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ふれる博物館(東京都新宿区・高田馬場駅)

美術館の展示というのは基本的には観て鑑賞するものである。それはある種で普遍的な常識といえるかもしれない。けれど鑑賞が目で見て味わうだけのものだとしたら、目の見えない人であればどこで鑑賞する? そんな目の不自由な人へ向けた展示として作られたのがこのふれる博物館である。

館内は1フロアのみながら、実際に展示物に触れることを前提とした展示になっているのが特徴的で、展示にはロダンの『考える人』やミロのヴィーナス、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』などが彫刻として展示されており、それらに触れてみることで、どんな形状をしているのか、というのを触感で味わうことができるという稀有な体験ができる。

最後の晩餐 触れることで知る芸術

情報伝達の方法として挙げられるのが点字である。ここでは点字の創始者であるルイ・ブライユの紹介もしている。本人も後天的に失明した人物で、自身の経験も経て19世紀に考案されたのが点字である。当時は障害のある子供に対しての教育が不充分だった時代で、ブライユはそういった境遇を打破するべく教育者として盲学校で教鞭を取り、アルファベットを点の組み合わせで表現する点字を考案し、後進を育てた。現在でも彼の生まれた日である1月4日は世界点字デーとされている。

ルイ・ブライユも触れる

他にも国内でやはり盲目だった彫刻家である小原二三夫の木彫が展示されている。目が見えない状態での彫刻作品というと詳細でリアルな造形なのかと思いきや、彼の作品はかなり抽象的で、写実的な中世の作品に比べ現代アートとして味わうことができるのもまた印象的でもある。

展示室はシンプルだが味わい深い

東京都内では渋谷にあるギャラリーTOMは同じように触れる展示を行なっている歴史あるギャラリーである。ふれる博物館のスタッフの方からも知られており、他にも渋谷公園通りギャラリーでも同じように企画展として時期によっては触れる美術展示を行なっているのだという。
普段なかなか体験できない博物館であり、実際に訪れた際にも盲学校の先生が訪れて鑑賞していたのが印象深い。トイレは多目的トイレでウォシュレット式。

目を閉じて触れてみると新たな発見が

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