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『光る君へ』感想 道長の原点

『光る君へ』はまっております。

先日の第9回「遠くの国」では直秀の死去というまさかの展開に、全国のファンが「なおひでーーー」と叫んだことでしょう。

私もそうでした。

でも、叫び続けているうちに「なおひでーーー」から「みちながーーー」に変わって行ったのです。

直秀の死は、道長が検非違使に賄賂を渡すという「確実に直秀が放免されるように」との計らいが、まさかの藤原氏の御曹司が盗賊を助ける理由はないし? これは軽い刑で済まさずに確実に殺せ、というメッセージと考えた検非違使の長が、ふだんならしない「死罪」をあえてやった、と考えられます。


道長の未熟さが、思慮の足りなさが、かえって最悪の事態を引き起こしてしまった。

咎めるべきは自分自身、恨むべきも自分自身というもっと辛いことになってしまった。

こういうことを経験しなければ気づかないことなんでしょうが、それにしてもあまりに大きな犠牲をはらってしまった。

まさに悔やんでも悔やみきれず、今後生涯にわたってわすれることのできないこととなってしまった。

現実的な話としては、道長のような貴族が、死人を捨てに行くような鳥戸野に行くはずがなく、死体をさわるなんてありえないことですけれど、でもそれをねじ伏せる物語の力。

そして、歴史の中で藤原道長は当時誰もがなしえなかった大権力を手に入れることになります。

実際のところ、道長がそういう権力を手中におさめられた理由が何なのか、運だったのか、本人の才能だったのか、なにかそこにたどり着かねばならない理由があったのか。ほんとのところはわかりません。

しかし、この「光る君へ」の中でも道長は、偉くなる理由ができてしまったのです。

力がなくては、大切な人を守ることができない。

無力だった自分のこの大きな過ちを少しでも拭うためには、世の中を変えられるくらいの力をもたなくてはならない。


史上初、三代続けて娘を中宮の地位につかせ、絶大なる力を得た太政大臣・藤原道長の原点をこんな風に創作することで、道長という人物がとても立体的に見えたのでした。




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