見出し画像

計算づくのジ・エンド

 何もかもが計算づくのようだった。彼女の企みは三流小説のようにプロットが丸見えだった。レストランで繰り言を述べながらハンカチで涙を拭くその仕草は自分の言葉を補強するためのものでしかなかった。僕は早く帰りたくなった。全ては終わり。全てはかけうどんにかけられた天かすのように儚い。

 人生においてハッピーエンドなど存在しない。別れこそが、全てを断ち切ることが、人生というものの終焉であるからだ。さよならだけが人生さと誰かが言った。誰だったかは完全に忘れてしまったけど、きっとそれは正しい。

 今僕は今彼女に別れを切り出されている。彼女は僕とやっていけない理由を一つ一つ小一時間ぐらい延々と喋った。全く君はなんだってそう一つ一つの話が長いんだ。きっとその話の長さだって計算づくなんだろう。きっと君は僕が長話にうんざりして今すぐにでも去りたい気持ちになっているのはわかっているんだ。

 そうその通りさ、と耐えきれなくなった僕は怒りのあまり立ち上がって出て行こうとして立ち止まった。子供みたいに椅子を蹴るように立ち上がって出て行く僕。彼女はそんな僕を見てやっぱり別れて正解だとさっさとエンドマークをつけるのだろう。形ばかりの涙を流したジ・エンド。さっさと終わらせれるなら、涙なんかいくらでも流せるわってか。君は二人のいい思い出だけを残してセンチメンタルのネタにするんだろう。それとも新しい男との笑い話にするのか。

 いや、僕は君の感傷の道具なんかじゃない。僕は無害なおもちゃじゃないんだ。残念だけど君の計算づくのジ・エンドを御破算にしてやるぜ。僕と付き合った事を、一生消えない傷にしてやる!僕は椅子を蹴って立ち上がり、そして裸になって彼女の前の皿に僕の珍棒を乗せてこう言ってやった。

「じゃあ、最後に僕のホットドッグ食べろよ!それでジ・エンドだ!」

 最低の極みだけど完璧だった。これで全ては御破算だ。きっと彼女は一生ものの傷を受けただろう。ざまあみろ!お前が付き合っていた男はこんなにも変態だったんだ!そら、警察にでも通報しろよ!それともこのホットドッグを食べたいのか?ほらどうなんだ!」

 だが彼女は僕のホットドッグをみても全く驚きはしなかった。それどころか呆れたようにため息をついてこう言った。

「あの残念だけど、私、そんな皮ばっかり厚くて中身ほっそいホットドッグもう食べたくないの」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?