戸松遥さんは、一体いつまで最強女子高生ヒロイン声優であり続けるのか。

戸松遥さんが、大好きだ!!!!!!

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あれは1年前のこと。2021年放送のTVアニメ『ホリミヤ』の初回を見たとき、あまりに堀さんが可愛すぎて膝から崩れ落ちて身悶えた。可愛い、可愛すぎる……!

そして思った。「戸松遥は一体いつまで最高の女子高生ヒロインを生み続けるのか!」と。


戸松遥さんを知ったのは2009年頃だった。当時の私は大学生。大学とダブルで通っていた養成所で、プロダクションへ上がるオーディションに落ち、京都の大学へ通う何者でもない女子大生になっていた。まあ、養成所に通っていたときだって何者でもないのだが。

声優になりたい私にとって、同年代ないしは年下の声優の活躍は気が気じゃなかった。「同じステージにも立ってないくせに何をまあまあ偉そうに……」と私だって言いたくなるが、実際にそういう気持ちだったのだから仕方ない。


2009年放送のTVアニメ『にゃんこい!』で、戸松さんは桐島朱莉と桐島琴音という、双子キャラの二人ともを演じていた。これがすごくお上手だった。お若い、というか、明け透けに言えば「自分より年下の声優」が、少ない経験値の中でなんとかやりくりして、キャラクターを似せつつ演じ分けているのがすごかった。新人ならではの荒さ拙さもある。それは新人なんだから当たり前だ。それでも上手いと思った。それがまた、リアルに自分との差を感じたのかもしれない。


戸松さんの最強女子高生伝説が確立したのは、個人的には2011年放送のTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の安城鳴子、通称「あなる」を推したい。アニメに詳しい方からすればさらに初期の作品も挙がるかもしれないが、女子高生×ギャル×ツンデレに加えて、実は幼少期は引っ込み思案のメガネ女子、そして友情に熱いあなるを、戸松さんは最高最強に演じた。社会的にも大きく取り上げられ、いまや不動の名作となった。可愛過ぎたし、あなるは今でも思い出すだけで目頭が熱くなる、大好きで大好きで大好きなキャラクターだ。

「あなる」をこんなにポップにナチュラルに言いまくれる日が来るなんて、一体誰が想像しただろう。当のアナルだってビックリしているはずだと、擬人化アナルを想像しながら思っている。


戸松遥の最強女子高生といったらこっちだろ!!!というお怒りの声も聞こえてきそうだ。『ソードアート・オンライン』のヒロイン・アスナ。今なおシリーズが続く人気アニメ。現代男子たちの憧れが詰まっているし、女性からしてもアスナというキャラクターはとても魅力的だ。

一人のキャラクターをずっと演じ続けるのは難しい。というのも、キャラクターの時間と現実の時間の進み方が違う。アスナがキリトと大変な目に遭いながら過ごす数年のあいだで、現実ではアニメ『ソードアート・オンライン』は10周年を迎えた。年齢と共に、当然ながら声も老いる。そして、人間なんだから考え方だって成長して変わる。演技への考え方、キャラクターへの考え方を変えながら、経験を重ねながら、それでも同じ人を演じ続けるのは、つらいとか楽しいとかいう感情の手前の段階で難しい。

恥ずかしながら『ソードアート・オンライン』は放送当時は見ておらず、2018年に一気に視聴した。0歳の子どもをあやしながらひたすらNetflixで見たのでよく覚えている。アニメライターの仕事も始めるようになり、もう声優としての焦りや悔しさはまったく無く、素直に「すごいな」と思いながら作品を楽しんでいたと、いまこの記事を書きながらちょっぴり切なくなった。


今に至るまで、戸松さんは定期的に女子高生を演じ続けている。Wikipediaを眺めながら『となりの怪物くん』『桜Trick』『ReLIFE』『クズの本懐』『女子高生の無駄づかい』パッと反応できたのはこのあたり。あとは『告白実行委員会シリーズ』なんかもまさにそうだろう。

