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【読むラジオ】#026 サッカーと野外教育の意外な共通点

これからはサッカーだけじゃない 岡田武史さんとの出会い

今井 がってんさんは FC 今治の「夢スポーツ」に所属されているということですがどういった団体なんですか?

がってん FC今治は JリーグのJ 3にあたるんですが、そこのサッカーを運営してる会社が夢スポーツといいます。 その中の野外教育や教育分野に所属しています。その中の「しまなみ野外学校」っていう部分になります。

今井 がってんさんはガイドとして活動されてるということですけれども、どういう役割を果たしていらっしゃるんでしょうか。

がってん 正確に言うと、もしかしたらガイド業ではないかもしれません。私はガイド業をずっと北海道でやっていて、この今治に6年ぐらい前に越してきまして、その中で自然と人をつなぎながら、自分の中の可能性をもう一度見つけるのと同時に、認めてみたり、ファシリテーションしていくような役割の方が多いかもしれません。

村上 サッカーと野外って、違うと思うんですよね。野外と聞くと当然野外ガイドをすぐ連想しちゃうんですけど、ガイド経験を持つがってんさんではあるんですけど、違う役割として新たに野外に入って何をしてくか。サッカーチームが野外に関わるということに何かヒントがあるような気がするんですがどうですか。

がってん FC今治は岡田武史が取締役の会長にいるんですが、彼との出会いが僕の中で結構古くてですね。彼が今治のサッカーチームのオーナーになるときに、これからはサッカーだけではないんだよねという話をしていたんです。一方、僕の方はサッカーをよく知らなくて。でもよくよく聞いてみると、サッカーって世界で一番スポーツ人口の多いスポーツだと知りました。僕はこのガイド業を始めようと思ったきっかけの一つが、大きな震災でもあったんですけども、人が突然自然の中に出た時に、怯えるような形が多いなと思ったんです。それを何とか、「僕たちはこの地球の上に生きているんだ」ということに、できるだけ多くの方に気がついてもらえたら嬉しいと思いました。そこに僕自身も嬉しさがあったんです。サッカーっていうキャパの大きさであったり、そこに情熱をかけている人たちと何か一緒にやりたいと思える要素がありました。

またサッカーを初めて見た時に感じたのは、サッカー選手が本気だったんですね。本当にあと1センチとか5センチ足をのばすために、本気でスライディングをしてボールに食らいついていって、その1センチに届かなかったことでゴールに入らなかったり、届いたけど角度が悪くて決まらなかったり、もしくは決まったり。その一喜一憂してるシーンをリアルに見たときに、その人たちの本気に、シナリオで書けない感動があったんです。この感動って、前回お話しした海の話でいうと、行けるか行けないか分からないけどみんなで無人島に行きたいというときに、一番体力の弱い子も奮い立たせて向き合う姿は、なんらプロの人たちと変わらないシーンが随所に見られる。それはまさに一緒だなと思いました。
 サッカーと野外活動。もしかしたら大きな違いにまだ僕が気付けていないだけかもしれないです。サッカーを観戦しに来てくださる人って、いろんな日常の中でもやもやしていたものを、僕はたまたま小さな1センチに気がついたように、一回のボールが飛び交う中で見つけ、一喜一憂しています。そういうシーンを見た時に、僕はサッカーは一体になってるけど、野外活動では子供と親という関係であったり、もう一つ一体になれていない部分があると感じます。そこにまだ野外活動の方の、巻き込み力の弱さと言うか、そこがちょっと僕のテーマかなとも思います。

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シナリオをつくり、それを捨てる

今井 サッカーにも野外活動にも「シナリオに書けない感動がある」っていう、この辺りもう少し伺えますか。

がってん 子供達の話になってしまいますが、まず参加するときに、参加したい理由を最初に書いてきてもらって、その後にインターネットを使って面接というか、双方の気持ちのやり取りをするんです。
でも実際にフィールドで会った時には、面接と称して会話をした時の時間とはまた全然違う雰囲気がある。自分で何かを色々見つけ出そうとしてるんですよね。僕があえて、こうしてなさいっていうのはもうその時点ではないんです。僕は最初、10日間なら10日間の分刻みのスケジュールを一回組んでみるんですけども、一人ひとりの子どもたちの個性が集まった時に、もうそのシナリオはできるだけ捨てちゃうんです。捨てて、その子たちと向き合う。プログラムも途中で変更していってしまう。まさにシナリオ通りには最初からいかないことを分かったうえでやります。

