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みてね デザイン組織の変遷とデザインマネージャーの振り返り

2024年1月末をもってデザインマネージャーのバトンを後任の方々に渡しました。振り返りも兼ねて、みてねの開発当初から現在までのデザイン組織の移り変わり、取り組みをまとめてみます。

目次

みてねについて
デザイン組織の人数推移
事業の立ち上げ期
デザインチームの発足、マネージャーへ
デザイン組織の成長
今後に向けて

みてねについて

みてねのサービスイメージ

みてねは子どもの写真や動画を家族に共有し、コミュニケーションをして楽しんでいただく家族アルバムサービスです。
何気ない日常の子どもの様子を家族に共有し、それをきっかけにコミュニケーションを楽しむ。その積み重ねがいつの間にか家族にとってかけがえのないアルバムになっていく、そういったコンセプトのサービスです。

我が家も子どもが少しずつ大きくなってきており、小さかった頃の毎日がどれだけ貴重だったのか、みてねを見ながら感じています。(大きくなってもかわいいです)

みてねが提供している商品やサービス

スマホのアルバムに加え、思い出を手に取って家族と一緒に振り返ったり、部屋に飾って楽しんでいただきたいという思いから、写真プリントや、フォトブックなどの写真商品を提供したり、みてね みまもりGPSみてねコールドクターなど、家族が安心・安全に暮らせるサービスも展開しています。

みてねの利用者数推移

みてねは2015年にリリースされ、もうすぐ9年を迎えようとしています。2023年11月現在、世界中で2,000万人を超えるユーザーの方々にご利用いただいており、ここ数年で海外ユーザーの割合も増えてきています。みてねはミッションとして「世界中の家族のこころのインフラをつくる」を掲げているのですが、まさにこれを実現していくために、チャレンジングなフェーズを迎えているように思います。

デザイン組織の人数推移

みてねのデザイン組織が、どのように移り変わってきたのかをわかりやすくするために、プロジェクト開始から現在までのデザイナーの人数推移をグラフ化してみました。

デザイナーの人数推移

プロジェクト発足時、1人だったデザイナーは年々増えていき、2024年3月現在は14人となっています。開発開始からの10年間を振り返ると、大きく3つの段階があったように思ったので、順番に紹介していきます。

(A) 事業の立ち上げ期

プロジェクト発足時のチーム構成は、プロダクトオーナー、ディレクター、エンジニア x 2、デザイナーの計5人でした。
まさに創業期ということで、プロダクトに必要なことなら職域を意識せず、なんでもやるぞ、という雰囲気があったように思います。
自分自身もエンジニアに教えてもらいながらレイアウトの修正差分を作ったりしていたのは良い思い出です。

デザイナーはひとりだけだったので、セルフマネジメントをしながら、自律的に業務を進めつつ、UIや体験設計を中心に、ロゴやプロモーションデザインなど、幅広い領域に対応していきました。

とても忙しかったですし、カオスなフェーズではありましたが、デザイナーとしてものづくりに純粋に向き合えた期間でもあり、充実していて楽しかったです。

創業期のデザイナーの役割

UI・体験設計

創業期のデザイナーの役割の中心に、UIや体験設計があり、多くの時間をここに費やしていました。モバイルアプリのデザインについてはミクシィ(現MIXI)入社後に携わった2つの新規のアプリ事業の経験が役立ちました。
どちらの事業も失敗に終わってしまいましたが、2つの事業で得た学びをみてねをデザインする上で活かせているように思います。

みてねの開発は、当初からユーザー中心の課題解決プロセス(調査・共感、課題特定、アイデア検討、プロトタイピング、テスト)で進めていました。
プロセスの中でも、ユーザーの課題を解像度高く、網羅的に理解すること、単に理解することを超えて気持ちに共感し、ユーザーが置かれている状況を想像できるくらいまで突き詰めることが重要に思います。
ここがその後のプロセスに活きたと思いますし、今現在も自分の中で大事な基盤となっています。

リリース初期のUI

また、サービスの場合、課題解決するだけでは使い始めてもらったり、使い続けてもらえる理由にはなりづらいと思っていて、課題解決することは大前提に、それを超えてどうしたらもっと喜んでもらえるのだろう?の部分に多くの時間を費やし、考え続けていました。

みてねの開発初期段階や体験設計の詳細は note に書いていますので、興味のある方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

網羅的かつ解像度の高いユーザー理解
ユーザー課題を解像度高く、網羅的に把握する
気持ちに共感し、状況を想像できるレベルまで突き詰める
ここがその後のプロセスの重要な基盤となる

