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女性起業家が不妊治療・出産と資金調達を同時に達成させた体験記録

2024年5月2日第一子誕生!

久しぶりのnoteです。この度、第一子となる女の子を出産しました!仕事のためにある程度バースコントロールをしたいという目的から、計画無痛分娩(産む日を事前に決めて陣痛誘発剤を使用することで出生日を計画し痛みも軽減できる出産方法)で、また生死に関わることなのでお産で有名な山王バースセンターでの出産を選択しました。病院は全ての対応がシステム化され、完全個室制でサポーティブ。待合室では何名かの起業家仲間に会い、高額ですが経営者にはおすすめの産院です。またこの選択を快諾してくれた夫にも感謝です。

2023年は不妊治療と資金調達が同時にスタート

私は現在シリアルアントレプレナーとして2度目の起業に挑戦しています。インターホールディングスという真空特許技術で世界のフードロスと地球温暖化の解決に挑むスタートアップです。2023年の8月〜10月クローズでシードの資金調達に向けて、年明けから投資家様との交渉を開始しました。それと同時に、35歳という年齢から子供をそろそろ産みたいと考えていたので妊活もスタートさせました。夫とは週末婚ということもあり(夫は横浜で会社経営をしており、お互い会社の近くに住みたいという理由から平日は別々の暮らしをしています)タイミング方も難しいので早々に顕微授精(人工的に着床直前までの受精卵を作り凍結する)の不妊治療で出産をすることにしました。

資金調達の苦難

今年からロゴとMVVを一新しました

インターホールディングスはDesign Green Economy・デザイングリーンエコノミー(環環境価値と経済価値が両立する社会を創る)というビジョンの元、真空特許技術でサプライチェーン(貿易・物流・小売・生活者)に変革を起こす事業を展開しています。しかし特許ビジネス且つディープテックに近い分野のため、先に開発費などの投資がかかり高利益体質になるまで時間がかかります。現在の資金調達の市況上、クライメートテックなど投資家の興味は引き出せるものの「売上の実績が出たら次回ラウンドで出資したい」と断られる日々が続いていました。今振り返ると今までのビジネス人生の中で一番自信を無くしかけていました。加えて不妊治療で気分の浮き沈みもあり、心身が安定しない時期が続きました。今思い返すと、自分でも信じられないのですが「会社の立ち上げ期に妊娠を考えていたり、中途半端な自分は社長にふさわしくない」と本気で悩み、COOの山口に「代表を交代して欲しい」と相談をしたこともあるくらいでした。

不妊治療の苦難

ランクに分かれる受精卵

年明けにスタートさせた顕微授精は、3月に一度受精卵を戻したものの、あっけなく着床せず失敗に終わりました。その時前職のスマートメディアの退任と最後の海外出張も重なり、「私が仕事で飛行機に乗ったからだ」「仕事が忙しいし自律神経が活性化しているから着床しなかったんだ」と自分を責めました。ぜひ男性経営者やマネジメント層の方に知ってほしいのですが、不妊治療は平日病院に通う頻度が高く、有休などを使わないと進行できません。子宮の状態で、急に明日来てくださいということもあります。従業員メンバーだと休みが多くなり、職場に申し訳なくなる気持ちが発生します。また何を具体的に女性がしているかというと、採卵時期は毎日決まった時間に自己注射(自分のお腹にプスッと細い針を刺します!涙)と、エストラーナテープというお腹に薬が入った絆創膏みたいなものを貼り、常にお腹が痒いです。笑 そして極め付けは、膣剤です。毎日妊活を促す錠剤を膣に挿入して過ごすなど、とにかくやることがたくさん…!是非、女性のマネジメント層を増加や離職率を下げたい方は、職場の福利厚生で「妊活休暇」など特別な休暇を作る工夫などをして欲しいと思います(どんな内容がいいかなど、私でよければいつでもご相談に乗ります!)

自分の選択を正解にするのは自分。半年間でようやく見えたトンネルの先の光

年明けから不安定だった半年間、このままでは私らしくない!と、投資家とのアポイントを増やし(総勢60名くらいお会いしたと思います)、またPRのためにもたくさんのピッチコンテストに参加し、優勝をするなど自己効力感を高める努力をしました。そんな中、経済産業省のJ-starXの女性起業家プログラムで代表に選んで頂けたことも転機になりました。(のちに飛行機ギリギリの妊娠6ヶ月〜7ヶ月の安定期にラスベガス・シリコンバレーに1ヶ月間行き、アクティブな妊婦になることになります。笑)常に前向きに周りをポジティブにエンパワーをしていく自分のメンタルマネジメントをすることで、仕事も大手企業とのPOCが決まったりと実績が出始め、ようやく8月にリード投資家が決まりました。それと同時に、なんとお腹にも待望の赤ちゃんが宿っていることがわかりました

子宮に宿った小さな命。初めて手が見えた日


やっと決まった最初のリード投資家は、物流業界でのイノベーション創出を目的にしたValue Chain Innovation Fund様でした。担当のSpiral社のシニアアソシエイトである直井さんはサステナビリティ・クリーンテック領域の知見が深く、すぐに弊社のビジネスモデルと技術を理解し、物流業界とイノベーションが起こる可能性を信じてくださいました。そしてその後ファーストドミノ様と、一回目の起業のリード投資家で今回もエンジェル期から参画いただいている、iSGSインベストメントワークス様にも追加投資を決定いただきました。社長の佐藤真希子さんは結婚式でスピーチをいただくほど、私の人生を伴奏してサポートしてくださっている、時に厳しく愛のある本当に素晴らしい投資家様です。