村上 あの僕は越冬隊として南極に行った時に、いろんな経験者にお話を伺ったんですね。どういう心構えで行ったらいいのかとか、どういうことを考えていいのか、みたいなことです。その時に言われたのが「南極という未知の場所に行くんだから、先入観は持たなきゃダメだ」と言われたんです。間違っていてもいいけど、それこそ分刻みじゃないですけど、ディテールまでものすごく考える。それを持たないで行く奴は単なる馬鹿だと。
 だけどその先入観を向こうに行った時に固定観念にしちゃうのはもっと馬鹿だって言われたんです。一旦捨てろと。先入観はあくまで先入観。それを固定観念にしない。だけどそれを徹底的に考えたこと自体に意味があって、あとでその現場の空気感をちゃんと知るのにすごく生きてくるから、固定観念にしちゃだめよって言われたんですけど、その話を今ふと思い返しました。

がってん それはすごくあります。子どもたちは一番最初に無人島に行くにあたり、ヤシの木で何か作って・・・とか、いろんな想像をたくさんしてきてくれるんですけど、実際ヤシの木は生えてなくて。でも棒一つで遊べちゃうとか。子どもたちの方が、あっという間に自然に入り込んでこんで行く速度が早いです。家でワクワクしてたことよりも、目の前で繰り広げられること、そこでなにかを発見してそれに自分から適用してく能力は、圧倒的に子どもの方が早いので、シナリオを書いた大人たちが、いかに早くそのシナリオから脱出して、子どもたちの自然に適用していく速度に寄り添っていけるか、そこに尽きるかなって思います。

村上 参加者のモチベーションという観点からお話を伺いたいんですけど、子どもたちが参加する会で、行きたいっていう気持ちは重要なんでしょうか。

がってん まず子どもたちに強弱があるのは当然かなと思います。例えば今日は行きたいと思ってるけど、前日ぐらいになるとやっぱりママから離れるのが嫌とか、行きたいというその日の気持ちは明日は行きたくないに変わってるだろうっていうのも僕は受け止めていきたい。 来てからホームシックになることもあるので、それもいいよねと思う。
ただ、来た時に一つだけルールがあるんだよね、全員でゴールするんだよねっていう、その言葉がなんかアンカーのように効いてくる。たった一つの約束っていうのは、何回も言葉に出てきますね。

村上 ちょっと話が戻っちゃうんですけど、さっきお話を伺っててサッカーってすごいなって思ったのが、サッカー場のフィールドって規格化されていて、それを作ればそれこそ世界中、日本国内にもいっぱいあるわけじゃないですか。その四角の長方形の中で、野外に勝るとも劣らないリアリティが繰り広げられ、再現できるわけですよね。これってすごいことだなと思います。どうしても野外ってその場所に行かないとできないし、そこのコンディションにもよるし、もしかしたらそことシナリオっていうのがすごくリンクしてくるのかなと思ったんです。

がってん 僕は自分のところのスタジアムしかちょっとサイズ感がわからないんですけど、うちのスタジアムは芝生と観客席の間に柵がないんです。ゴールポストが観客席から5メートルぐらいしか離れてないんですね。ですから外れたボールがお客さんの方に飛んでくるんです。それが僕の中で標準的で、そういうふうに見て欲しいんだというつくりをゼロからしたのです。FC今治のスタジアムは今また新しいスタジアムを作り始めているんですけど、そこもまたそういうふうに作っていくっていうスタンスが、なんかスポーツ選手を見に行くだけではなくて、スポーツ選手と見ている方も一体になって、まるで街をつくり上げていきたいというような雰囲気を醸し出している気がしてならないです。

(文・ネイティブ編集長今井尚、写真提供・がってん)

次回のおしらせ

FC今治の夢スポーツで、野外学校を企画する木名瀬裕さん、通称がってんさんに引き続きお話を聞きます。お楽しみに!
The best is yet to be!


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