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「人を包む」という新しい段ボールプロジェクト


段ボールでテントを作ることは可能か?

今井 さて今回も日本トーカンパッケージで段ボールの梱包箱を設計されている一丸欣司さんにお話を伺っています。一丸さん、村上の方からちょっと変わった案件のオーダーが入り、進んでるようですね。

一丸 はい、ふだん我々はメーカーさんの商品を梱包する箱を設計するんですけれども、村上さんから「人を包む」という新しいプロジェクトをいただきました。名前はダンダンドームというパッケージになります。いわゆる段ボール製の大型のテントになります。球体のドーム状のフォルムをしてまして、それぞれパーツがあるんですけれども、そのパーツを段ボールの接合機能を使いながら、一つのドーム状のテントを完成させる、そんなようなことになってます。

村上 いやー、だいぶ苦労させてしまったような罪悪感で実はいっぱいなんですけど、技術者、設計者から見て、ダンダンドームをものにしていく過程で、苦労したのはどういった部分でしたか。

一丸 そうですね、全く違う考え方の中で構造ができてますので、逆にわくわく開発に携わらせていただいたなと思ってます。当初は段ボールではなく、プラスチック製の素材でテントを作られていたところを、段ボール化するという、そんなオーダーだったかなと思うのですが、我々が今まで持ってる技術がどう活かせるのかなって、最初は半信半疑でスタートしました。

村上 なるほど、確かにダンダンドームを10年ぐらい開発し、テストもしていたんですが大部分はプラスチックダンボールで設計をしていたものを、今振り返るとめちゃめちゃ安易だったなと思うんですけど、プラスチックダンボールを紙の段ボールに置き換えても、いろんなところを共通で出来るんじゃないかと思っていたんですけど、結果として、そうじゃなかったんですよね。

一丸 そうですね。段ボールという素材なので、使い方によっては、柔らかすぎるというか壊れやすい素材です。なので、テントとしての構造物をいかに作り上げるかという意味では、段ボールの良いところも悪いところも含めて、どういう形にするかが苦労だったかなと思います。

村上 具体的には、パーツとパーツをくっつける時に、今までプラスチックダンボールの時はすべてのパーツに穴を開けて、そこにハトメ(ブルーシートの端とかについている銀色の輪)を付けて、それらを一つひとつ結束バンドで止めていくというのがプラスチックダンボール時代のドームだったのですが、今回一丸さんから、これ使えるんじゃないかって提案いただいたのが、段ボールと段ボールを合わせて、オスとメスがあるわけですけど、グッと押し込むと引っかかって動かなくなるっていうロック機構に置き換えたのが大きな違いだったかなと思います。
 あと前回での話で出た段ボールの波目で言うと、非常に大変だったんではないかなって思うのが、どのパーツをどの波目にするかで強度が変わってくるし、パーツも三角形に近いような形なので、綺麗に配置ができなかったんじゃないかなって思いますけど、その辺どうでしょう、苦労されました。

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一丸 はいそうですね、やっぱり段ボールはその目に垂直に線を入れると言ったところが強度にすごく効果的な使い方になるんですが、いかんせんパーツの形状が方向性が許されないというか、そういうパーツ構成になってましたので、やっぱり生産するにあたっては、当然段ボールのシートですから方向性があるので、一概にいたずらにいろんな方向でパーツを持って行けませんので、生産性を考えながら角度調整を行ったところがすごく時間を要しました。

今井 箱とは違って人を包む段ボールのテントということですから、これまでにもないものだったんじゃないかなと思います。設計にあたっては相当な苦労があったようですけど、やってみての発見ですとか、何か得た物はあったでしょうか。

