奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みず…

奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みずほ不動産販売(株)専務取締役。 現 日弁連信託センター委員、(株)タムロン社外監査役、理想科学工業(株)社外監査役、(株)熊谷組社外取締役。

最近の記事

社外役員の出番

 社外役員としては女性が人気だ。女性ゼロだった企業としてはキャノンの記憶が新しい。超大物御手洗氏の再任は50%ぎりぎりの薄氷だった。いつまでも「数合わせ」批判をしていては自らの地位が危い。  もうひとつ感じるのは、企業は安い人が好き、ということだ。特にスタンダード以下はそのようだ。安い報酬で取締役会では余計な事を言わずにお行儀よくしている人が一番なのだろう。  社外役員が役に立つのは平時ではなくて非常時であると思う。不祥事が起きたり、赤字や無配になるような時だ。安かろう悪

    • 集中に向かう世界株指数

       日本株15銘柄が全世界株指数から外された(5月16日日経)。円安を主因としてドルベースの時価総額が減ったのが主因とされる。  前にこのコラムで中国株低迷の表れとして、同指数から中国株56銘柄が外されたことを書いた記憶がある。日本株については円安が主因とはいえ他国を笑ってはいられない。  ちなみに米国株も15銘柄が外された。今回全体で79銘柄減少する。ようするに時価総額は一部の銘柄群への集中に向かっているということだ。全世界株指数といってもそんなに分散してはいない。 鳥

      • 総合職と一般職

         総合職と一般職の処遇に差をつけるのは、間接的な男女差別にあたるとの判決が出た(5月14日日経)。広瀬すずさんのCMでお馴染みのAGCの子会社が舞台である。  いうまでもなく総合職=男性、一般職=女性の職種だ。この職種分類は男女差別を正当化する制度であったがこれが否定された。いまだこの分類を残している体質の古い会社の人事部は対応を迫られるだろう。  原告の女性は、AGCの株主総会でも質問者として声を上げていた方ではないかと推測する。大会社に一人で立ち向かった勇気はすばらし

        • CSR ESG SDGsさて

           企業経営にかかわる者としてはあるまじき状態かもしれない。ただ、かつてのCSR、その後ESG、さらにSDGs 最近では単にsustainable 。これらの関係が分からない。後者は前者の発展形なのか、包含関係なのか、はたまた異なる概念なのか。  いずれにせよ、企業外部者が問題にするのはE(環境)のようだ。ただ、これも全世界一枚岩というわけではない。一枚岩どころかアメリカでは社会分断のひとつの象徴だ。トランプ氏が大統領になって一連の環境政策が否定されて時間が経つと、親あるいは

          介護職不足

           休日の朝7時、近所のご老人の突然の訪問を受けた。  認知症患者が高齢者の7人に1人になるとの試算がある(5月9日日経)。介護職が絶対的に不足する。幼児保育も手間はかかるが老人介護ほどではないだろう。だいいち可愛いし。機械に頼って画一的な介護をすると人権が問題にされそうだ。いずれにせよ、相当な高処遇でないと介護職の不足は解消されないだろう。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          オアシスの提案力

           アクティビストとして注目を集めているオアシスが、アインHDの株式を15%保有したとの小さな記事があった(5月2日日経)。ネット情報では、オアシスは、30銘柄くらいの企業の相応の株数を保有している。アクティビストとしていろいろな注文を付けているのだろう。  しかし、保有企業は業種もバラバラだ。各社で強みも課題もバラバラだろう。これだけ手を広げてしまって、各社の現経営陣を差し置いて具体的な提案ができるのだろうか。  結局「配当上げろ、自己資本減らせ(≒株価上げろ)」という誰

          退職代行繁盛

           ゴールデンウィークが明けて会社に行きたくなくなった人が増えて、退職代行業が繁盛しているらしい。この業務が生まれたときに弁護士法違反が懸念されていた。しかし会社と交渉に至らないように寸止めしたり、バックアップに弁護士と提携したりして上手くやっているのだろう。  「最後のけじめくらい自分でつけろ」との良識的な意見もある。しかし、退職意向を自分で伝えられる(しかも面前で)人は、そもそも入社してすぐにやめたりしないだろう。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良

          伊藤忠ビッグモーター救済はどうなるか

           伊藤忠によるビッグモーターの救済スキームが明らかになった(5月2日日経)。しかし企業の風土、体質変革は大変だ。長く務めている者ほど同社の違法体質は染みついているだろう。稲盛さんがJALを救済したが、JALの体質といっても収益認識が甘いなどというものであって、もちろん違法体質ではない。伊藤忠派遣50人の幹部で従業員4,200人に染みついた体質を変えられるか、壮大な実験だ。  しばらくは、伊藤忠から来た幹部は、現場から上がってくる不祥事報告、顧客クレームなどに仰天する日々が続

