見出し画像

福井で昔々に思いを馳せる

家守さんからおすすめいただいたそば屋のオープンまで時間があったので、近くの越前和紙の資料館をのぞく。

「ここは山が多くて田畑をやるのに適さないけど、良い水があるから紙を作りなさい」と川上から現れた女性が紙の作り方を伝授。それが越前和紙の起源らしい。謎の女性は川上御前と呼ばれるようになり、今でも地域の神社で祀られているとのこと。

真相はどうだったんだろう。ドラえもんの世界なら、川上御前はきっとしずかちゃん。

近くのお土産屋さんにはかわいい和紙が貼られた茶筒があり、ちょうどほしいと思っていたので買おうとするも、店員さんたちは大混乱。普段より多いのであろうお客さんに対応しきれず、若手の女性はてんやわんやという言葉のお手本のような焦り方をしていた。

超おいしい

和紙を見たので、なんとなく紫式部の記念館へ行く。途中に道の駅があったので立ち寄ったら、新しくできた新幹線の駅前にあり、売店はとても賑わっていた。それでも連休から想像する混雑よりは余裕がある感じだったけど、こちらのお店もまだ混雑慣れしていない雰囲気。

紫式部の記念館は、彼女が父に同行して備前で1年ほど過ごしたことを記念した館。全体的に「紫式部は備前から大きな影響を受けた」「紫式部は備前が気に入っていた」ことが強調されていた。

紫式部は都が恋しくて1年で帰った、みたいな説を聞いたことがあるような気がするので、備前で行われる展示とはいえやや過剰なのでは、と思わなくもない。

平安時代は四季の中で春と秋が優れた季節という感覚があったそう。最近は春も秋もほぼない。去年の秋なんて2日くらいしかなかったような気がする。平安時代の貴族たちはお嘆きになるだろうか。

景観が良いとすすめられた海辺のカフェもてんやわんやしていた。新幹線開通により人が増えたものの、各店舗はまだ対応できてない雰囲気をあちこちで感じる。

近くの越前ガニミュージアムにも行く。越前ガニは福井県でとれるズワイガニのことで、平成元年に県の魚に指定されている。

ズワイガニは海底250メートル以下の深海に生息していて、漁がされるようになったのは江戸時代以降。それ以前、深海のカニを獲るのは難しかったようで、そりゃそうだよなと納得する。紫式部はきっとカニを知らない。

標本はズワイガニだけ逆さま。変なの〜と思い撮った写真を見返してハッとする。たぶんこれ、 回転するのでは……?

ズワイガニは一時期数が減ったようで、現在は保護のため漁業時期が制限されたり、規定の大きさに満たないカニはリリースされたり、メスが生息するあたりでの漁を禁じたりと、さまざまな取り組みが行われている。だからカニの時期が決まっているわけだけど、「この時期は越前ガニが食べられる」ことも明確になるからマーケティング的にはいいのかもしれない。

カニの選び方、食べ方を紹介するコーナーでは「カニのゆでかたは難しい。かに鍋と焼きがにに使う以外はゆでたカニを買う」「ゆでかたが味を大きく左右する。かに鍋と焼きがにに使う以外は、なまがにはゆでてもらう」と、素人がかにを茹でてはいけないと二度に渡り注意喚起がなされていた。

落札価格は260万円

英語でタラバガニはking crab、ズワイガニはsnow crab。何でこういう名前になったのだろう。ズワイガニは寒い地域で獲れるカニなのか?

タラバガニは雌が10回、雄は十数回脱皮をするらしい。雄の方が脱皮の回数が多いから雄の方が大きいそうで、たしかに脱皮ごとに一回り大きくなっていた。

ズワイガニの雌は溜め込んだ精子で数年後に受精できる、カニは前方しか見えていないから岩やイソギンチャクなどに背を向けて身を守っている、カワハギは海藻に口でつかまって寝る、さまざまな稚魚が海流に流される藻に生息しているなど、豆知識を得た。

あと、カイカムリという背中にホヤやカイメンをつけてカモフラージュするカニがラブリーだった。ドラクエとかポケモンのモンスターにいそう。

映像コーナーでは隣の小さな男の子が画面に出てくる魚の名前を見事に言い当てていた。魚の名前がわかるだなんてめちゃくちゃカッコいいけど、このカッコよさは同学年の子には伝わらないだろうな。

海沿いの露天風呂で夕陽を眺める。夕陽は水平線まで沈んでから見えなくなるまでがあっという間。雲ひとつなく、最後までしっかり見えた。朝日は目を刺すようなまぶしさだけど、夕陽は穏やかなまぶしさだと言っていたのは誰だったか。

沈み切ってもなおオレンジに光る水平線のあたりを眺めながら、紫式部が見ていた夕陽も同じだったのだろうかと考える。目の前には空と海しかないから平安時代と景色は同じはずだけど、排気ガスやら温暖化やらで見え方や色味は違ったりするのだろうか。

昼間

おうちに戻ると誰もいない。どうやら今夜の宿泊者はわたし一人。完全に一人になるのは久しぶり。さみしいよりうれしいが勝る。

立派ながんもどきを焼きながら、学生時代に「がんも」もいうひどいあだ名をつけられていた友人を思い出す。スマホを見たら彼女とのLINEグループからメッセージが来ていた。運命。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?