大晦日

23年の大晦日は泣きながら京都・三条の人の波を逆流して滋賀に帰った、そんな大晦日でした。

三が日を実家で過ごすことなく3年が経ちました。
実家に帰らないなんて親不孝者だと、もう縁が切れた高校の友人に幾度となく言われました。
別に家族と仲が悪いわけでもなく、帰省するお金が無いわけでもなく、地元福岡が嫌いなわけでもない。
実家に帰るくらいなら、関西にいる恋人と過ごしたいし、アルバイトに勤しんでお金を稼ぎたいと思っていました。

実家に帰ると、まるでお客さんになったような気分になります。
母と妹が暮らしているその生活に、私が割り込んでしまうような気がします。
以前1時間ほど実家に帰った時、そこは私の知っている実家ではありませんでした。匂いが記憶の中に無いにおいに変わっていました。
自分の部屋はそのままの形で置かれていたのですが、どうも落ち着かずにすぐに「用事がある」と言って家を出て行ってしまいました。
また、ろくでもない大学生活を送っているわたしにとって母親に会うのがどうもきまりが悪く、だからこそ日々の母への連絡がおろそかになって、それが原因で母に心配をかけてしまっているのは理解しているのですが。
本当にごめんなさい。

31日、彼のお店が営業しているのか否か私は知りませんでした。
自ら聞けばいいのですが、10月から3か月間、ずっと私が会いに行っている、と思いつい意地を張ってしまいました。

恋人の特権ってなんだと思いますか。
それは好きな人の優先順位の上位に自分を置かせてもらうことだと思っています。
さすがに大晦日、恋人の私を優先して少しでも時間を作ってくれるだろう、そう思った私の脳内はお花畑だったのでしょうか。
反対に言えば、皮肉にもそこまで信じ込めるくらい愛を与えてくれた彼の行動の結果なのでしょうか。

結論から言うと、年末も年始も彼に会うことはありませんでした。
31日は彼のお店は通常営業、1日と2日は彼の友人や地元の人らと過ごすことは事前に決まっていたようです。知りませんでした。

31日は京都に行ったものの、滋賀への終電の1時間ほど前に31日も1日も彼に会えないと知り、泣きながら滋賀に帰りました。
カップルや家族や、外国人観光客の幸せそうなその波を逆流して、憎らしい鴨川を横目に足早に帰りました。

滋賀に着いた時には23:45ほど。
ちょうどカウントダウンが始まるようなそんな時間。
私の家の周りには複数の寺があり、静かに除夜の鐘が鳴り響いていました。
重たくて、荘厳で、響くその鐘の音は、私の心の痛みをさらに痛めつけるようで、全然優しくありませんでした。
心の穴が広がるようで、自分が何を求めているのか、何に悲しんでいるのか全く分からなくなりました。

3日に彼に振られました。
3人ほど友人に相談して、自分は彼との楽しかった思い出にすがっていること、優しかった彼が好きだったことに気が付きました。

6日にいきつけのラーメン屋さんに行きました。
そこに行けば絶対に暖かい人がいます。
初めは、いつもお世話になっている店長に、振られたと報告しました。
最後にお互い話し合って、自分の中に未練が無いようにもう一度言いたいことを伝えます。男なんて星の数ほどいるし、恋愛なんてしてもしなくてもいいので、と自分でも妙に冷静に報告することができました。

実は、昔のモラハラな恋人と別れたときも、このラーメン屋にお世話になりました。
その時は私がとても未熟で、ずっと泣きながら、めちゃくちゃなことを言いながらラーメンをすすっていました。
でも今回は、冷静に落ち着いて店長に報告することができました。
店長も、ちょっとだけ大人になったねと伝えてくれました。
あとでお酒を飲んで大号泣してしまうのですが。

その日は、知らないおじさんがビールをおごってくれました。
彼の愚痴をこぼしていくと、苦いビールが一層苦くなりました。
アルコールが回るたびに饒舌になっていく自分を、どこか冷静に俯瞰していました。
おじさんは意地悪で、自分の飲みかけの、しかも半分以上もあるビールを私の空瓶とすり替えました。
私はもう7割酔っぱらっていたので、気が付かずにそのビールを一瞬で飲み干してしまいました。

今まで我慢していた感情が、ダムが決壊したかのようにあふれては涙になって、止まらなくなりました。
彼の優しい言葉が今となっては棘になっていること、私のことを大事にしないくせに適当に好きだとかなんだとかほざいてセックスだけはしていたこと、また人を信じてもこれか、2回も同じことを繰り返すのか、という人間に対する絶望、そのすべてが溢れて溢れて溢れてあふれてきました。

今まで我慢していた負の感情が一度溢れると、簡単に止まってはくれません。
でも、店長や店員さんや知らないおじさんの、彼らの人生経験に基づいた暖かくもあり、厳しくもある言葉に救われました。

そんな年末年始。
また一つ強くなれた気がします。

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