転前に確認することで災害を事前に避けたり、基準に従い輸送を取りやめたりすることができます。

03_防災ガイダンス

ルート上にて現在地より先に異常気象時の措置の目安に当たる区間がある際に「およそ3km先、風雪注意報、大雪注意報が発表されています。フォグランプを点灯しましょう。」などと音声ガイダンスにて警告します。トラックカーナビと動態管理ソリューションの両方でご利用いただけます。


04_気象防災情報と輸送基準の確認

トラックカーナビでは地点の詳細画面にてその地点周辺の気象防災情報を確認できます。目的地に設定する前にその地点に向かうのが危険かどうかを判断することができます。
動態管理ソリューションでは、管理者がドライバーの現在位置や目的地の気象防災情報を確認できます。掲載情報を参考にしてドライバー個人への指示を的確に行うことができます。また、ドライバー個人もアプリより現在地周辺の気象防災情報を確認することができ、そちらの情報を元に管理者と連絡を取り合うことができます。

成果

2021年9月1日より災害前後や走行前後など時系列ごとに分けてフェーズを切り、順次機能を公開していきました。

今回の活動にて以下のような成果を確認しています。

・SNS等におけるサービスへの反響
・防災などを扱うメディアにおける掲載
・台風や積雪が観測された際の機能利用者の増加

また、2022年1月上旬にて関東に積雪が観測された際も利用者が増加しており、数値として効果が実感できました。

最後に

今回の記事はトラックカーナビ、ビジネスナビタイム動態管理ソリューションにおける防災への取り組みについて紹介しました。

これらの機能はまだリリースしたばかりで、完全であるとは考えていません。より良いモノになるように改善を続けていく予定です。

これからも365日の安心・安全な輸送の一助となるため、機能の開発・改善に取り組んでまいります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。