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相手次第を受け入れ、抗わない生き方

ポッドキャストは毎回ライブ

今井 いつもはゲストをお呼びしているラジオネイティブですが、今回と次回は村上さんと私で、これまでの話を少し振り返ってみたいなと思います。よろしくお願いします。

村上 昨年の3月からスタートさせていただいたんですけど、そもそもなんですけど、今井さんポッドキャストはおそらく初めてじゃないかと思うんですけど、どうですか。

今井 私は普段、文章を書く仕事をしているんですけれども、こういうトークはどちらかというと苦手で・・・。短い言葉で話を聞くのは難しいと感じています。もう少し聞きたいなと思うこともあるんですけど、全体を通して振り返った時には、あまりそこばかり聞いても仕方がないわけで、話をしながら一本の形に仕上げていくのは本当に難しいです。

村上 今井さんは普段ニュースを文字で書いていますが、そこには制約や基本的なルールみたいなものがおそらくあるんですけど、それは一体どういったものなんですか。

今井 掲載する面積がまずだいたい決まるわけです。それを作り上げるため素材は、取材をしてふんだんにあるわけですが、そこから逆算して、ここは骨格になるよねとか、前提条件としてこれ知っておかないと読者は分からないよねとか、そこには結論も必要だし、そういう風に構成があるわけですよね。ただラジオの場合だと、先に構成があるわけではないので、このまま行ってどこに着地するんだろうかと、ドキドキしながら毎回やってるような感じですね。

村上 そうですよね。その場その場でライブというか、どこに行くかは同じメディアとはいえずいぶん違うんじゃないかなと思います。自然発生的に生まれてくる部分が非常に多いのかなっていう感じもします。
ただ、毎回ゲストの方とお話ししていて、結構しっかりした着地があったなという印象があるんです。僕も恐る恐るナビゲートしているなかで、質問を振っても返ってこない可能性もあるのに、お呼びしたゲストの方は振ったらしっかりと返してくださいました。僕も手をかえ品をかえ振っている自覚はあるんです。角度をものすごく変えても、しっかり返ってくる印象がありました。これまで11人のゲストにお越しいただき、話し方も、テーマも全て違うにもかかわらず、返ってくるところはかなり一緒なのかなと感じています。今井さんはあえて11人の方を特徴付けるとすると、どういう印象を持たれますか。

今井 番組の狙い通りと言うか、自分が普段の生活を送る上でとても参考になる話が多かったなと思っています。僕らは「暮らしをつなげ続ける」という事をテーマにかかげていますけれども、専門性はそれぞれ皆さん11人全然違う方々なんですけれども、その点は結論として共通する部分も多かったかなと感じてます。

自分都合ではない生き方

村上 今井さんは、どういうところが見えてきたと思いますか。

今井 全ての方がそうというわけではないんですけど、一つは「自分都合ではない生き方」が見られるかなと僕は感じているんです。例えば北海道の天塩川でカヌーガイドをされている辻亮多さんにお話を伺った時には、これは自分自身の旅ではなくて、あくまでゲストの旅なんだとおっしゃっていました。また自分が行動しようと思っても、自然がそれを許してくれるのかどうかわからない。自分のリズムというよりは自然のリズムに合わせる生き方をされてるっていうことをすごく話していました。また信州・松本で林業をされている原薫さんにお話を伺った中では、自然(じねん)という言葉が出てきました。この言葉はすごく大きなキーワードだったと思います。これもやっぱり自分自身を自然の一部に位置付けて暮らしていく。それはもしかしたら林業というすごく長い時間軸の中で、祖先の人たちがどういう思いで植えてくれたのかを知ることもそうだし、唐松という木は非常にねじれやすい木なんだけど、松本の気候や風土に抗うことなくそれに適応していくような木の育ち方からも、生き方のヒントみたいなものを得ているという話だったと思うんです。まさにそういう所は皆さんすごく共通してるなと思うんです。あげたらキリがないんですけれども、そう感じましたし、逆に言うと、自分はエコライフをしてるつもりはないんですけれども、けっこう自分都合で生きてるんだなと感じさせられました。

村上 そうですね。 僕が同時に思い出したのは、がってんさんからお話を伺ったときに、いまがってんさんは野外学校をしてるわけです。そこに新しいスタッフの方が入ってくる時にどんなことをどう伝えますかと質問させてもらったんですけど、新たに入ってくる人は学校で勉強してきた子達で、野外学校に入り、今度は教える側になるという変化があります。その時にがってんが言っていたのは、1回それぞれの持っている固定観念を壊すんだと。たしか時間感覚と言ってたと思うんですけど、普段であれば朝何時に起きて、何時の電車に乗って、何時から授業でみたいなルーティンでいっていたのが、野外に出てしまうとお天道さま都合なんだよと。天候がちょっと変わればスタートの時間も変わってくるから、もしかしたら早く起きなきゃいけないし、少しずらさなきゃいけないかもしれない。僕もいま普通に首都圏っていうところに住んでいると、なんだかんだ言って、明日の流れが読めちゃうんですよね。電車が遅れるぐらいなことがあったとしても、それですらもう対応策だとか色々な思いながら。

そういう意味では今井さんが言っていたそれぞれのゲストの共通する部分って、例えば原さんだったら林業という世界で、辻さんだったら天塩川の世界で、当然プロとしては「読む」んだけど、自分の読んだ感覚を参考くらいにはするけど支配できる読みにはなってないというか、ある種の諦めというか、「いい諦め」って言うんですかね、そういうのが共通してあるのかなって気がするんですよね。

今井 ちょっと違うかもしれないですけど、例えば地震から6年になった熊本県益城町で、まちづくりをされてる桑原孝太さんという役所の方にお越しいただきました。復興って何ですかという質問をさせていただいたと思うんですけれども、そこでもやっぱり、発災直後はみんなの意識がすごく一致していて、えいやっというようにすごく一体感を持ってスピーディーに物事が進んだ経験があるんだけれども、やっぱり6年経ってくると色々な人の思いにずれが生じてきて、一本にはまとまりきれないんだという話がすごく印象に残ったんです。けれどもそこでも長い時間をかけて対応をしていくことが大切なんだって話をされたと思うんですけど、そこでも自分を優先させないというか、いま自分が置かれてる状況の中に身を任せるって言ったら無責任に聞こえてしまうかもしれないですけれども、その場の流れとか、リズムの感覚っていうのを優先させないといけないんだろうなと感じました。

村上 そうですよね、フィールドから恵みを得てる、体験もそうだし、具体的な恵みも受けてるって意味では、そこに期待もするし、信頼もするし、たよってもいるんだけどここから先は別の世界っていうか、なんかあの別のお宅?みたいにとらえている。自分の家とはちょっと違うんだよみたいなのをその線引きというのを、物理的に見えないわけだし、山の中に入ってもここからと心理的な一線なのかもしれないですけど、もしかしたらそういう一線を皆さんどこかしらで意識されてきたのか、自然と生まれてきたのか、そのあたりはもしかしたら共通してあるのかなと感じました。

(文、ネイティブ編集長・今井尚、写真提供・辻亮多)


次回のおしらせ

これまでのインタビューを極地建築家・村上祐資とネイティブ編集長今井尚が振り返ります。取材を通して見えてきた「自分都合ではない暮らし方」。その意味を深めます。お楽しみに!

The best is yet to be!

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