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半透過した夏【詩】

タイムアタックVS世界ベスト

スタートと同時に消えていった。
泡となった丘の上まで崖を登って、
自己ベストとの戦いは、過去の僕との
どこまでも、いつまでも、
一騎打ち。
ずっとついてくる半透明な姿。

一日やっと空いた休日水曜日。
七里ヶ浜駅前セブンイレブン。
蛍光灯がちらついて、
スタートタイムアタック。

半透明な姿で、半透過した夏が、
絵の具で塗りたくったみたいに青く染まっている。
砂浜の最前線。
過去の君が走る。
今の僕が追い越そうとするけど、
同時に消えていった。泡となった。

時間切れまでのタイムアタック。
ゴーストが彷徨く部屋の中。
スタートの合図を遅らせないように、
常に今流行りの動画をチェックする。
たまに出てくるマリオカート。
神技プレイは見入ってしまう。

過去の自分の姿が嫌に他人に見えて、
今の自分が自分だよって、
今出会えているなら本当の自分を、
机の下に置いてあった。目が合った。
君がくれた腕時計のブランドの箱の袋。

半透明な姿で、半透過した夏が、
マヨネーズ忘れた時のように、
慌てた顔をしている。
ベッドに座ってたこ焼き焼いて、
熱すぎるって君が笑うよ。
また、消えていった。泡となった。

駐輪場までやってくる君も。
観覧車で踊る君も。
坂道を登る君も。
愛おしく思えていたんだから。

もう消えないでって願うよ。
けれど、姿を見せないでとも思うよ。

半透明な姿が、清々しい夏に、
負ける時まで、タイムアタック。

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