課題解決を超えた独自性、魅力の追求
課題解決だけでは使い始める/使い続ける理由にならない
筋の良い課題解決に加え、サービス体験と自然に馴染む付加価値の追求
どうしたら喜んでもらえるか? 嬉しいだろう?を考え続ける

潜在的ユーザーが抱える課題とみてねの関係

ロゴデザイン

サービス名がひらがなということもあり、ロゴタイプのデザインは苦戦しました。作ってはチームに展開し、フィードバックをもらう、この繰り返しで今のロゴタイプに辿り着いています。

ロゴタイプの試行錯誤

一方、ロゴマークはサービス検討が一定進んでいたことも影響したのか、頭の中にキーワードやモチーフができており、スムーズに進みました。家族のつながりを表す家の屋根、アルバム、みてねのM、人のつながり、これらを組み合わせてできたのが今のロゴマークになっています。
色については、子どもの成長や、子育てを通じて経験する様々な瞬間、感情の移り変わりのイメージから、4つの色を選び、組み合わせています。

ロゴマークのコンセプト

プロモーションデザイン

サービスを作っても使い始めてもらわなければ意味がありません。サービスをより良く知ってもらうために、Webサイトや広告のクリエイティブ、紙媒体やイベントに関するデザインなどにも取り組んでいました。

新しいユーザーを獲得し、サービスを成長させていくための重要な活動ですが、短期的な目線だけではなく、ビジュアルとメッセージに一貫性を持たせ、継続的に認知を広げ、積み上げていくことも大切だと思います。

リリース初期のサービスサイト
リリース初期のプロモーションクリエイティブ


(B)デザイングループ発足、マネージャーへ

サービスリリースから数年が経過し、徐々にデザイナーも増えてきました。組織全体でもメンバーが増えてきており、いくつかのグループができはじめていた頃です。マネジメントレイヤーの必要性が高まっていく中で、自分もマネージャーになっていきました。

過去のマネージャー失敗経験を活かす

自分には過去に一度マネージャーをした経験がありました。20代半ばの頃のことです。当時勤めていた会社に創業まもない時期に入社していたこともあり、会社が大きく成長していく中で任せてもらえたのだと思います。

一方で、マネージャーから直接マネジメントを受けた経験もなく、どんな役割なのかまったくわかっていなかったため、完全に手探りでした。
当時はマネージャー = リーダとして強力にチームやメンバーを率いる人、くらいのイメージで解釈していました。もちろん、こういったタイプのマネージャーの方はいるのですが、自分の性格/タイプとはまったく合わず、理想と現実のギャップに苦しみ、押しつぶされ、自滅してしまいました。人生でいちばんの挫折だったと思います。

支援型マネージャーのイメージ


過去の失敗が頭をよぎる中、2度目のマネージャーをやっていくにあたって、「すべてを自分でやる必要はないし、抱え込む必要もない」というルールを決めて臨みました。当たり前のことではあるのですが、再挑戦するにあたって事前に自分の中で明確にしておきたかったのです。

ちょうどこの頃にサーバントリーダーシップという考え方に出会っています。リーダーのタイプは様々かと思いますが、自分が軸としているのは支援型タイプかと思います。傾聴、共感、精神面や課題解決のサポートなどが特徴となっており、ひかえめな自分の性格ともマッチしていました。

20代の頃にイメージしていたリーダー像はいわゆるカリスマタイプであり、そうなれない自分とのギャップに苦しみました。2度目のマネージャーにチャレンジするにあたり、支援型のリーダーという考え方を知り、自分らしくメンバーを支え、チームで成果を出していくのもありだと思えたのは本当に心の支えになりました。

成長と成果を生むための工夫

チームで成果をあげるための工夫のひとつとして、挙手性によるプロジェクトへのアサインを行っていました。プロジェクト発足のタイミングでチーム全体に周知し、メンバーの中で興味がある人がいれば手を挙げていただく仕組みです。

メンバー自身が挙手をして選んだプロジェクトであれば、熱量高く取り組むことができるはずです。前向きに取り組めることで自然とアウトプットの品質も高まり、その結果、成果にも結びつきやすくなるはずだと考えていました。
メンバーの成長にもつながりやすく、似たような仕事の連続で飽きてしまうことも防げるので、良い仕組みだったように思います。

