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暮らしをつなぎ続けるためのヒントを探る

その国を知る人と旅をする


今井 この2回、ネパールについての放送を振り返ってきました。村上さん、いかがだったでしょうかここまで。

村上 はい、僕自身ネパールは何度か通っていますが、改めていろんな発見が多い回だったかなと思ってるんですけど。今井さんネパールに一度行ってますよね。僕と一緒にジリという村まで来ていただいたんですけど、これからもしサティスが話してくれてたところに今井さんご自身が訪れるとき、改めてネパールをよく知るためかもしれないですけど、安全だけではなくて、ガイドさんとはどんな存在だと感じられますか。

今井 そうですね、2016年にネパールに村上さんと行きましたが、そのときジリという村までの道すがらであるとか、例えばどういうところで食事をとるとか、こういうものを食べるんだとか、多分1人で行っただけでは見えてこないことを、ガイドさんがいることで知ることができたし、1人で行っては話せないような人たちと話すこともできたっていうのがすごく大きかったです。山に登るような挑戦みたいなことでとらえてしまうと、もしかしたら1人とか自分たちだけで行くという選択肢もあるのかなと思いますが、旅の要素というか、その国を知る上では本当にガイドさんの仕事がすごく大きいなと思いました。
それに、例えばさりげなく出してくれるお味噌汁とか日本の味とか、妙にほっとさせられたっていう、気持ちの面でも、初めての国に行くときに支えてもらったなっていう気がすごくしました。


村上 なるほど。今回、サティスのニレカ・アドベンチャーズに話を伺ったので、もしかしたらみんなこういう感じなんだと思うと、実はちょっと違うんです。どっちかというとニレカアドベンチャーズって非常に特殊なタイプかなというふうに思っています。ほかにもいろんな会社をいくつか知ってます。そこにガイドをしてもらったこともあるんですけど、さっき今井さんが説明した、挑戦を叶えるみたいなところをメインにしているガイド会社の方が、何か多い気がしますね。だから挑戦を叶えるためには、その行程や効率性がものがすごく大事になってくるし、寄り道なんかしていたら、どんどん日程が延びていってしまうわけですよね。
そういった意味では、ちょっとしたお味噌汁一つとっても、合理的にたまには日本食食べて復活させるっていう意味と、ちょっと気持ちに寄り添って気持ちを柔らかくするために出てくる味噌汁とでは、意味が変わってくると思うんですよね。
そういった意味では、サティスのニレカアドベンチャーズは、ネパールに入るきっかけは、どこの山に登ってみたいっていうことがメインだったとしても、その中っていうのは、いや、もうちょっと実はネパール足元を見るとこんな面白い道があって、こんな風景があるんですよっていう、むしろそっちに目を向けてくれる会社で、そのためのサービスかなというふうに思います。

今井 サティスさんにお話を聞いて、山のガイドをする仕事でありながら、ほとんど山の話は出てこなかったですよね。その過程の話というか、そこに行き着くまでの話というか、どちらかというとネパールを旅することの面白さを語ってらっしゃいましたし、何よりもサティスさん自身がネパールを知りたいっていう気持ちが強いなってすごく感じて、それが生き生きして何かネパールってそういう過程にこそ、寄り道にこそすごく魅力があるんだなってことを教えられたなというふうに振り返ってます。

村上 そうですよね。だからやっぱり旅をするときに、どこに行くかももちろん大事ですけど、誰と一緒に行くかでいろんな風景とか感じ方って、すごく違ってくるから、ネパールを訪れる山に登る人って、海外の人たちもたくさんいる中で、自分のペースで自分の目的だけを達成するために登りたいという、これも一つの形だとは思いますし、みんなでワイワイいろんな風景を見ながら、同じペースで登ることを大事にする、あるいは行ってからの気づきを大事にする、というようにいろいろあるなと思います。なので皆さんが何を目的にして、どういうものを知りたいかがあり、ネパールにはすごくたくさんガイドさんがいますし、僕は2015年から特に震災から後のネパールを見てますけど、今回のコロナも含めて、仕事を作っていくっていうことが長い長い復興の中ですごく大事なことなので、ぜひネパールを訪れる人は、どこのガイド会社でもいいですけど、ぜひ一緒にガイドの人たちと一緒に歩いてもらうといいのかなって気もしますね。


今井 サティスさんの話を伺っていてもう一つ思ったのが、サティスさんは村にもお金を落とす配慮をすごくされていて、少しでも村を良くしよう、ネパール全体を良くしよう、民族の違いによらずチームを作っていこうみたいな、そういう思想も含めて、人柄がすごく伝わってきました。おそらくそこが旅のもう一つ別の価値につなってるのかなと私は感じました。

ネイティブという定点観測

村上 そうですよね。ネイティブ編集長としての今井さんにちょっとお伺いしたいと思うんですけど、今回のシリーズ、ネパールという国を、かなり深くいろんな角度から掘り起こしてきたわけですけど、今までも、例えば最初のカンボジアの回も1回取り上げるんじゃなくて、なるべく違った視点からも話を聞くというようなところを僕らは意識していたところがあるんですけど、改めて振り返って、編集長としてどうでしたか、この試み。

今井 今おっしゃっていただいた通り、皆さん多分聞き直していただくと、カンボジアについては2回やってきましたし、それ以外にも例えばドームについても、別の立場から2回、まちづくりという観点から複数回扱ったこともありました。やっぱり何かを一つ探っていくときに、複数回というのは僕らがやってきた基本なのかなと思います。確かにこのネパールは3回半と考えると中少し長かったのかなっていうふうにも感じます。ただ、3回半の時間をかけるだけのかなり立体的な話が出てきたかと思います。ジャンボさんにいたっては同じゲストなのに2回別のテーマで話を伺って、かなり特殊な例だったかなと思います。それだけネパールという国が多様性に富んでいて、いろんな要素が凝縮された国だからこそ、どちらかというと3回半必要だったとも振り返っています。

