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【読むラジオ】#009 挑戦しやすい空気感

笑いが大好きなカンボジア

今井)カンボジアと日本でデザインの仕事をされている貝塚乃梨子さんにお越しいただいています。今回は普段から一緒に仕事をされているカンボジアの人たちについてお話を伺いたいと思います。早速ですが、カンボジアの人たちの一番の魅力って、どういうところにあると思いますか?

貝塚)これは、楽観的なところです。お二人は「コブミカン」って、ご存知ですか? エスニック料理とかによく使われるミカンのゴツゴツしたやつなんです。日本だとこぶがあるように見えるからコブミカンなんですけど、カンボジア語だと「笑うみかん」という意味になります。そのゴツゴツが、笑いジワみたいに見えるっていう事から名前がついてるんですけど、なんかすごく素敵だなって思うんですよね。

村上)なるほど。名前をつけるにしても何にしても面白味を求めているんですね?

貝塚)そうですね、笑うことが大好きで、冗談ばっかり言う人もいて、そういうところはやっぱり国民性としてあるんじゃないかなと思います 。

今井)楽観的と思うところはどういうところですか?

貝塚)すごく大きな問題が起きた時とかも、「なんとかなるよ」みたいな切り返しをされることが多いんですよね。そんな深刻に考えない、もうこれが駄目だったら死んじゃうみたいなことってあんまりないんです。カンボジアでは自殺もほとんどないですし、そこまで思い詰めないっていうのがすごくいいところだなと思います。

村上)いま現地の人たちと一緒に仕事していて、たまには喧嘩をすることもあるとは思うんですけど、そういう時に相手を罵る言葉はあるんですか?

貝塚)私はあまり使わないですけど、動物を使った悪い言葉とかは結構ありますね「この犬」とか、犬とかに悪い感情があるんですよね

村上)逆にほめる言葉はあるんですか?

貝塚)きれいな人の顔の形が「ワニの卵みたい」という表現をしたり、あと腰がくびれていると「ありのようなくびれだね」とか(笑)

村上)一緒に働く仲間同僚としてはカンボジアの人ってどんな雰囲気ですか?

貝塚)基本的に真面目だと思いますね。集中するとちゃんとやってくれる。責任感はあるなと思いますね。

村上)カンボジアって元々は農業の国じゃないですか。日本もそうだと思うんですけど、農業の人って、もちろん変わってきてるとは思うんですけど、どちらかというと「言われたことをちゃんとやる」逆に「自分からこうだとはあまり言わない」と思うんですけど、その辺りどうですか。今、貝塚さんは上司にあたるわけですよね。

貝塚)そうですね、やっぱり最初は村上さんがおっしゃるように、言われたことをやるというルーチンから始まるんですけど、私の仕事の分野がアートとかデザイン関係なので、やっていると楽しいという部分が結構出てくるんです。そういうきっかけがあると、自分で勉強を始めたりとか、今は YouTube でいろんなことが学べるので、調べて自分で勉強することが最近はすごく増えてきています。

村上)学習意欲というか、言われた事じゃなくて、プラスこれもやってみよう、あれもやってみようっていう意欲の強い方が多いんですね。

貝塚)プライドが高い方々が多いので、ほめたりとか、「いいね、この仕事」っていうような形で認めてあげると、どんどん自分からやっていくような印象がありますね。

村上)モチベーションってどこから来てるんですか?

貝塚)学校があまりなく、学べる環境が限られている中で、職場とかでそういうきっかけみたいなのがあると、道が広がる印象はあります。

今井)ポジティブに物事を捉えて、例えば学校がないからできないと受け止めるのではなく、出来る事はないだろうかってチャレンジされてるんですね。

村上)確か、スタッフの方に元お坊さんだったっていう人がいなかったでしたっけ。でも見た目は普通のお兄ちゃんですよね、こんなこと言ってはなんですが、徳があるようには見えなかったです(笑)

貝塚)カンボジアでは若い時に1回お寺に入る子って、パラパラいるんですよ。実はこれは徳を積むというよりは、ちょっと家が貧しかったりすると、お寺にいったん入って、そこでも衣食住が確保されるわけなので、そこで数年過ごして、また社会に出てくるんです。

村会)そういう人はほかのスタッフにもいるんですか?

