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【読むラジオ】#024 見えてきた、暮らしをつなぎ続けるヒント

視野を広げ、ネイティブの視線で見てみる

今井)前回と今回は改めてこの「ネイティブ」って何なんだろうということを村上さんと私の方で話をしています。前回はカンボジアから始まったこのシリーズについてふり返りましたが、スペシャルな出来事ではなく、日常みたいなところにキーワードがあったと思うし、変わらないもの、不変のことに注目していくべきなんだろうなと思いました 。

村上)驚くほどって言ったらあれですけど、何に時間を割いてる、重きを置いてるのか、みたいなところで、ゲストのみなさんがあらためて共通してたんだなと改めて感じました。

今井)シリーズの4回目に河村信さんという NHKの報道カメラマンの方に来ていただきました。僕も普段取材をしているので、一番記憶に残ったのが、自分がその場所に行かなければ知ることがなかったことを一番伝えるべきなんだとおっしゃってたのがすごく重要だなと思いました。調べれば出てくることとか、情報やデータとして上がってくることではなく、目の前で起きてる自分が受け取ったものを出していく。これはやっぱり報道において中心になる事なんだろうなと感じました。

村上)今井さんは仕事で新聞記者をしていますが、数年前とはちょっと違ってデスクの仕事をしています。現場に出る機会が以前より減ったと思うんですが、今の話とちょっと逆じゃないですか。また別の難しさを感じられてるのかなと思うのですが、どうでしょう。

今井)もちろんリアリティーというところでは一歩後退してしまうんですけれども、そのぶん広い視野で、もう少し全体を俯瞰してみることができますね。何が必要であるとか、あるいはもうちょっとここが欠けているんじゃないかとか、あるいは他の記事と照らし合わせてみて、ここはちょっと違うんじゃないかっていうことに気づけたりとか。カメラで言えば望遠レンズで見ているのと、ワイドで見てるみたいなところの差があるのかなと今の仕事については思っていますね。

村上)今井さんがこの経験をされて、また現場に戻った時に、今までとは違った視点で聞けたりするもんなんでしょうか。

今井)それはあると思いますね。やっぱり取材は自分の価値観みたいなところだけで動いてしまいがちですけど、他の記者が書いてきて原稿を見ていると、こんなところに注目したんだという意外な驚きがあったりします。河村さんの話でも、自分の視点も大切にしながら、日本各地にいらっしゃるローカルのネイティブに寄り添って取材をされていくという話を聞いても、なるほどなと思ったんです。各地域には、その地域ならではのネイティブがいらっしゃって、その人を通して見ていくっていう視点。すごく大切だなと思いました。

村上)僕は河村くんの言葉ですごく印象に残ってるのが、特に熊本で災害現場みたいなとこを取材されていて、その時に河村くんがこんなに恐ろしい川のそばに住んでいて、実際に人が亡くなったりダメージを受けていながら、「誰もその 川のことを悪く言わない」っていうことをおっしゃっていたんですよね。やっぱりそういう時に、そのいたたまれない気持ちを何かのせいにしたいとか、一番簡単なのがこの川のせいにすることだと思うんですけど、そこには、起きてしまったこの現象と、それ以前の長く支えてくれてたこの川の存在とか、その狭間の中で、「誰も悪く言わない」というのはすごくはっとさせられたんですよね。

今井)自然の中で生かされてることを感じ続けてる人たちだからこそというところもあるのかなと想像してみました。一方で河村さんの次のゲスト、有川美紀子さんからは小笠原の自然を長く取材を続けている話を伺いましたね。

村上)有川美紀子さんは小笠原の自然環境の中で、「あかぽっぽ」という鳩が絶滅するんじゃないかと、一時は40羽ぐらいまでに減る中で、それを人間がどう関わって、自然という本来なら、なかなか関わるべきなのかそうじゃないのかという含めたとこでも関わりを十数年追い続けた有川さんにご登場いただいたんですけど、今井さんどうですか、有川さんもまたライターの方なので今井さんと職業的に似てるのかなあと思うんですけど。

今井)「島に住んでみないと、文章の最後の丸(読点)を打てなかった」というお話を聞き、すごく取材対象者と近い場所で取材をされてるからこそ出てくる言葉だなと思いました。僕ももちろん有川さんの本を読ませて頂いて、アカガシラカラスバトの保護活動についても興味を持ったんですけれども、母島という小さな島での暮らし、そこまで内側に入り込んで取材をするということは、なかなかができることじゃないのですごく驚きました。