          伊藤忠ビッグモーター救済はどうなるか

          女性役員比率

           12月決算の東証プライム上場企業の内、女性役員比率が2030年度政府目標の30%を上回っている企業は全体の9%にとどまる(5月2日日経)。  女性役員を短期間で内部昇格により確保するのは困難だろう。特に「男の職場」とされていた企業では。とすれば社外役員に頼ることになる。周囲でも女性弁護士や女性会計士はひっぱりだこだ。  米国では監査委員のうち一人には会計の知識が求められる。日本でも同様に監査等委員や監査役には会計の知識があったほうがいい。女性会計士の第二の人生は明るい。

          ゴールデンウィーク中の学校

           ゴールデンウィーク中の土曜日と平日も学校は営業?しているようだ。お客さんである子どもが来るから対面サービス業をする先生も出勤する。対して、祝日の間の平日は全て休みにして、ゴールデンウィークどころかゴールデン2ウィークスに近い運用をしている会社も少なくない。  先生の処遇改善が叫ばれて久しい。給与も残業も大事だが休暇も大事だろう。先生の処遇が良いことから先生の質が高く子供の教育レベルも高いフィンランドは、幸福度ランキングも世界一だ。ロシアの脅威に晒されながら。 鳥飼総合法

          介入か?それでどうする?

           為替は160円まで買われて、154円まで急落した。為替介入がうわさされている。  ゴールデンウイーク明けに相場の景色が変わっていた、というのは相場関係者が多く経験するところだ。世界中に輸出入、投資などに基づく莫大な量の為替需要があり、これらをすべて当局が介入によって吸収できるはずもない。介入に従うのか、逆らうのかはその時々の相場模様次第だ。短期的な値動きの本質はゲームであることに変わりはない。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          資産運用教育

           みずほは社員の年金制度をDC(社員が運用責任を負う)に一本化する。同時に資産運用教育も充実させる(4月26日日経)。大手金融機関でさえ社員の資産運用の知識が不足しているという認識だ。金融以外の業種ではなおさらだろう。  ちなみに、筆者はコンプライアンスや不正防止などの法律セミナーなどやるが、資産運用とそのリスク管理の経験があるので、最後に短時間資産運用にかかわることを話すことがある。するとこちらの方がずっと食いつきがいい。法律はどこか他人事で、お金はあくまでも自分事なのだ

          EVは解なのか

           テスラは大苦戦している。EV全体も失速している。EVが順調にシェアを伸ばしていけば、テスラと中国BYDの2強になるだろうとの予測があった。どちらも外れ、EV界は中国BYDに支配されそうだ。太陽光パネルの二の舞か。  地球温暖化なのか。それを止めるのに人類は一致団結できるのか。その解としてEVなのか。それぞれの段階で疑問が解けない。トランプ氏ほど極端ではないにしろ、一部の活動家を除いて確信を持っている人の方が少ないのではないだろうか。そのような心情の中で、不便と高価格を我慢

          物言う社外取締役

           機関投資家からの要請で、社外取締役として面談・意見交換を行った。  これまで、社外取締役といえば、大所高所たる安全地帯にいて、ときたまご高説を垂れるという位置づけであったように思う。しかしこれからはそうはいかないようだ。「戦う」社外取締役までは求められていないが、社内外に「物言う」社外取締役であることは求められつつある。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          内部通報こそ切り札

           内部通報の活用があまり進んでおらず、通報者の30%程度が通報したことを後悔しているとの調査結果がある(4月20日日経)。  上級管理職が不正を働くと、その発見はほぼ内部通報による場合に限られる。特に、社長、支店長や現法長などによる犯罪行為はそうだ。「経営者による内部統制の無効化リスク」として内部管理の教科書にも定義されている。この内部通報を司るのはコンプライアンス部門や内部監査部門などだろう。同部門は、通報しやすいか、通報者に不利益が及んでいないかなど、制度の運用が適正に

          紅麹の影響はどこまで

           紅麹が問題となった小林製薬は、再発防止策を取締役会で定期に話し合うことにしたそうだ(4月16日日経)。よくある「・・・委員会」の設置と同類の「みそぎ」の一つだろう。  同記事によれば、小林製薬の紅麹関連以外のサプリでも売上が落ちている商品があるようだ。文字通りサプリメント(補助)であり必須食品でも薬でもないから、消費者は危険を感じれば購入を控えるだろう。他社のサプリにも影響は及ぶのだろうか。おそらく一斉に自社の製造工程や含有要素の安全確認をしているところだろう。 鳥飼総