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ネパールのガイド お客さんには見せない裏側


山の暮らしを見る旅行計画

今井 ネパールでニレカアドベンチャーズというガイド会社をされている代表のサティスさんにお話を伺っています。
前回までいろんな民族の話をしていただきましたが、コロナ前には村上さんもサティさんと山に暮らす人々を訪れる計画を立ててみいたみたいですが・・・

村上 そうなんですよ。最初にそういう道を歩くのを考えようと言っていたのはコロナのさらに前だったと思うんですけど、何かこんなことしたいんだよねとサティスに相談してたら、サティスが「良いルートがあるよ」って提案してくれて、サティスは下見に行ってくるって言って歩いて写真もたくさん送ってくれていたりするんですけど、元々の目的は日本から、いわゆるエベレストとか有名どころのネパールの山々の道じゃなくて、本当にカトマンズからすぐそこに山の道や山の暮らしがあることを知ってもらうようなツアーを考えていたんですよね。
なのでカトマンズからちょっと北に行ったところで、ヘレンブーっていうところの街道なんですけど、そこをぐるっと回ってくるルートを考えてたんです。ちょっと僕もまだそこは行けてない、せっかくこういう場なので、そのツアーがどんな雰囲気なのか、ちょっとサティスに教えて欲しいんですけど。

サティス 短い時間で、いろんな場所を見て帰ってくるようなスケジュールだったんです。

村上 10日間くらいですよね

サティス そうですね。シンドゥパルチョーク郡のヘレンブー村という登山ルートがあって、高さが一番高くても大体3800メートルまでなんですけど、この間には結構いろんなコースがあって、森を歩いたりとか、ネパールの村を歩いたりとかできます。文化的にも結構本当にリッチな文化なんですね。そういうところも歩くルートだったんですね。
カトマンズから北の方なんですけれども、大体1時間ぐらいバスで行って、そこから登山を始めるコースだったんですけれども、せっかくスタート時点で国立公園があって、そこから出たら稜線、シンドゥパルチョークというと、2015年に地震があったとき、家とかいろいろ壊れた地域です。

村上 震源に近い地域ですよね。

サティス そうですね。ネパールでは、カトマンズは盆地なんですけれども、ちょっと離れるとみんな山の急なところとか段々畑のところに家を建てて、そこで農業をやってることが多いです。そういう場所を稜線でずっと歩くコースなんですけれども、雪山も見えて、一番は、その民族の生活とかを見て歩きながら行くコースだったんですね。

村上 僕から提案があったときに、サティスがヘレンブーの村々を提案してくれたわけですけど、何でピンてきたんですか、何を見せたら喜ぶだろうなと思ってそこを選んでくれたんですか。

サティス 村上さんはエクストリーム・アーキテクチャー(極地建築家)ということで、来るお客さんも、ネパールでどういうふうに生活をしてるとか、どういうご飯食べたりとかを見せたいっていうことがあったので、皆さん時間も少ないので、一番カトマンズから少ない時間でいろいろ見えるかなっていうことで選びました。ちょうど地震になって、家がないとかいろいろあって、そこが苦しい悔しいとかいろいろ経験させたいなということで、このコースを組んだんですね。
あと、テントで生活しながら行きたいという要望がありました。キャラバンしながら歩くのは、こちらが全部のものを揃えて歩かなきゃいけないんです。そういうところを見せたいっていうこともありました。

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村上 僕がサティスにこんな旅をしたいって言ったんですが、だいぶ無茶ぶりをしたなと思ったのが、まず期間が10日ぐらいという、サティスのツアーからしたら結構短いですよね。その中でも、まず一つ、テントを持ちながらキャラバンする旅をお願いしました。これはなぜかっていうと、それを全部持っていって、先回りをしてくれたりとか、見えないところでいろんな動きをこうしてくれて、お客さんたちの負担、自然にどっぷりつかって楽しんでもらうためにいろんなことを周りでやってくれている、その仕事っぷりってところも見て欲しかったんです。日本から来た人たちに、こういうふうにやるからサービスってものが山の中でもできるんだってところを見てほしかった。
もう一つは、キャラバンもやるんだけど、所々でやっぱり村にも泊りたいという話をしました。村の文化を見てそこの人たちがどんな暮らしをしてるんだっていう雰囲気も知りたいという、何かハイブリッドみたいな形でやって欲しいっていいました。だいぶそれは無茶なお願いをしたなっていうふうに思うんですけど。
その中でもサティスはずっとその僕らが朝ご飯食べてるのよく見てるなっていっつも思うんですよね。
サティスが前に、山を歩くっていうことはそんなに簡単な話ではなくて、お客さんの朝ご飯の食べ方を見て、今日の体調とかペースをよく見てるんだみたいな話を確かしてくれたと思うんですけど、そんな時間なんですよね。サティスにとって。

朝食の時間はゲストの体調を知る大切なポイント

サティス そうですね。うちらの一番お客さんがどういう動きしてる、体はどうですかっていう感じは、ご飯食べるときが一番大事なところですね。皆さんちゃんと食べてるか、時間的に遅く来てるかな、そういうのを見ながら、あんまり食べてないっていうことがあればなんかちょっと調子が悪いなっていうことを受け取って、できる範囲のことをやっていく。そういうことがガイドとして大事なところかなって考えています。

