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【映画感想125】VORTEX/ギャスパー・ノエ(2023)

あまりにも語彙力がなさすぎるので週2で映画の感想を書いています。今回はギャスパー・ノエ監督の「ヴォルテックス」をみました。

【あらすじ】

『肉体より先に魂が壊れる全ての人へ』

妻が認知症を発症してから徐々に追い詰められていく、ある老夫婦の生活を2つの視点で追う映画。



【感想(ネタバレあり)】

映画館で見ました。認知症の妻が家の中を徘徊するシーンなど、漫画でいうと同じコマを繰り返し続くような、単調なシーンが多く座席にじっと座ってみるのがちょっと辛かったです。
冒頭の歌う女性の顔がアップで映るシーンとかも結構長い。
映画館の椅子、もっとモコモコだったらいいのになあ。例えばカリモクの椅子で揃えた映画館とかどうでしょう。いい椅子に座れる映画館、売れるかわからないけどあったらわたしは行きたい。

脱線しました。

話を映画本編に戻すと、認知症と老夫婦の愛の話、ではなく何か別のテーマを語るために認知症を抱えた夫婦を登場させたという印象でした。
以前、同じく認知症をテーマにした写真展を見たとき、毎日数えている魚の数がだんだんわからなくなるとか、妻が自分を認識できなくなったことを「心の糸が切れた」と表現するとか、具体的な症状や感情を描写して観客の心情に訴えるような内容だったのですが、この映画は真逆であまり感情に訴えるような感じではなく、また認知症の症状もあまり細かくは描写がないので描きたいのはそこじゃないのだろうなと思いました。
極端なことをいうと認知症ではなくても成立する話なんだろうなあと。

なので今回はこの映画が何を言いたいのかを自分で考えて見て、監督のインタビューを見て答え合わせしようかと思います。

個人的に

・魂が死んでも肉体はそのまま残ってしまうことの悲しさ
・薬で肉体の寿命だけ伸ばした結果がこれだよ!
・どれだけものを集めても死んだらゴミになるし誰かが処分しなければならない

あたりかなあと思いました。

画面に分割で薬を捨てるシーンとドラッグをキメるシーンが同時に流れるシーンは結構直接的に感じました。
映画内で正気じゃないときは不快な雑音、正気なときは無音になるのですが、
このシーンだけBGMが大きくてどちらかわからなくしてるので「どっちも一緒だよね結局」というメッセージなのか「観客の判断に委ねる」という意図なのか。

あと一緒に見に行った方とあとで話したのですが、
「登場人物が全員嫌なやつ」というところ笑

妻は正気でないのでさておき、夫は妻に対して心配するよりはイラつきの方が目立つし、あろうことか浮気してるし、夫婦の息子は自分の子供の前でドラッグキメちゃうし、その孫は食卓でガンガンガンガンガンガン騒音を立てる。
(このガンガンが途中退席する人が出るくらい長いのでかなりきつい)
認知症のストレスで嫌な面が出てきて、とかではなく序盤からこんな感じなので感情移入ができない。「認知症がテーマの作品ではないんだろうな」というのはここも原因でした。
あと、夫が精神科医のリストを作ったと言い張る(多分嘘)シーンを見て序盤で息子が語っていた「薬物依存の治療頑張ってる」発言も嘘なんだろうなあ。。。と思いました。嫌なところで親子感を出すな。

ところで嫌なやつに感情移入できないということは、人間はやはり自分のことをいいやつだと内心思ってる(思いたい)ってことなんだろうかとふと思いました。

と、つらつら感想を書いたところでそろそろ監督のインタビューを見てみようと思います。

──お母さまの状態よりソフトな認知症を描いたのはどんな意図があったんですか?

老いや死を取り上げる上でいくらでもショッキングに描くことはできましたが、今作はクラシカルな映画にしたかったので少し抑えました。人間は生きてる間は精神的なことを語ることが多いですが、亡くなる直前は肉体や精神が機能しなくなる、あるいは分解されます。最後は何も残らず消えてしまうという形で死を表現したかったんです。私が突然脳出血で倒れた時、生き残る確率は5割で、後遺症が残る確率が35%、健康な状態で復帰できる確率は15%だと言われました。例えば後遺症が残ったりハンディキャップを負ってしまった場合、どうしても周囲に負担がかかります。そうならないように生きたいと思い、病気から復帰してからは健全な生活を心がけています

https://horror2.jp/63886

あえて描写を抑えていただけだった見たいですごめんなさい。

好き嫌い別れると思いますが、
確実に自分の最期に否応なく意識を向けさせられるのでなんとも言えない気分になってしまう映画でした。

追記
あとこの映画の特徴である画面2分割(なんて呼べばいいんだろう)で個人的に印象的だったのが、夫が亡くなって病院の待合室で妻が泣く息子を膝枕する場面で片方の画面だと息子の頭しか写ってなくて少年にも見えたところでした。


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