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【読むラジオ】#025 コミュニケーションは築くのではなく、気づくもの

しまなみの自然で自分に出会う

村上 今回から、愛媛県今治市から、しまなみ野外学校で野外教育活動されている木名瀬裕さんにご登場いただきます。木名瀬さんは、今、野外という言葉が出てきましたけど英語でいうとアウトドア(ドアの外)ですけど、僕はドアの外の人じゃないと思っています。もう「野外が家」というか、野外がインドア?っていうんですかね。そこに来訪れる子供たちやそういった人たちに伝えたり、見せたり、そういったことをされてる方と思ってます。

木名瀬(がってん) 木名瀬といいますけど、「がってん」と呼んでください。

今井 がってんさんが普段から関わってらっしゃる野外とは、どんな場所なんでしょうか。

がってん 私は四国の愛媛県の中にある今治にいまして、そこで野外活動という、外でアウトドアなことをすることが多いんです。対象は、小さなお子さんから企業様まで本当にまちまちです。自然という場所の中で人とのコミュニケーションであったり、自然を通じて何を感じるかとか、そういうことを中心に活動しています。その総称として野外活動という言葉をよく使ったりしています。

村上 あの・・・本題の前に、なんで「がってん」なんですか?

がってん これ、すごく長くなっちゃうんで、短く言いますね。20代の前半の頃に、何も世の中のことを知らないので、とにかくNoと言うことをやめようと思ったんです。全部 Yes Yes って、何でもやります、やりますって言っていたら、「あいつ、がってんだな」って言われて、そこからです。

村上 すでに核心というか。僕、がってんさんと直接そんなにお会いしたことないと思うんですけど、それでも懐の深さみたいなものを感じてるんですけど、その大部分が「がってん」というところにも、すごくあったんだなと今ちょっと伺いながら思いました。その姿勢というのは、具体的に野外に子どもたちを連れて行く時に、大事になってくるんですか?

がってん 僕の中では結構キーワードになってるかもしれないですね。 野外活動にはリスクがあるって言われますけども、僕はリスクがハザードに落ちなければ、リスクはなんとかなると思っていて、その中でキラッて光るものの中に時間をかけて対話をしていくような、そういう空間が結構好きなので、相手から感じることってすごく僕自身も興味のあることなので、そこを一番大事にしてるような雰囲気はあります。

村上 ハザードという言葉が出てきましたけど、企業の観点からしてみると、世の中がいろいろ不確定になっていて、いろんなハザードやリスクみたいなものがあふれていると思うんですよね。そういった世の中の、次世代の子どもたち、あるいは大人たちも含めてですけど、野外が僕らに教えてくれるものとか、気づかせてくれるものって、ますます社会的にも重要だと言われる時代なのかなと思うんですけど、その辺りどうですか。企業の反応であるとか、あるいは親御さんの反応であるとか。

がってん  企業さんからいうと、各企業かなりいろんなニーズがあって、いろんな課題やテーマがあるので、そのテーマを先にいろいろお話ししながら聞かせていただく進め方をするんですが、その中で最近、このコロナ禍の中で、コミュニケーションっていうことがよく聞かれます。ですけども、コミュニケーションとかチームワークって、もしかして作ろうと思って作れるものじゃないと思うんです。そういうものは、地球の表皮、ようするに自然の中でもう完成されている気がしていて。そこに共に出ることで、そういうものに気づくようにくすぐる役割というんですかね、そういったプログラムを作っていくことが多いですね。
子どもたちについていうと、遺伝子に元々刻まれているだろう野生的な部分を、自分で見つけてスイッチを押したくなるような、そういうところにたどり着いてくれたらすごく嬉しいなと思いながらプログラムの構成を最初は作ります。ただし、作るんですけど、あとは1回そのシナリオ全部放棄して、場の空気感とミックスしながら進めているという感じです。

今井 チームワークは気づくものだとお話しいただきましたが、子どもたちはどうやって気づいていくのですか。

がってん 私はつい4、5日前に、7泊8日の子どもたち向けのカヤックで海をこえるプログラムから帰ってきたんですけど、たった一つのルールが最初の初日からあるんです。それはスタートしたら全員でゴールしようということです。 力の強い子たちが行けるって言っても、力の弱い子は行けないってなる。すると、どこかで折り合いを互いにつけてくる。シーカヤックに乗るんですけども、例えばバディをかえてみようかとか、大丈夫だよ行けるよと言い合ってみたりとか。最終的に無人島に渡るという一つの大きな気持ちに、みんなが合流してくる。彼らは無人島で自由に遊びたい、仲間との時間を過ごしたいということが最初からあるので、ならば渡るには自分たちでそこに気づいていくしかないんだろうなっていうことに勝手に気づいていってくれる。それが自然のいいところなんです。ちょっと話が飛んでますか?