このあいだに、戸松さんもいろいろなキャラクターを担当された。その中でも着目したいのが、『プリキュア』と『妖怪ウォッチ』。いわゆる子ども向けアニメだ。

『妖怪ウォッチ』のケータくんは、戸松さんが声優としてのキャリアや方向性を調整しているように当時感じていた。つまり、女子高生ヒロイン声優の枠を、もっと若手の声優へバトンパスしているように思ったのだ。

言わずもがな、声優の仕事はオーディション制で、自分でキャラクターを選び取っていくことは至難の業だ。それでも、実力のある方々は、自身がどういう声優でありたいか、どういう声優として求められていくべきかを、考えながらキャリアを積んでいる。戸松さんは深夜アニメから夕方アニメにも仕事を拡げ、要はアニメファンだけが見るアニメから抜け出して、これからさらに声優としての幅を見せていくんだと、『妖怪ウォッチ』ブームを眺めていた。


しかし、戸松さんは深夜アニメの女子高生ヒロインに帰ってきた。

アニメファンというものは残酷で、戸松さんが演じる女子高生を愛しつつも、戸松さんが女子高生キャラにキャスティングされると「また戸松遥かよ」と言うのである。「また花澤香菜」「また能登麻美子」「また林原めぐみ」と言ってきた歴史がある。

(アニメファンの皆さん巻き込んですいません、あくまで私見です)。

声優が人気職になって、キャラクターではなく声優本人の年齢がますます見えるようになった。歳を取ればそれだけ女子高生との年齢差は開くし、それが視聴者にもバレる。女子高生を演じるハンデはどんどん大きくなる。


そんなこんなで勝手に上がったハードルを、軽く超えられたもんだから、『ホリミヤ』の堀さんにはやられてしまった。これまでのすべての戸松遥女子高生キャラを包括しても、堀さんはめっちゃ可愛かった。戸松さんを語るために、声優について語るユーチューバーになろうかと考えたくらいだ。


『ホリミヤ』を見て、「戸松遥さんが大好きだ」という話をどこかしらでしたいと思ってから、気づいたら1年が過ぎていた。自分の怠惰に辟易するが、数奇なことにこの1年のあいだで、私は戸松遥さんにお会いする機会を得た。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の10周年記念Blu-ray BOXに封入されるブックレットの制作をお手伝いすることになり、茅野愛衣さん・早見沙織さんとのインタビューに立ち合わせいただいたのだ。


戸松さんは、思ったより普通の感じの方だった。いや、別にすごいオーラを放っていてほしかったとか、目の前にしたら膝から崩れ落ちてしまうかもとか、そんなことを思っていたわけではない。

なんだろう、なんというか、「自分と同じ人間なんだ」と、ちゃんと思える人だった。声優を目指して声優になって、一所懸命にキャラクターと向き合って悩んで、現場で揉まれて涙して、つらいこともいっぱいあったんだろうなと、インタビューの短い時間の中で感じた。


声優は実写の俳優と違って、年齢も性別も、生物をも超えて何にでもなれる。それなのに、声優という職業がどんどん日の目を見るようになり、あるいは自分が声優を目指すようになり、声優のパーソナルな部分が見える/意識するようになったことで、勝手に声優の演じられるキャラクターの幅を狭めるようになったのかもしれない。

どんなに声優自身の顔が見えるようになっても、声優は、年齢も性別も、生物をも超えられる。戸松さんの堀さんに感動したのは、そういう理由もあったんだなと、1年越しに文字にしながら思う。


だからと言っても現実的に歳は取る。こればっかりは平等だ。

戸松さんは、これからも新たな女子高生ヒロインを演じるのだろうか。戸松さんが次なる最強女子高生ヒロインにキャスティングされる日を、勝手にハードルを上げながら待ちたいと思う。

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