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金髪の彼女

「NARUMIさんは、自分のスタイルを持ってますよね」

行きつけの美容院で言われた。いつも切ってくれる同世代の美容師さんと好きな服装の話になった時のこと。

何やら、最近流行りの「骨格診断」に行ってきたそうで、今まで自分で思い込んでいたものと違ったらしい。それで、似合うとされる系統の服が持っている服と違うのだとか。

その時彼女が来ていた服もいつも通りとても似合っていて素敵だったけれど。

それで、「私は迷走してるけど、NARUMIさんはもうスタイルが確立してそう」と言われたのである。

全くもって初めて言われたので驚いた。もしかすると、美容院には少ない私服を着回して行くので、いつも同じような服装になっているからそう言われただけかもしれない。

私に確立したスタイルなど、ない。

子供の頃は、姉の真似ばかりしていた。姉妹なんてそんなものかもしれないが、流行りだった厚底サンダルも、小学校のクラブ活動も、高校の進学先も、姉と同じものを選んだものだ。
大学進学後や就職してからも、人の持ち物が気になって、時に真似して買ってしまうことがあるのは今も変わらない。

だからなのか、自分の好きなスタイルが明確で、好きなものを好きだと表現できる人に猛烈に憧れている。

隣の部署の若手の子が、ある日金髪のショートカットで出勤してきた。みんなちょっとざわついていたけど、特に服装・髪型規定がある訳でもないので、誰も何も言わなかった。本人も、誰にも注意されないからいいでしょ、と同期の子に言っていたとか。

金髪の彼女を見た時、わたしはすごく動揺していた。離れたキャンパスに勤める仲の良い同僚に、「〇〇さん金髪になってるよ!」と報告したりもした。
彼女の金髪について、直接言わないまでも批判的な意見があったことは否めない。しかし、私の隠しきれない動揺は、「自分のスタイル」を貫く彼女への、嫉妬にも似た憧れからだったと思う。

彼女は、スカーフを首に巻いて少しレトロな雰囲気のときも、流行りのシースルーシャツで今どきの若者らしいコーディネートのときもある。でもどんな格好をしていても、彼女の金髪によく似合う「彼女のスタイル」があるのだ。

そんな彼女を朝見かける度、ちょっとだけドキドキする。さながら推しのアイドルに遭遇した高校生のように。

そして先日、彼女の影響を多分に受けて、行きつけの美容院でショートカットにしてもらったのだった。金髪にする勇気はなかったが、小学生以来のショートカットにする勇気を彼女がくれたと思っている。

結局彼女の真似なのだけど、30年振りのショートカットはかなり快適だ。まだ久しぶりに会う人には驚かれるけれど、この髪型がいつか「私のスタイル」になるかもしれない。



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