貝塚)他にも地方出身の男の子のスタッフがいるんですけど、その子もお坊さんの経験がありますね。

村上) お寺に、「教える」っていうより、寄宿舎みたいな機能も根付いてるんですか。

貝塚)セーフティーネットみたいな機能もあるんですけど、ほかにもお寺にいると英語が勉強できたりですとか、いろんなことが勉強できる環境なので、そういうところで勉強する子も多いですね 。

村上)日本と比べると全然やっぱり仏教、というか宗教の位置づけも全然違うでしょうね。

貝塚)上座部仏教で、赤いオレンジ色の袈裟を着て、街を歩くっていうような方は結構見ますね。午前中しかものを食べちゃいけなかったりとか、戒律は結構厳しいので大変だと思うんですけど。

日本よりも挑戦できる空気感

今井)貝塚さんはそういうカンボジアの人達に触れて、変化したことありますか?

貝塚)気持ちが楽になるような空気感がある街なので、気持ちも心も楽になるようなところは、自分の中で変わった点かなと思います。例えば悩んだ時とかもそうですけど、社会のセーフティネットみたいなところもあるし、失敗しても受け入れてくれるというか、挑戦できる環境はすごく日本より強いかなという風に思います。

村上)クメールが話せる貝塚さんは、しゃべれるからこそわかることとか、あるいはしゃべれるからこそ知れたこととかありますか?

貝塚)そうですね、やっぱり冗談を言い合えるようになった時が私の中で明確に現地に馴染んだ瞬間でした。冗談が通じて分かり合えるって、文化的なところが理解できていないと分からないので、そこがクリアできた瞬間っていうのは自分の中でも大きかったかなと思います。

村上)ネイティブの人たちの笑いのツボって、どういったところなんですか?

貝塚)日本だと、それで笑うの?みたいな部分はあります。文字の作りとして、母音と子音でできているんですが、それをひっくり返した言葉遊びとかがあるので、文字の仕組みが分からないと通じなかったりしますね。

村上)今、日本とカンボジアを往復されているわけですが、貝塚さんにとって、カンボジアの人達、あるいは他の地域に根付いてる人たちを僕らは「ネイティブ」と呼んでいますが、そういった人の存在は貝塚さんにとって、どんな存在ですか?

貝塚)やっぱりこうシンプルに楽しく生きる事を教えてくれる存在ですかね。そういう人たちはカンボジアだけでなく日本にもいると思います。特に私は日本の地方にいるので、東京とは全然違います。四季に合わせて生活が違ったり、雪も降ったりしますし、渡り鳥が飛んできたり。自然と共存してるってのは日本でもすごく感じる環境にはありますね。

村上)カンボジアと日本の気候で言うと、冬がないことが違うと思いますが、冬がない国ならではのリズムだったり、冬がないからこういう文化が生まれたなど、思うとこありますか?

貝塚)冬があったら多分みんな凍死してるような家の作りです。暑い地域なので、カンボジアの家は、例えば高床式で、下に風が通って涼しくするための工夫があったり、そういうところはやっぱり気候が生んだカンボジアの文化っていうような感じがしますね。

今井)お話を伺ってると、笑いがあったり、食べ物があったり、仏教があったり、カンボジアの人達だけじゃなくて、その環境がすごく安心とか心の安らかさにつながってるのかなと感じました。特に心に残ったのは仏教の存在でした。時に貧しい人の支えとなり、時に世界につながる英語の学習の場になったり、いざとなったらお寺に行けばいいと思える場所があることが、貝塚さんの言う「挑戦しやすい空気感」につながっているような気がしました。日本ではどうでしょうか。仏教はお葬式はもちろん、法事など一族を束ねるきっかけとして機能している面もありますが、もっとできることがあるんじゃないかなとも思いました。

(文・ネイティブ編集長 今井尚)
(写真 貝塚乃梨子さん提供)

次回のおしらせ

ラジオネイティブ #010  「あいさつは「ご飯食べた?」」

次回は生きるために衣食住以外にも必要なことや、カンボジア人とのコミュニケーションについて貝塚さんにお話うかがいます。

The best is yet to be, お楽しみに!

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