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【読むラジオ】#008 家の前にマンゴー

今井)前回からカンボジアと日本を往復してデザインで社会の問題に取り組まれている貝塚乃梨子さんにお話を伺っています。
前回はカンボジアの人達の言葉や、人々のコミュニケーションについてお話を伺いました。

「私の半分はカンボジア語で出来ています」

村上)カンボジアの言葉がすごく柔らかいというか、「ニャ、ニィ、ニュ、ニェ、ニョ」っておっしゃっていたと思うんですけど、それを聞いて僕は貝塚さん自身の雰囲気とすごく似てるなと思ってですね。僕の知ってる貝塚さんの半分ぐらいはカンボジア語でできてるんだなって改めて思った次第なんですが、どうですか、あってますか?

貝塚) そうですね、私の半分はカンボジア語で出来ていると思います。

今井)今回は「訪れ」をキーワードにお話を伺いたいと思います。貝塚さんは2007年に最初カンボジアに出会ったそうですが、最初に訪問した当時の印象で何か覚えていることはありますか?

貝塚)初めてカンボジアに行ったのが、当時高校を卒業してすぐのタイミングだったんです。何も知らずに、旅行で行きました。タイムスリップしたような感覚があって、同じ時空にいるのに、100年ぐらいバックしたような、懐かしさもありつつちょっと不思議な感覚があったんです。シェムリアップという町に滞在したんですけど、その時は信号が1つぐらいしかなくて、道もガタガタの状態だったので、すごくショックでもありました。

ところがそういう中で人々の生活を見ていると、ものはないかもしれないですけれど、家族でハンモックに乗って夕涼みをしたりとか、子供が裸足で走り回ってすごく楽しそうにしてたりっていうのを見て、なんかすごく幸せな空気を感じて。また来たいなってすごく強く思ったんです。

村上)今その印象はだいぶ変わりましたか?あるいはやっぱり変わらないですか?

貝塚)街が圧倒的に変わったっていうのはありますよね。整理が進んで、インフラも整ってきているので、前みたいな感じは最近はなくなってきてるのかなと思うんですけど、人の生活は、あの時感じたままの、幸せな空気は感じます。

心を楽にさせてくれる日常

村上)カンボジアに初めて来る人たちを案内するとしたら、どんなところを伝えたいと思いますか?

貝塚)日本だと「空気を読む」みたいな文化ってあると思いますが、良くも悪くもカンボジアの方ってそれをクリアしてるんです。「自分は自分だから」という感じです。例えばバイクタクシーの運転士さんが、道に止めたバイクの上で昼寝しているんです。そういうのを見ると、すごく「いいな、うらやましいあ」って思います。私も最初は必死でがんばろうという気持ちでカンボジアに行ったんですけど、結局何もできずに苦しむ時間もありました。でもそういう人たちを見ると、すごく心が楽になったんです。

村上)日本の伝統色の強い街や村だと、流れてる時間はゆったりしているけど、それぞれの慣習みたいなところで守らなければならないことがあったりするじゃないですか。カンボジアだと日本でいう道徳みたいなことって、どんなことを言われているんですか?

貝塚)そうですね、やっぱり宗教ですかね。仏教がすごく信じられている国なので、どんなにグレている子供もお寺には行きますし、そういう慣習はやっぱり家族で一緒に行ったりとか、守ろうみたいな風習は根強くあると思います。
村上)大きなリズムという意味では、昔ながらのものを保っていて家族を大事にしているということなんでしょうか。

貝塚)家族が一番で、仕事は二の次みたいなところはあると思います

今井)お話を伺ってると貝塚さんはもうカンボジアの方がフィットしていると言うか、どちらが貝塚さん自身に合ってる印象でしょうか?

貝塚)難しいですね。コロナ禍で日本に帰ってきたので、まだ生活を手探りでやってる状態ですので、今はカンボジアの方が楽しかったっていうのはありますね。

今井)長く海外に生活されてるとどうしても日本の方がやっぱりフィットするとか時々戻りたくなるとかそういう事ってないんでしょうか

貝塚)よく「味噌汁がないとダメ」とかいう方いらっしゃるんですけど、私は全然飲まなくていいんです。味噌汁とか。食に関して海外のものにすぐ慣れてしまうところはあると思いますね。

そんなに仕事しなくても生きていける

今井)旅行者や訪問者ではなく、暮らしていくなかで、カンボジアの日常について何か気づくことはありますか?