村上)一方で、今まではライターさんなので、島のことを外に伝えてくれ、島の外からの情報を持ってきてくれる人という立場でいた有川さんが、急に島に住むとなると、ゼロからこんなのもできないのかなどと言われ、ショックを受けたみたいにおっしゃってたのも印象的でしたね 。

今井)小笠原という島が非常に離れた島なので、まるで別の惑星にいるかのようなところで、すべてが船による補給によって支えられてるということでした。ないものがあっても島の人達だけでなんとかしなければいけないし、一方で、ないものだらけなんだけれども周りのみんなに支えられ、そこを感じていないっていうのもすごく印象的でした。

軽やかに行動をつなぐ人へのあこがれ

村上)僕は番組の中で「不思議だ、不思議だ」と連呼してたと思うんですけど、やっぱり不思議なんですよ。「ない物に気づかないで、ないものが出てくる」と本当に当たり前のようにおっしゃっていて、実態はそうなんだなって思うんですけど、これは僕の経験が正しいとかそういう話ではないですが、ない物に気づいてしまうと、補給があるなしにかかわらず、やっぱりしんどいという思いがあるんです。根底には、有川さんとのほかの話題でもあった「やると決めたんだから、やろうよ」みたいなところも、すっとそこに割り切って行動に行く。自分が当然、一生懸命できてなくてもほかの人の行動を見ながら、「あ、そうだ、そうだ。僕もこんな約束したんだから、やんなきゃ」というような軽やかさと言うんですかね。そのカンボジアの所にもやっぱり共通してくるんですけど、人がアクションをすることに対して流れるように動いてる。すごく考えて考えてアクションするっていうより、動いてみて、かといって一線やりすぎないで、自分の領域はここだっていう風に線引もしながら動いていける。そこの人間の動きに、僕はすごくをハッとさせられます。僕は前回も言いましたけど、いろいろ考えすぎて苦しくなっちゃう。体の動きからスタートできるネイティブの人達、そういうとこに憧れると言うか、すごくリスペクトしますね。

今井)ネイティブっていう僕らが知ろうとしてることは、どういうところなのかなって思うんですけど、村上さんは何か気づくことありますか?

村上)わかっていたつもりが、全然わかってないんだなと改めて気づかせてくれますね。ただ、大事なものがここなんだなとも思います。そういう意味では一つ、もしかしたら考えるきっかけになるのは、僕が経験したネパールの話になるんですけど、貧しい国でもあるからだと今まで思っていたんですが、いやそうじゃないなって思ったのが、ネパールでは「物を買う」とか、「物」をすごく貴重に思う部分があって、人間の労力やリソースは無限にあるとする。 いろんな方にお話を伺う中で、その辺を軽やかになんといったらいいか、例えば SNS みたいなところで言うと、ともすると僕らが日々行ってきたものについて「こんな結果が出ました」みたいに、人間がやった行為をすごくその「盛って出す」ようなことがある一方で、ネパールとか、あるいはネイティブの皆さんの人間の軽やかさって、何をやったかはやって当たり前で、やるとかやらないとかは関係なく、それがどうつながっていったかというとこに、その辺の何に価値を見出しているかというところに、どうもネイティブらしさみたいのがあるような気がしてるんですよ。

今井)私は、前回も少し振り返りましたけど、カンボジアの遺跡が変わらず普遍にずっとあるということや、宇宙管制官・山村侑平さんの長い平時をどう気持ちを維持して過ごすかという話、有川さんについていえば島での長い暮らしについてだと思うんですけども、僕が思うのは今のところネイティブは、長い日常を過ごすための心のよりどころになるもの、自分の支えになってくれる物をどこに見出していくかがポイントになるんだろうなと感じています。
ラジオネイティブ、次回からは再び様々なゲストをお呼びして、そんな暮らしをつなぎ続ける知恵、ネイティブの技について探っていきたいと思います。おたのしみに!

(文・ネイティブ編集長今井尚、写真提供・河村信)

次回のおしらせ

これまで5人のネイティブを知る人にお話を聞いてきたラジオネイティブ。次回から、FC今治の夢スポーツで、野外学校を企画する木名瀬裕さん、通称がってんさんにお話を聞きます。お楽しみに!
The best is yet to be!


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