今井 毎回ツアーをやられると、旅を通して、子どもたちはだんだんいいチームになってくるものですか?

がってん えーと、意外とそうでもないです・笑

今井 仲間割れしちゃったりとか、色々トラブルもありそうですね。

がってん いったん海の上に出てしまうと、行くか帰るか、二つに一つしかなくて、どっちをとるかの選択肢は全員等しくなってきます。怖いと思っていた子も、行くという自分の中のスイッチを自分で入れることができた素敵な部分があるし、俺が俺がって言ってた子も、無人島で遊びたいっていう気持ちゆえに、ちょっと弱い子をなんとなくカバーをし始めたりします。そういうのを見るのが僕は結構大好きですね。

街の時間からはずれ、目標に向かって一つになる

村上 今、二つのシーンが出てきたと思うんです。無人島では、陸地の上でキャンプをしたりするシーン。海の上だとカヤックで移動している時だと思うんですけど、この二つがミックスされる相乗効果はすごく大きいと思うんですよ。子どもたちにとって。そのへんどうですか?

がってん まさにそうだと思います。実は3シーンに分かれているんです。8日間という期間の前半2日間は、生まれて初めてテント寝る子、マッチを見たことがない子も一緒に行くので、 まずはテントを張る、パパやママから初めて離れて寝るという経験を通じて、街の時間を外す時間を2日から3日とるんですね。最初の2日か3日間は森の中でやるんですが、それがリリースできるかなと思ってからまずは有人島に行くんです。まあ人が住んでるといっても1名なんですけど。その島で初めて海を目の前にして、閉鎖空間から一気に海を目の前にすると、すごく心が高揚するんです。その高揚したことに気をとられると、自分でテントを立てなきゃいけない、料理をしなきゃいけない、火を起こさなきゃいけないっていうことが一回おろそかになるんです。そのおろそかになったものを、島に行ってから2日目ぐらいに、僕たちの本当の目的は無人島に行くことだよねと、一度気持ち引き戻す。その作業をすることで、行きたいと思う夢の無人島へ歩むためには、マッチで火起こしたり、ご飯を早く食べたり、海の時間に慣れることの必要性をどんどん自分で感じていくんです。最初はご飯を炊いて片付けるまで3時間かかってたものが、無人島を目指すってなった頃に、焚き火を起こるところから、ご飯の用意、片付けまで90分で全部、で出来るようになってくる。でも、それだけでは海を渡れないということにも気づく。どんどん自分たちの前にあるハードルに気がついてくる。夢があるから早いんです。それが海と陸との関係性です。

村上 僕も宇宙を模した場所でミッションするときに、陸と海っていう違いもそうですけど、時間と空間っていう違いが大きい気がしています。基地の中にいる時は空間はもうここしかないですね。外に出られないので。だけどそのぶん時間はエンドレスにあるんです。空間は制約されてるけど時間は自由。一方で、宇宙服を着て外に出るのは全く真逆で、宇宙服もバッテリーの問題とか色々あるので、時間がリミットになってる。だけど空間は自由で、自分の足がその時間内であればところでも行けるという、急にその空間と時間の制約がひっくり返っちゃう。だから面白い。面白いだけでなく、その揺さぶりがないと人間関係って築けないと、いつも思うんですけど、どうでしょう。

がってん 似た感覚があります。時間についていえば、その8日間はどんなことをしてもその時間は自由に使える。でも実は海にも制約があるんです。例えば「あと1時間出発が遅れると海が荒れて渡れません」とか、そういう情報だけはこちらから出すのですが、実際間に合わない時があるんです。そうするともう1泊、有人島にいなくちゃならない。7キロ先に見える無人島には、いつまでたっても行けないというジレンマがどんどん出て来るんです。そのためには、無限に思われる時間を、自然の変化に合わせて有限の時間へどうやって合わすかというところが、すごく面白いです。

今井 がってんさんの旅には、自分の中のスイッチに気づくための仕掛けが、巧みに仕掛けられてるんですね。

(文・ネイティブ編集長今井尚、写真提供・がってん)

次回のおしらせ

FC今治の夢スポーツで、野外学校を企画する木名瀬裕さん、通称がってんさんに引き続きお話を聞きます。お楽しみに!
The best is yet to be!


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