一丸 そうですね。くり返しになりますが、本当に苦労が多かった・・・

村上 すみません・笑

一丸 ゆえに完成した時、実際にプロトタイプを作って形になった時の喜びが、こんな大きなものが実際に形になったんだっていう、その喜びは本当にすごく感慨深いなと思いました。また実際にそれを量産できたことについては、今まで我々が日常行っている仕事とくらべて、作る工程も全然違う工程で作らせて頂いてますので、携わったメンバーからするとまた新たな領域に足を踏み入れたなというところが率直な感想です。

村上 すいませんというのと、良かったの半々という感じなんです。これはすこし内輪の話になるかもしれないんですけど、ちょっと安心したのが、一丸さんとか佐藤さんがいる相模原の工場があるじゃないですか、ここはフラッグシップの最先端の機械が入ってる工場っていうのに伺ってますけど、そこの2階にガラス貼りの展示スペースがあります。僕は最初にお邪魔させてもらったとき、段ボールで作った中庭とか日本庭園みたいなものがセットされていたんですけど、リニューアルのタイミングもうまく重なったのか、今そこにダンダンドームがドーンと何棟も置いてあります。そうなったときに会社の皆さんにもなんか理解していただいて、OK が出たんだって、最初にちょっとほっとしたところあるんですけど、それはそういう認識でいいんですか。

一丸 はい、おっしゃる通りです。展示をリニューアルする話は全然なかったんですが、ダンダンドームがプレス発表されて、ようやく会社の中でも認知されたっていう、一つのきっかけだったと思うんです。であれば、せっかくいい箱があるので、その中にダンダンドームを植え付けようじゃないかといったところが、今のリニューアルされた展示場になってるんじゃないかなって思ってます。ショールームっていうような位置付けのなかで、来て頂いたお客様に、一番近くで見ていただいてPRできる絶好の場所なんじゃないかなと思ってます。

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パッケージという枠を出た製品づくり

村上 本当にありがたいなと思うんですけど、ちょっと僕が印象的だったのは、若い技術者の方がプロジェクトが進んでいく中でどんどん入って下さって、救われたところもあるんですけど、その方たちが結構楽しんでワクワクして入ってきてくれてるんだなっていう感じを受けてたんですけど、そういった意味ではの技術の伝承じゃないすけど、会社としてのフィロソフィーを伝えて育てていく、そんなきっかけとしても多少は役に立ったんでしょうかね。

一丸 いわゆる技術者として新入社員で入ってきて、今までは当然こういったプロジェクトの中にいきなり飛び込んでいくってことは当然ありませんでした。またそういったプロジェクト自体もなくて、いわゆる基礎的な技術を、研修やOJTの中で積み上げていくんですけど、そこには「楽しさ」といったところはもしかしたらないのかもしれないです。新しい技術者にとって基礎を積んでいく部分は当然必要なことなんですけれども、だけど包装開発センターとして、これから若い技術者が自分の思ったこと、新しいことを形にしていく、そんなことを取り込んで行かないといけないと思ってますので、入社して数ヶ月の若いメンバーがこのプロジェクトに携わったということは、包装開発センターとして一番これからやっていかないといけない、そんな気づきになったんじゃないかなと思います。

村上 ダンダンドームに限らないかもしれないですけど、このプロジェクトを経て一丸さん自身も気づかれたとか、発想が自然と出てきたポイントとか、そんな部分はありますか。

一丸 そうですねやはり我々はお客様の商品を包む、そういうパッケージ包装設計をしてきたんですけれども、そのパッケージの在り方そのものを出たというところについては、これから色々考えて行く道になるんじゃないかなって思います。

今井 ありがとうございます。このドーム作りを通じて、箱に限らない、もしかしたら新しい段ボール製品が生まれてくるきっかけになったのかなって話を伺って感じました。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 日本トーカンパッケージ)

次回のおしらせ

段ボール箱や、紙で作られる容器などの開発をする日本トーカンパッケージえ段ボール箱の開発をする一丸欣司さんに登場いただきます。人を包むドームプロジェクトを通して見えてきたものについて聞きます。お楽しみに。

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