貝塚)カンボジアに住んでて感じるのが自然に生かされているという感覚をすごく感じることです。例えば自然が豊かで気候もすごくあたたかい国なので、そこらじゅうにフルーツがあるんです。玄関にマンゴーが落ちていたりとか、ジャックフルーツが落ちたりするので、それを拾って食べたりすることもあるんです。なんか「仕事をしなくても生きていける環境」みたいなのが根底にあるのかなと、日常の中で感じます。

村上)食べ物や水で未だに苦手なものはないですか?

貝塚)水に関しては、実は日本の支援が結構入ってるんです。プノンペンは日本の北九州市が支援してるっていう背景もあって、水道水が日本と同じぐらいのレベルまで来ています。ただ田舎に行くとやっぱり井戸水で料理とか洗濯とか全部するんですけど、その時は結構体にいろいろ不具合が来ました。

村上)食べものについてはどうですか?

貝塚)調味料を色々混ぜて料理を作るのがカンボジア料理の特徴で、あと虫を入れたりもするんです。私は結構、虫は食べれるんですけど、どうしても食べられないものが一つあります。「プラホック」っていう名前の調味料で、魚を塩漬けにして一年くらい発酵させるものです。これがすごく臭いんですよ。強烈なので、なかなかそれはちょっと慣れないですねいまだに。

村上)プラホックはどういったふうに使うんですか?

貝塚)現地の方はスープに入れたりですとか、蒸し料理に混ぜたりとか、そのまま食べる方もいらっしゃいます。いろんな食べ方がありますね
村上)暮らしていく中で、服の感じとか家の作りとか、似ているところや違うところで気づかれることはありますか?

貝塚)家のつくりが違うなと感じますね。日本って四季もあるので気密性が高い家が多いと思うんですけど、カンボジアは気密性がめちゃくちゃ低いんですよ。家の窓とかドアとかが隙間だらけなんです。なので朝掃除しても夕方にはもうほこりだらけみたいなのが日常なんです。昼間はドアをあけっぱなしの家も多いですし、なんていうか自然の空気で生きてる感じですね。エアコンをあまり使わない方々が多いので、自然を感じながら生きてるっていうイメージがありますね 。

村上)すると、イモリとか虫とかそういったのも家の中にたくさん入ってくるような感じですか?いや、ヤモリかな?

貝塚)ヤモリ、めちゃくちゃ多いです。しかもヤモリって朝方に鳴くんですよ。びっくりして起きますね。

村上)ヤモリで起きるんですか!

貝塚)ヤモリとか、すごく大きいトカゲもいるんですよ。それを見ると幸せになれるっていう言い伝えがあったりするレインボーの大きなトカゲがいます。

村上)仏教というとこもあると思うんですけど、現地の人はそれを忌み嫌うわけではなく、一緒に住んで一緒に家をシェアしているような感覚ですか?それとも苦手な人は苦手なんですか?

貝塚)苦手な方もいますね。 あと容赦なく殺す場面が結構多くて、結構すぐ殺すんです。それはなんか結構ショックで。日本人って殺すのは忍びないから表に逃がしたりとかしますけど、いきなりパンって殺したりするので……

村上)今井さんはどっちが過ごしやすそうですか?

今井)家の前にマンゴーやジャックフルーツが落ちてるって、すごい羨ましいですよね。日本に住んでると気づいたら今日1日、土を踏んでなかったと思うこともあるじゃないですか。やっぱり自然を感じながら生きる生活は大切なことだなと感じました。
次回は貝塚さんが日時を共にしている現地のネイティブな方々についてお話を伺いたいと思います。

(文・ネイティブ編集長 今井尚)
(写真・貝塚乃梨子さん提供)

次回のおしらせ

ラジオネイティブ #009「挑戦しやすい空気感」

カンボジアでデザインの仕事をしながらくらす貝塚乃梨子さんにとっての、ネイティブとはなにかについてお話を伺います。日本よりもカンボジアの方が挑戦しやすい環境だと語る貝塚さん。その訳は……

The best is yet to be, お楽しみに!

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