日差しの中で見えたもの
ゴールデンウィークは、特に出かける予定もなく、毎日散歩して過ごした。
夏のように暑かった日、日差しが降り注ぐ青梅街道沿いを歩いていて、ふと気付いたことがある。
商店街にあるよく行く珈琲屋さんでアイスコーヒーを買って、大通りに出た。思わず手で日差しを遮るほど眩しい。瞬きをするたび、まつげの影が動いて、世界がキラキラして見える。
それで、思った。
あれ?目が良くなったかな?
私の視力は両目とも0.02ほどしかない。極度の近視である。強めのコンタクトを入れているけれど、遠くのものがはっきり見えることはほぼ無い。
でもこの日、景色のすべてが鮮やかに、とってもくっきり、見える気がした。
この感覚、たまにあるんだよなぁ。なんでだろう…
そんなことを考えてアイスコーヒーを飲んでいたら、急に閃いた。
あ、わたし今、日差しの中で、景色を見てる。
青梅街道の北側の歩道を、東へ歩く。昼過ぎ。大通りの反対側は日陰だったのに、この時はなぜか日陰に行かず、日差しの中をずんずんと歩いていた。
頭の上から日差しを浴びて、光の中で景色を見ていたら、歩道の銀杏並木の葉の一つ一つ、建物のレンガ一つ一つが、その存在を主張するかのように、自ら発光しているんじゃないかと思うくらい、鮮やかに、見えた。
ああ、日差しの中にいるから、こんなに鮮やかに見えるのか。40年弱生きてきて、今更気づくなんて。
銀杏の木の影に少し入ると、景色も少し陰って、フィルターがかかったように、彩度が落ちる。日差しの下に出ると、世界がまた、ぱっと明るくなった。
私は季節の中では秋が好きで、暑いのはどちらかというと苦手だ。散歩も涼しい時間帯に出ることが多い。平日は朝と夕方の通勤時しかオフィスから出ないような毎日だ。
太陽が一番高い時間に外に出たのはいつぶりだろう。おかげで、子供みたいな発見をすることができた。
別に、いつも日向を歩きたいわけじゃない。景色が鮮やかに見えない日があってもいいと思ってる。
でも、時間帯や日向や日陰、自分で選んで、見える景色が変わるんだよなって、覚えておこうと思ったのでした。
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