流木

半農半ニート。生きているだけ。 旅、散歩、哲学、読書。

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    みんなで作るニートなマガジン。ニートの日記、エッセイ、活動記録、ノウハウ、メンタル問題、低コストな娯楽、節約方法、貧乏旅、思想や哲学、作品評など。

記事一覧

逍遥日記#12 労働じゃない労働

散歩:これから。 労働が労働でなくなる瞬間がある。 例えば今日のような、五畳くらいの小さな和室でおじいさんおばあさんと一緒にしみじみワカメの茎を裂いてる時がそう…

流木
12時間前
20

逍遥日記#11 いもっふ

散歩:18692歩。 らっきょうの仕事が予定より早く終わったので、今日は鳴門金時(芋)の植え付けをやっていた。植え付けなら玉ねぎで散々やったけど、作物が変わると勝手も…

流木
4日前
24

逍遥日記#10 HOME

散歩:雨により中止。 雨を眺めているだけの長い1日だった。 傘をさして散歩するには雨足が激しく、持ってきた本もこちらの古本屋で買った本も読み終えてしまったので、物…

流木
5日前
21

逍遥日記#8 曖昧境界

散歩:10621歩。 今朝は7時に起きた。 早朝覚醒がなかった。ここしばらくで初めてのことだ。 原因は全く分からない。 もうすっかり4-5時起きの生活にシフトしていたものだ…

流木
9日前
17

逍遥日記#7 目眩モカマタリ

散歩:12348歩。 薄暮の迫る街を歩いていると、朝や昼には気づけなかったものを見つけることがある。 例えば大通りの喧騒が遠く聞こえるくらい寂れた小路にひっそりと佇む…

流木
10日前
27

逍遥日記#6 消える街

散歩:11316歩。 今日も特に何をするでもなくスーパーに買い物に行ったり、海辺を散歩をしたり、本を読んだりして過ごしていた。 途中、サビ猫を見かけたのでしばらく遊ん…

流木
12日前
24

逍遥日記#5 夕景、鱏の影

散歩:10492歩。 早朝、ルームメイトが身支度する音で目を覚ました。これから彼らは帰るのだ。 荷物の多い人だったから、外に停めてある車と部屋を何度も往復していた。全…

流木
13日前
26

逍遥日記#4 もーいっかい!

散歩:雨のため中止。 今日はおてつたび最終日……になるはずだったのだけれど、色々あって6月くらいまで延長することになった。 これで旅費をもう少し浮かせられる。 行き…

流木
2週間前
19

逍遥日記#3 春嫌いの、春の唄

散歩:6475歩。 今日は風の和らいだ暑い日だった。 先日が台風を思わせるような激しい風の日だったので、その落差に体がついていかない。 シャツと帽子の下が汗ばんでいく…

流木
2週間前
21

逍遥日記#2 電気羊

今日は散歩には行かずにずっと宿舎の自室で本を読んでいた。というか、外出用のジーンズを洗濯して外に干していたので、乾くまで部屋から出られなかったのだ。 ズボンはこ…

流木
2週間前
20

逍遥日記#1 クラゲ浜

散歩:16245歩。 農園からの帰り道、風の穏やかな日にはいつも立ち寄る砂浜がある。 鳴門サイクリングロード沿いの、突堤で区切られた400メートルくらいの砂浜で、紀伊水道…

流木
2週間前
24

渦の廻転

泡立つ波が海面に白い線を描いた。 高速バスの窓から見えるそれは瞼が開いたり閉じたりしているようで、その無限の一瞥が、よそ者の私を捉えた。 1年前にも見た海だ。 今…

流木
3週間前
31

普遍性(不変性)にさよなら

ここ一ヶ月くらい何も書けない日が続いた。 これは私にとってはけっこう珍しいことで、いつもは思いついたことやら日々の記録を一旦下書きのような形でnoteに残しておくの…

流木
1か月前
39

俯いて爪先

散歩:23436歩。 昨日の話をする。 先週末くらいからずっと街を濡らしていた雨がようやく止み、快晴とまではいかずとも雲の少ない、気持ちの良い天気だった。 雨で農作…

流木
2か月前
36

3月の海辺から

散歩:12610歩。 波が引いていく。 砂浜と、長靴が少しだけ濡れた。 波打ち際から離れて、春の空から降る陽光に温められた流木に座る。 割引パンのストックを切らしてしま…

流木
2か月前
34

社長と半ニートは同じベンチに座る

散歩:15561歩。 私がまだそれなりにちゃんとした会社で真面目に(?)週5日8時間働いていた頃、会社には社長と呼ばれている人がいた。 この社長なる人物に会ったのは最終…

