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そごう美術館(神奈川県横浜市・横浜駅/水木しげる展)

そごう美術館では「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」を開催。『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』など数々の名作を生み出した妖怪の大本山である水木しげる。その作中に多く登場する妖怪について、そのルーツをたどりつつ水木しげるフィルターを通したかたちで紹介している。

鳥取県の境港で生を受けた水木少年は、幼少期より家へお手伝いに来ていた老婆「のんのんばあ」(神仏に仕える人)から、お化けや妖怪の話を教えられ、まさに妖怪の英才教育を受けてきた。空想の世界はこの幼少期に培われてきたと言っても過言ではない。高等小学校(中学校)を卒業した後に大阪へ出て就職を経て美術学校で勉強したが戦争に従軍、やがて南方へと派遣される。戦争で片腕を失ったが、復員後は美術学校や仕事をしながらその伝手で紙芝居を描くことになった。

百鬼夜行の妙である

漫画家としてのキャリアは貸本漫画家としてのスタートで、当時は戦争漫画やギャグ漫画、少女漫画などを描いている。水木しげるの代表作とも言える鬼太郎の原点『墓場鬼太郎』はこの頃に描かれた。雑誌「ガロ」の看板作家として活躍し、やがて「週刊少年マガジン」で人気を得ると、45歳にしてようやく人気作家の仲間入りを果たしている。鬼太郎をはじめとする妖怪漫画は現在でも多くのフォロアーを生み出しファンも多いことはよく知られている。なお、鬼太郎に登場する妖怪は鳥山石燕『画図百鬼夜行』や柳田國男『妖怪談義』などから採用されていることが多い。

妖怪は民俗学とも大いに関係している。水木漫画に登場する妖怪を紹介するとともに、日本における民俗学・妖怪学の系譜についても触れている。井上円了や柳田國男、江馬務、藤沢衛彦などの経歴が紹介されているのも展覧会ならでは。もちろん妖怪と言えば触れないわけにはいかない荒俣宏や京極夏彦のインタビュー映像なんかも放映されている。

面白いのはNHKで放送していた「水木しげるの妖怪えほん」のオムニバス映像で、これまた妖怪についての知見がある俳優の佐野史郎がナレーションを行い、水木漫画によく登場する妖怪が紹介されている。展示会場には子泣き爺や砂かけ婆などの「鬼太郎ファミリー」などの像が展示されているほか、VR映像で会場に隠れている妖怪を見つけ出す試みもされている。トイレはデパートの同フロア内にありウォシュレット式。

水木しげるが南方戦線で遭遇したという「ぬりかべ」


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