着床した矢先の切迫流産

投資先とDDを進めている最中、待望の赤ちゃんが宿りました。妊娠は安定期に入るまでが勝負。流産のほとんどは最初の1~2ヶ月で起こります。私はバンコクでJETRO様のイベントで海外出張をするなど、今までと同じ生活をしていた矢先、夫と家でテレビを見ていたら膣から出血が‥。絶対流産していると焦る私に、行きのタクシーで病院に向かう途中夫が「どんな結果になっても、五久実はこの経験を必ず糧にできる」というとてもその時にナイスな励ましの言葉をくれて、「なんで今そんな良いこと言うの〜😂」と涙したことを今でも覚えています。病院に行くと、切迫流産という診断結果が。切迫流産とは厳密には流産ではなく、胎児が生きて子宮内に残っているが、流産の一歩手前である状態を言います。そこからは2週間の自宅での絶対安静を告げられました。その後復帰してからも安定せず、経営会議の最中に突然の出血があったり(この時の取締役の山口と野村の顔面蒼白な顔は今でも忘れられません。笑)仕事と安定期までのバランス、頑張りたいのに頑張りきれないジレンマを抱えながらなんとか2023年の年末を迎えました。

私たち世代が、次の子供たちの未来を創る

2024年の年明けからは安定期に入り、幸いつわりがないこともあり順調に仕事にも集中することができました。着実に売上・実績を作り事業を伸ばしつつ、同時にお腹の中の我が子もすくすく育ちました。そして無事シードラウンドで総額2.5億円の調達を完了させることができました。
インターホールディングスのメンバーやお取引先様はもちろん、投資家の皆様からも「今後の女性起業家のロールモデルになるためにも、きちんと産休・育休をとってくださいね!」など、とても理解のあるお言葉をいただき、今日を迎えることができました。起業家たるもの、どんな状況であれ、自分のメンタルマネジメントは大前提ですが、今までのキャリアで積み重ねてきた信頼や人脈、そして家族が困った時の自分を支えてくれるのだと妊娠を通して、改めて周りとの共創の大切さ、人や環境への感謝の念が生まれています。

娘が産まれ、私は今年37歳になります。
GWだというのに夏日のような異常気象、自然災害、人口爆発からの食糧不足問題、各地で起こる戦争など今後私たちの子ども世代たちはダウントレンドに入っていく地球を担うことになります。子供が産まれたことで、一層持続可能な地球のために、私たち大人が今までの経済合理性だけを考えて作ったビジネスを根底から考え直し、必要な投資の意思決定をすべきだと感じています。インターホールディングスの仕事をして痛感しますが、持続可能なビジネスを作るためには、必ず初期コストとオペレーション変更がつきものです。でも、私たちが今変えなければ誰がやるのでしょうか。
私はありがたいことに、弊社の真空特許技術を使って食品の賞味期限を大幅に伸ばす武器で、世界の貿易から物流・小売の世界の変革というミッションを持ち挑みたいと思います。娘が物心がつくまでに、母の仕事が世界課題解決の一端を担えていると感じてもらえる会社にしてIPOを目指したいと思います。この一連の体験は、資金調達を通じてインターホールディングスで地球の未来を創ること、出産を通じて新しい世代に繋いでいくこと、全てが未来のために繋がっていると信じてこれからも頑張ります!

心理学を経営と子育てに役立てる

そして最後に、私の母は心理カウンセラーです。実は私も母の跡を継ぐために大学までは心理学を専攻していました。そしてこれからは母が仕事を辞めて、私の育児をフルサポートしてくれます。母と一緒に発達心理学や臨床心理学のメソッドを使って、これからの世界を生き抜くためにも、自己肯定感が高く、主体性・能動性を持った強い子育てに挑戦していきたいと思うので、私のX(Twitter)でその実践したことについて呟いていきたいと思います。
また心理学的に女性には「女性特有の成功不安」があると言われています。これは、女性は成功することでむしろ周囲から嫌われるのではないかと心配しやすく、成功不安という動機を発達させやすいという話です。これが今日の女性管理職の不足や、女性が責任を持ちたがらない、自信がないといった問題につながっているのではないかと考察しています。
今回の私の場合は成功不安とは違いますが、少なからず妊娠を通じて「社長という責任あるポジションなのに、休んで良いのか」など特有の罪悪感や不安を感じ、パフォーマンスに影響が少なからず出たということが衝撃でした。こんなにポジティブな私でも陥るということは、世の中の女性の大半が妊娠によってキャリアを諦めたり、自信がなくなるということが容易に起こり得ると実感しました。女性の社会進出を向上させたいという昔からの信念に基づき、このような体験を記録に残しながらも、女性のキャリアに寄り添う活動も続けていきたいと思います。

長文になりましたが、産まれた娘は最高に可愛いです!
これからの仕事と育児の両立、新しい課題にワクワクしています!
今後ともどうぞよろしくお願いします。


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