挙手性によるアサインイメージ

採用の重要性

チームで協力して成果を生み出すために、どのような方にメンバーとして来ていただくかは非常に重要なポイントとなってきます。特に小規模のチームでは、ひとりあたりの影響度が大きくなるため、特別な注意を払う必要があるように思います。

協業のイメージ

みてねが目指している未来や、大切にしている価値観、チームの雰囲気などをお伝えしたり、メンバーにも会っていただきながら、お互いに相性を確認していきます。事業や組織の良い点に加え、課題だと考えているところまで含めて率直にお伝えし、その上で一緒にみてねに向き合っていっていただける方とご縁があればと考えています。

また、希望される方にはカジュアル面談も実施しています。選考プロセスに比べてリラックスした雰囲気でお話しができるので、よりリアルな現場感をお伝えできるように思います。

カジュアル面談を実施する場合、1ステップ増えてしまうことにはなるのですが、転職という大きな意思決定においてはとても大切で意味のある時間になると考えています。できる限りサービスやチーム、メンバーについて理解を深めていただいた上で、選考に進んでいただくかどうかを決めていただけると良いのではと考えています。


(C)デザイン組織の成長

サービスリリースから5年が経過した頃、デザイナーは8名を超え、組織としても本格的に成長をはじめました。この頃を境にして、協業の難しさも出てきたように思います。複数のプロジェクトが並行して走るようにもなり、人数の増加も相まって、難しさに拍車がかかっていたのだと思います。

みてね経済圏の拡大

みてね自体の成長に加えて、経済圏と呼ばれる周辺事業も広がっていきました。具体的には、みてね年賀状みてね みまもり GPSみてねコールドクター出張撮影OKURU、など、みてねの関連サービスです。

これまで、みてねに関するデザインは、事業部内のデザイングループで一定完結していましたが、経済圏全体を通じて関わるデザイナーと協力し、みてねらしさや、品質、体験の一貫性を保っていくことが必要になっていきました。複数チームで協業していくために、これまでのやり方を見直し、変化していくタイミングになっていたのだと思います。

領域ごとにチームを分ける

これまでは、専門性を広げられるメリットや、一体感あるチームづくりを優先し、業務領域を分けていませんでしたが、事業が拡大するにつれて、業務のスイッチングコストが高まったり、専門性を深めにくいなどの構造的な問題が出てきました。

マネジメントに関しても、人が増えた影響もあり、メンバーに対する細やかな配慮が難しくなってきていました。このタイミングで領域ごとにチームを分け、それぞれにリーダーを立てる形に変更しています。

デザイングループをプロダクト/プロモーションの2チーム構成に変更

デザイン原則の制定

チームが大きくなるにつれ、レビューの際に意見がまとまりづらくなったり、新しいメンバーがみてねのデザインの特徴を理解するのに時間がかかってしまったり、課題が出始めていました。これは「みてねらしいデザイン」とは何かが不明瞭だったために起きてしまっていた問題だと思います。

原則を定める以前にデザインの指針がなかったわけではなく、暗黙的には存在していたはずです。チームが大きくなる中、メンバー間の認識の差が徐々に影響し、顕在化していったのだと思います。

デザイン原則だけですべてが解決するわけではないですが、暗黙的であった原則を明文化し、チームで認識合わせできたことは、1つ前進につながったように思います。

みてねのデザイン原則

わたしたちのミッションは「世界中の家族のこころのインフラをつくる」です。みてねがあることで、家族のこころがゆるやかにつながり、ふとしたときに笑顔になったり、気持ちがあたたかくなる瞬間が増えたらと願っています。
みてねの中心には常に子どもや家族、そして日々の営みがあります。人々の気持ちや日常生活に共感し、そっと寄り添えるサービスでありたいと考えています。
いつの日か、世界中の家族に愛され、世代を超えて使われ続けるサービスになるために、みてねを ”みてねらしく” デザインするための大切な価値観を原則にしました。

やさしい
みてねに接するすべての人にとって、やさしいデザインをします。
人や環境を傷つけることなく、誰もが心地よく利用できるようにします。

シンプル
簡単でわかりやすい、シンプルなデザインをします。
もっとも大切なことに注力し、効率的に機能する、簡潔な設計をします。

誠実
あらゆる人々に対して、誠実に向き合います。
事実に基づき、人を欺くことのない正確なコミュニケーションをします。

美しい
デザインの品質に細部までこだわり、丁寧に磨き続けます。
洗練された美しいデザインにより、人々の気持ちや生活を豊かにします。

デザインシステムの構築

デザイン原則制定後、デザインシステムに着手し、プラットフォームごとにコンポーネントを揃えたり、タイポグラフィ、カラー、イラストレーションなどのスタイルを整理をしたり、少しずつ構築を進めていきました。