流木
2か月前
58
逍遥日記#12 労働じゃない労働

逍遥日記#12 労働じゃない労働

散歩:これから。

労働が労働でなくなる瞬間がある。

例えば今日のような、五畳くらいの小さな和室でおじいさんおばあさんと一緒にしみじみワカメの茎を裂いてる時がそうだ。

「おまん、おまはん(あなた)」とか「うんまいじょ(おいしいですよ)」とか「いける(大丈夫)」とか、阿波弁の混じる会話や昔話に耳を傾けながらワカメの茎をぴりぴり割き、葉を針で切り裂いて干していく。
お年寄りというのもあり方言が強く

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逍遥日記#11 いもっふ

逍遥日記#11 いもっふ

散歩:18692歩。

らっきょうの仕事が予定より早く終わったので、今日は鳴門金時(芋)の植え付けをやっていた。植え付けなら玉ねぎで散々やったけど、作物が変わると勝手も違うので面白い。

マルチ(ビニールがけされた畝)に開けられた縦長の切れ込みに向かって苗を差し込んでいく。苗は柔らかい木の枝のようで、これからあの大きくて甘い鳴門金時が生えてくるとはにわかには信じ難い。

しかし久々に腰にくる作業。

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逍遥日記#10 HOME

逍遥日記#10 HOME

散歩:雨により中止。

雨を眺めているだけの長い1日だった。

傘をさして散歩するには雨足が激しく、持ってきた本もこちらの古本屋で買った本も読み終えてしまったので、物思いに耽る以外に時間をやり過ごす方法がなかった。

鳴門の空気にもずいぶん慣れて普通の生活を送っているものだから自分が期間限定の旅人であることを忘れてしまいそうになる。
1ヶ月近くここで暮らして、顔見知りも増えて、旅の中にいつもあった

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逍遥日記#8 曖昧境界

逍遥日記#8 曖昧境界

散歩:10621歩。

今朝は7時に起きた。
早朝覚醒がなかった。ここしばらくで初めてのことだ。
原因は全く分からない。

もうすっかり4-5時起きの生活にシフトしていたものだから長く眠れたことが嬉しい反面、これが今日だけで終わってしまうのではと不安も覚える。

あまり深く考えないようにしよう。

休日だったので昼まで洗濯をしたり『ダンジョン飯』と『狼と香辛料』を観てだらだら過ごしていた。イヅツミ

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逍遥日記#7 目眩モカマタリ

逍遥日記#7 目眩モカマタリ

散歩:12348歩。

薄暮の迫る街を歩いていると、朝や昼には気づけなかったものを見つけることがある。
例えば大通りの喧騒が遠く聞こえるくらい寂れた小路にひっそりと佇む喫茶店なんて、とてもじゃないが明るいうちは気づかない。

店に入ってすぐ正面の壁に『真珠の耳飾りの少女』と『牛乳を注ぐ女』が飾ってあった。
お堅い場所なのかと思いきや、使われていないストーブの上には少年ジャンプが置いてある。

テー

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逍遥日記#6 消える街

逍遥日記#6 消える街

散歩:11316歩。

今日も特に何をするでもなくスーパーに買い物に行ったり、海辺を散歩をしたり、本を読んだりして過ごしていた。

途中、サビ猫を見かけたのでしばらく遊んでもらった。

もう3週間もここにいる。
去年も2週間同じ場所にいたから、この街のどこになにがあって、全体的にどんな雰囲気なのかもただの旅行者だったころよりはずっと深く把握できている、と思う。

鳴門はパン屋とカフェがけっこう多く

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逍遥日記#5 夕景、鱏の影

逍遥日記#5 夕景、鱏の影

散歩:10492歩。

早朝、ルームメイトが身支度する音で目を覚ました。これから彼らは帰るのだ。

荷物の多い人だったから、外に停めてある車と部屋を何度も往復していた。全部の荷物が運び出される頃には部屋はずいぶん広くなってしまって、急に空っぽになるものだからそこには不在の違和感のようなものが残っていた。

仲良くなった人と「またどこかで会いましょう」と、挨拶をして別れた。
見送る側というのはまだ慣

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逍遥日記#4 もーいっかい!

逍遥日記#4 もーいっかい!