村上 ローカルなものももちろん出すんだけれども、そのお客さんの国に合わせた食事っていうのも出してくれるっていうのは、普通の旅行者で考えると、せっかくネパールまで来たんだから、そこでしか食べられないもの食べたいっていう気持ちが出るけど、サティスはそういうのもなるべく食べてもらいつつ、それでも山登りをして疲れる、慣れない食事を食べて疲れることにならないように、いろいろバランスを見て、特にこれ食べたいって言わなくても、何かそのときに食べたそうなものを、ちゃんと出してくれる。本当によく見てるなっていつも思うんです。

サティス そうですね、一番大事なポイントですね。そこの国行って、そこの国のご飯食べたいっていう気持ちもすごくわかるんですけれども、山では疲れが出る。長く歩くので、みんな疲れてホームシックになったりとか、いろいろ面があるんですね。それを抑えるためには、食事を変えていくことで、ずっと長く登るのを考えてるところですね。

村上 山小屋みたいなところにホームステイみたいな感じで泊まったときに、ローカルのご飯とか食べる機会があるんですけど、そういうのをお客さんに出すときには何か気をつけたりすることあるんですか。

サティス ホームステイや小屋に泊まるときは、気を付けるところがあるんです。例えば水です。ネパールは水が一番危ないんです。あと油です。小屋やホームステイではいつも新しい油とか買えないので、結局古い油を使うんですね。それでおなかを壊す人がすごい多いんです。その辺ちょっと気をつけています。
あと水です。例えば水を沸かさないそのままの水は危険です。山の水ですが、高いところまで人々が生活してるので、いろんなバクテリアがいるので、ちゃんと沸かして出さないと、その水でおなかこわす人がたくさんいるんですね。
だからその辺気をつけながら出しています。山で体をこわしたら大変なことがあるので、とにかく自分でできる範囲までやりたい気持ちがあるんです。

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村上 今みたいな話で、僕はサティスから聞いてたりもするんでわかるけど、なんとなく山小屋に泊まって、みんなと同じようなご飯食べてるような感覚で見ちゃうんだけど、実はそのお客さんが食べるとこだけ新しい油で調理してくれてたりとか、水をしっかり沸かしてくれる。なんかそういう見えないところの手間を、すごくしっかりしてくれている。だからこそ、ローカルの文化に僕らもちょっとお邪魔できるのかなって感じます。日本から来てすぐ入れない場所に、接点をうまくいつも作ってくれるなって感じます。
サティスは奥さんが日本人だから、1年に1回ぐらいは必ず日本に1ヶ月とか戻ってくるんですけど、サティスから見て日本の山の暮らしは、どんなところを感じますか。

サティス 日本の山の暮らしは、例えば冬だったら暖房があったりとか、ものがある生活、楽っていう感じを受けます。ネパールの場合は、登山ルートに行ったら山小屋とかいろいろあるんですけど、今私が話してるのは普通の家ですね。普通の家は本当にシンプルな生活ですね。例えば薪ストーブを使ったりとか、薪でご飯作ったりとか、本当のシンプルなライフがあるんです。村上さんも多分そういう経験をしてると思いますけれども。私と村上さん一緒に行ったとき、本当のシンプルなホームステイしながら歩いてるんですけども、本当に限られたもので生活しているので大変なときもあるかなっていう、その辺の違いがあるかなと思いますね。

村上 日本の山の暮らしっていうのは、山と言いつつも住んでるのはその谷だから、物も車でちょっと走れば調達できるかもしれないけど、ネパールの場合は本当に山の中、山肌に住んでるようなね、そう感じだから難しいのかな。

サティス そうですね。段々畑があって、モノを持っていくのに、そこをずっと歩いて持っていかなきゃいけないんですね。盆地もあんまりないので、急なところで、そこにあるもので住んでる生活なんですね。

村上 今井さんはどうですか。今井さんも山の中での暮らしはお好きだと思いますけど、サティスの話を聞いて。

今井 そうですね、山の中でそういうシンプルな暮らしをしている人がたくさんいる、しかもカトマンズの周辺にもそういう暮らしがあるっていうことが意外でした。

サティス そうなんです。カトマンズという首都は盆地なんですけど、そこから45分とか1時間離れたところにも、その急なところで生活してるとか、段々畑に生活する人がいて、雰囲気的には全然違っていくんですね。

今井 サティスさんの話を伺って、ガイドの役割って本当に技術的な面で山をサポートするっていうことよりも、何か見えないケアだったりとか、心づかいみたいな、そういうところが実は一番大きなポイントなんだなって、すごくわかりました。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 サティス・マン・パティ)

次回のおしらせ

ヒマラヤをはじめとするネパールの様々な山登りをサポートするネパールのガイド会社「ニレカ・アドベンチャーズ」の代表、サティス・マン・パティさんにお話を伺います。30年の経験の中で、ネパール全土を歩きつくしてきたサティスさん。ネパールの暮らしや文化など、楽しいお話をたっぷり聞きました。
The best is yet to be!

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