見出し画像

【小説】 image

世界には七不思議と呼ばれる類のことが数多く存在する。
大きな墓や迷宮のような宮殿、オーパーツと呼ばれる類の物体などなど、分野は様々だ。
その不思議は不思議を呼び、誰かが加筆したり脚色をつけていく。
色が足されたかと思えば、情景が足されたり。感情が足されたかと思えば、理性が引かれたり。そうして生まれた物語たちがひとりでに歩いていく先に、現代があった。
これは、生まれた概念たちが主人公のお話である。

「ねえねえ、またお婆さんになっちゃった」
「あらーそう。まあ何かと便利なのよね、お婆さん。お母さんじゃないところがミソよ」
「そうかもしれないけどさーそろそろ老け芸も飽きたよ」
「まー気持ちはわかるわ。私もこの前イヌにされたし」
「ペットの方がいいじゃん、可愛いし」
そう言って笑う彼女の名はアタと言う。数え切れないほどの物語を創造する時のモデルとなる子である。
「テンは?何になりたい?次」
「んーイケメンだな」
「なんで?」
「アタにモテたい笑」
「何だそれー笑」
そう言ってまた笑う。ふと振り返れば少しずつ景色が変わってきた。誰かが空の色を変えたらしい。明るい水色から濃い濃淡が広がってチラチラと星が見えてきた。
「綺麗だね」
「そうだね」
二人して空と呼ばれるものを見上げて笑った。笑い声が少しだけ反響した。

ここは、人が想像する世界だ。いわゆる、無意識の世界。概念と呼ばれた世界。世界は「ある」が一定のところまで続いていて、この世界はこの世界の住人と神様によって運営されている。
時折、誰かが生まれたかと思えばどこかへ行ってしまい、それの繰り返しだった。順番もチグハグで、時間もバラバラ。ただ、広い空間だけが広がっていた。
「この前さーミダが天使になった時は羨ましかったなぁ」
「あれはすごかったよねー」
「うん、とっても綺麗だった。羽が生えて、地面から浮いて、どこまでも飛んでたの。すごかった」
「今度はうちらがなれるかな?」
「んーたぶん?わかんないけど」
「ここから浮いてみたいよー」
「ここもいいけどね。飽きるよね、たまに」
たわいもない会話を続けているのが日課な二人。笑ったり冗談を言ったり、怒ったり泣いたり忙しい。忙しくても、いつでも一緒だった。
翌日には二人以外に増えていたり減っていたりしたとしても。

「めでたしめでたし」
「いいよね、その締めくくり」
「うん、愛でて終わってる感じがとっても好き。全てを愛してる感じがとても」
「そうだね」
たとえ想像の世界だったとしても。現実と比較して実態を持たなかったとしても。それでも、この世界を愛してくれている気がして、心地いい。
「次はどんな物語がはじまるかな?」
「楽しみだね」
空が変わって雲が流れて、森が広がって水が溢れて、生き物が生まれて、風に流れて。どこまでも際限がない世界。
想像は自由なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?