イベント友達 #12/20
『1220 始まりの日』
12月20日、何の変哲もないある日。
〇〇:んっ……
夕陽が沈みかけ、外が暗くなり始めた頃、ベッドに仰向けになりながら漫画を読んでいた〇〇は、携帯の通知音に気が付き、体勢を起こした。
〇〇:美波から?
「後5日でクリスマスだね」「今年も〇〇は暇だろうから私が遊んであげるよ」「イルミネーションに行こう」
幼馴染の彼女から来たメッセージはその3件だった。
〇〇:何でこんなに上から目線なんだよ。彼氏も友達もろくにいないくせに…
皮肉のような言い方をしながらも、〇〇は嬉しそうな表情で「仕方なく」と言う枕詞を強調し、美波からの誘いを快諾していた。
〇〇:今年のクリスマスも美波とか……
昨年、〇〇は聖夜と呼ばれる日である、クリスマスに幼馴染である美波とイルミネーションに訪れていた。
そして、それは昨年だけでなく、一昨年、さらに一昨々年、振り返ればキリがないほど、〇〇と美波は行事の度に今という時間を無駄にはせぬよう会合を繰り返していた。
まるでカップルのように、恋仲でもない2人の幼馴染は何度も行事の度に会っていた。
〇〇:美波にとって俺は……友達……だよな
22年間の付き合いの中、互いに互いを大切に想い、友達として生活を共にしていた。
だからこそ変わることを彼は恐れた。
変わる事を拒絶した。
〇〇:今年も美波に好きと伝えないでおこう
〇〇:きっと美波は、俺を振る。そしたら、美波に友達はいなくなる……それならいっそ……
〇〇:それなら……
〇〇:何も言わず、今のままでいたい……
〇〇:だから今年も、彼女に会える事が……いちばんの幸せなんだと……思え……俺……
そう戒め、今日も〇〇は前を向いた。
〇〇:明日も仕事だし、飯食って寝るか……
そうして彼は、また行事へ向けて、生きていく。
……to be continued
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