村上 例えば今話に出たJUMBOさんは、パッグの話と、追い求めてる移動民族のラウテという話ですけど、テーマは違う中で、同じ人に話してもらって、同じ国の話をしてもらってる中で、それぞれのシリーズで別のJUMBOさんっていうものが見えてたりしますか。


今井 そうですね、同じ方に別のテーマで、しかも続けてお話を伺うということって、普通はあまりないと思いますし、私も経験はないです。
 けれども、JUMBOさんについてはカバン作りの話とドキュメンタリーフォトグラファーとしての活動の話が、実はかなり共通していたかなというふうに思っています。特にカバン作りの話については、カバンそのものの話はあまり出てきていなくて、なぜカバンなのかというそこからですよね、アパレルを作るのではなくて現地にある技量を最大限活用できるものとしてカバンがあったっていうその必然性だったりとか、どういう人たちになぜ作ってもらうのかっていう背景だったり、出発点がネパールに学校を作りたいっていうところからスタートしていたりして、それをJUMBOさんという個人で実現できる形としてカバン作りというところに落ち着いたって話だったと思うので、ネパールという国が今置かれてる状況が、カバンという切り口を通してすごくわかったし、それはラウテの話についても、今抱えてる課題っていう点では同じことを別の角度から話していただいたかなと感じています。

村上 別の観点から言うと、次のゲストだったサティスさんなんですけど、サティスさんは奥さんが日本人ということもあって、日本とネパールを行き来してるわけです。JUMBOさんは、拠点は日本にあって工房はネパールで、同じく日本とネパール行き来している。そこには共通点があるけども、ベースとなる起点はJUMBOさんは日本の方が起点ですね、サティスさんはネパールに起点があるっていうとこで言うと、同じ行き来してるお二人でも、起点が違うわけですね。そういった視点から、お2人のゲストを見ると、何かそれは言われてみるとこうだったかもみたいなことって、編集長にはありますか。

今井 なるほど。そうですね確かに軸足がどちらかという点ではお二方違う立場だなと思いますけど、私は個人的にはJUMBOさんもサティスさんも同じ視点で見てらっしゃるかなと思いました。というのも、JUMBOさんにネイティブになるってどういうことですかっていう話を聞く中で、どちらかの文化に同じものではなくて自分というものを中心にして相手の文化も、そして自分の文化もその中間って言ったらいいんでしょうか、そのどちらも引き出すような形が一番大切なんじゃないかっていう話をされたかと思うんですけれども、まさにサティスさんも、お客さんのことを考えるのも当然なんですけれども、ネパールの人のことも考える。そしてそれを通して自分が見せたいものを見せていくという点で、やはりハイブリッドな存在なのかなと思う。そういう意味ではJUMBOさんもサティスさんのお話も、すごく共通するネイティブのあり方なのかなというふうに私は感じました。

村上 なるほど、そうかもしれないですね。その上で最後も2回ぐらい僕のパールの話もさせてもらったんですけど、僕というよりこのネイティブという番組の存在ですよね、もうそろそろ100回ですけど、僕らがこの番組を、いろんな起点を持ちながら、他のいろんな皆さんの持ってる起点に寄り添いながら行き来するっていうような立場になるのかなと思いますけど、改めて編集長として、こういう世界の中で伝えていく、ネイティブになるってことについて、今どういうふうに感じてらっしゃるのか。

今井 いや、難しいですよね。「暮らしをつなぎ続けるためのヒント」って何なんだろうって、ずっと考えてきて、それぞれの人に言ってるって何ですかって聞き続けてきているわけなんですけれどもなかなかいきなり最大公約数というのは見つからなくて、自分としても何なんだろうっていうのをずっと考え続けながら続けています。そういう中で、例えばこの個人っていうものがあって、それをネパールというもう少し大きな枠組みでお呼びして、共通した話に広げていく。それが多分もっとどんどん100回という数を重ねていくことによって、最初は個人のアイディアだったものが、段々そのジャンルの答え、それがひいては多分すごく汎用性のある何かスペシャルなものではなくていいと思うんですけれども、すごくナチュラルな汎用性のあるネイティブって何ですかっていう答えに行き着くんじゃないだろうかという、その期待を込めてずっと続けていくしかないんじゃないかなっていう気ではいます。

村上 改めてなんですけど、この番組って、ある種の定点観測をさせていただいてるような番組かなというふうに思うので、続けていく中で、ここから先、完成させない中で見えてくるものと良いものが宿るものと、出てくるかなというふうに思います。リスナーの皆さんの声から生まれてくるものもあってもいいのかななんて、いろんなことも見ながら、これからも楽しみにしているところです。

今井 そうですね。この番組はとがった人の特殊な話を聞く番組ではなくて、普段の暮らしの中で何か「暮らす」ってどういうことなんだろうか、ということをふと考えるような、そんなきっかけになるような、いつもそこにあるような番組になっていけばいいんじゃないかなと私は感じています。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 サティス・マン・パティ、門谷JUMBO優)

次回のお知らせ


新テーマが始まります。石川県加賀市にある人口が1人という大土町に関心を寄せ、定点観測をしたり、元町民から過去の映像をお借りしてアーカイブするプロジェクトに取り組んでいる映像作家の木村悟之さんに登場いただきます。超限界集落を見続けてきた末にたどり着いた、町とのかかわり方についてお話を伺います。お楽しみに。

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