逍遥日記#3 春嫌いの、春の唄
散歩:6475歩。
今日は風の和らいだ暑い日だった。
先日が台風を思わせるような激しい風の日だったので、その落差に体がついていかない。
シャツと帽子の下が汗ばんでいくのを感じながら自転車を漕いで渡し船の待つ港へ向かった。
宿舎の隣にあるポカリスエットスタジアムでは徳島のサッカーチーム「徳島ヴォルティス」が試合をするらしく、応援に来たサポーターと思しき人たちとすれ違う。
晴れた日に蛍光色のタオルやメガホンが眩しい。
渡し船に揺られ、農園で犬猫と戯れるついでに仕事をして、浮かぶ飛行機とは反対方向に自転車を漕いで帰る。
すっかり乾いた皮膚の隙間がまた緩やかに湿る。
これから春は終わるのだと思う。
昔よりも季節の変わり目がわかりにくくなったのは、きっと気のせいではないはずだ。
野菜の生育が年々ズレてきていると農家さんも言っていた。
とりあえず気温が「暖かい」から「暑い」になったら、それが春のしっぽ。
砂浜を散歩。
棒が二本刺さっているのを見て、4月の終わりに友人と砂浜を散歩した日のことを思い返す。
手頃な棒を拾って2人でぶらぶら歩き、海風に巻かれて霧みたいに足元を抜けた砂埃を見た。佳き日。
思えばあの日から調子が少しづつ良くなっている、ような気がする。日記が書けるくらいには言葉の出力機能が回復している。
春が嫌いな友人の、あの鈴の音のような春の唄を、もう一度聴きたいと思う。
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