散歩:雨のため中止。

今日はおてつたび最終日……になるはずだったのだけれど、色々あって6月くらいまで延長することになった。
これで旅費をもう少し浮かせられる。
行きたいところを増やしたり、旅先でちょっとだけ贅沢をしてもいいかもしれない。

偶然の導きによるものとはいえ、農家さんや犬猫ともうしばらく一緒に居られるのは嬉しい。

同じタイミングで参加していた他のおてつびとは明日みんな帰ってしまう。

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逍遥日記#3 春嫌いの、春の唄

逍遥日記#3 春嫌いの、春の唄

散歩:6475歩。

今日は風の和らいだ暑い日だった。
先日が台風を思わせるような激しい風の日だったので、その落差に体がついていかない。

シャツと帽子の下が汗ばんでいくのを感じながら自転車を漕いで渡し船の待つ港へ向かった。
宿舎の隣にあるポカリスエットスタジアムでは徳島のサッカーチーム「徳島ヴォルティス」が試合をするらしく、応援に来たサポーターと思しき人たちとすれ違う。

晴れた日に蛍光色のタオ

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逍遥日記#2 電気羊

逍遥日記#2 電気羊

今日は散歩には行かずにずっと宿舎の自室で本を読んでいた。というか、外出用のジーンズを洗濯して外に干していたので、乾くまで部屋から出られなかったのだ。
ズボンはこの1着と部屋着用の短パンしかなくて、短パンは着て歩き回るにはやや薄すぎた。

荷物を最小限に抑えているからこれは仕方がないのだけれど、無駄な用意のいい私は旅先では雨や暇な時間、あとはこういう状況(着る物がなくて部屋から出られない等)に見舞わ

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逍遥日記#1 クラゲ浜

逍遥日記#1 クラゲ浜

散歩:16245歩。

農園からの帰り道、風の穏やかな日にはいつも立ち寄る砂浜がある。
鳴門サイクリングロード沿いの、突堤で区切られた400メートルくらいの砂浜で、紀伊水道を挟んだ向こうに和歌山の島影がぼんやりと見える。

いつ来ても数人の釣り人を除いては誰もいなくて、ここぞとばかりにうろうろしたり寝転がったりして日が傾くまで好きに過ごすのが最近の楽しみだ。

この砂浜は少し変わっている。
打ち上

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渦の廻転

渦の廻転

泡立つ波が海面に白い線を描いた。
高速バスの窓から見えるそれは瞼が開いたり閉じたりしているようで、その無限の一瞥が、よそ者の私を捉えた。

1年前にも見た海だ。
今ではすっかり見慣れてしまった遠州灘の荒々しい海とはまた違う、静かに凪いだ、どこかささくれだった気持ちを鎮めてくれるところのある海。

故郷でもなんでもないのに、あぁやっと帰ってきた、なんて思ってしまう。
去年、ほんの2週間くらいしか滞在

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普遍性(不変性)にさよなら

普遍性(不変性)にさよなら

ここ一ヶ月くらい何も書けない日が続いた。
これは私にとってはけっこう珍しいことで、いつもは思いついたことやら日々の記録を一旦下書きのような形でnoteに残しておくのだけれど、それすらできずに組み立てた文章は紐の抜けたビーズ細工みたいにぱらぱらと崩れてしまって、もうどうしようもなかった。

定期的に書く、というひとつのルーティーン(ルーティン、とどちらが正しいのだろう?)が乱れると生活の他の部分にも

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俯いて爪先

俯いて爪先

散歩:23436歩。

昨日の話をする。

先週末くらいからずっと街を濡らしていた雨がようやく止み、快晴とまではいかずとも雲の少ない、気持ちの良い天気だった。

雨で農作業が中止になったりなんとなく気分が乗らなくてサボったりしていたら休日がくっついて結果的に五連休になっていた。
とはいえその間は雨が降っていたわけで、必要な食料を買い出しに行く以外の理由で外に出ることもなく、なんとなく脚がむずむずす

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3月の海辺から

3月の海辺から

散歩:12610歩。

波が引いていく。
砂浜と、長靴が少しだけ濡れた。
波打ち際から離れて、春の空から降る陽光に温められた流木に座る。
割引パンのストックを切らしてしまっていたので、直売所の総菜をいくつか買って食べていた。
光を反射する水面が眩しい。

遠くには漁船か旅客船か、とにかく大きい船が水平線をなぞるようにゆっくりと進んでいく。

この海辺には、相変わらず誰もいない。
鳥の声、波の音、風

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社長と半ニートは同じベンチに座る

社長と半ニートは同じベンチに座る

散歩:15561歩。

私がまだそれなりにちゃんとした会社で真面目に(?)週5日8時間働いていた頃、会社には社長と呼ばれている人がいた。
この社長なる人物に会ったのは最終面接と内定式くらいのもので、あとはどこで何をしているのか分からんがとにかく偉い人、という程度の認識だった。あとは似た顔をした役員やら幹部やらが頼りないボディーガードみたいに緩慢な動作でくっついていた。

今働いている農場にも社長と

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