現在では、デザインシステムができたことにより、複数プロジェクトが並走する中でも、スムーズで効率的な業務遂行ができるようになっています。みてねと周辺事業全体で共通のデザインシステムを活用することにより、課題であった経済圏全体を通じた一貫性のあるユーザー体験の提供、みてねらしさの担保ができるようになってきています。

デザインシステムは、当初からデザイナーとエンジニアのメンバーが自律的に、熱意を持って構築を続けてきたことで、今の形があると思っています。今現在ではチームにとって不可欠なデザインと開発の基盤となっており、本当にありがたいという感謝の気持ちでいっぱいです。

デザインシステムイメージ

レビューガイドラインの制定

みてねでは、デザインの判断はデザインレビューの場とデザイン担当者に大きく委ねられており、例えばデザインマネージャーが最終的な判断をするということにはしていません。そのため、レビューの場が非常に重要になるので、参加者がどのような点に気をつけて臨むべきかをガイドラインとして定めています。

レビューにおいて、サービスに対する思いが強いが故にフィードバックが強くなってしまうこともあると思うのですが、あえて悪いデザインをするデザイナーはいないはずです。どうしたらもっと良くなるだろうという観点のもと、お互いに敬意を持って意見し合えるのが理想だと考えています。

デザインレビューは、対象をより良くしていくことに加え、参加者全員が気づきや、学びを得たり、サービスへの理解を深められる機会でもあります。ガイドラインを定めて終わりではなく、実際に行動に移しながら、いつでも気軽にレビューし合えるような雰囲気作りを継続していけたらと思います。

レビューに出す人
事前準備をしましょう
前提を揃えましょう
レビューの観点を明確にしましょう
こまめにレビューに出しましょう
未完成でも共有しましょう
他の人の脳みそも借りましょう
制作物と自分を切り離して受け取るようにしましょう

レビューを行う人
作り手の意図を紐解きましょう
聞き方や伝え方を工夫しましょう
答えよりも、気づきを与えましょう
悪いデザインをあえて作る人はいないはずです
批判ではなく、批評に重きを置きましょう
敬意を持って向き合いましょう

デザインのジャッジ
デザイングループとしての最終判断はデザインレビューの場と担当デザイナーに大きく委ねたいと考えています。
デザイン担当者とレビュアーは両者ともに責任をもち、サービスの品質や健全性を保つこと、向上させていくことに責務を持って取り組みます。

デザイン組織カルチャーの言語化

チームの規模が大きくなるにつれて、自分たちが大切にしている価値観を言葉にしておくと良いのではと思いはじめていました。現在のメンバーに共通するサービスへの向き合い方や考え方、行動は、チームとしても大切にしたい価値観のはずです。

言葉にして大切にしていくことで、時間とともにチームのカルチャーになっていくはずです。価値観を整理したことにより、どのようなチームかの説明もしやすくなったように思います。

メンバーの思考や行動の共通項が、カルチャーになっていく


今後に向けて

みてねとデザイン組織をより良くしていくために

今後もみてねを世界中の家族に愛され、使い続けてもらえるサービスにしていくために、デザイン組織もさらに変わっていく必要性を感じていました。
振り返ってみれば5年以上もマネジャーをやってきており、マネージャーが変わることで、チームとしても良い変化を生み出せるようにも思いました。

ちょうど同じ時期に自分がプロダクトマネージャーにシフトしていくというプランが出てきたこともあり、このタイミングでマネージャーのバトンを渡していくことが、みてね全体としても良いのではと考え、引き継ぎを決めました。

デザインマネージャーのバトンタッチ

マネージャーの引き継ぎと新しい挑戦

マネージャーは重要な役割であり、チームに与える影響も大きいので、メンバーとの相性を丁寧に確認しながら、1年以上の採用活動と引き継ぎ期間を経て行なっていきました。その結果、2024年2月から無事に新体制に移行することができており、早速良い変化が生まれはじめているように思います。

新しいマネージャーのお二人は人間的に素晴らしいのはもちろん、今後のデザイン組織に必要な経験や能力をお持ちの方々で、現在のチームの良さを残しながら、より素敵なデザインチームになっていくために、メンバーを導いていってくださるはず、と期待しています。

自分自身は今後もデザイン組織に身を置きながら、新しいチャレンジとしてプロダクトマネージャーに挑戦していく予定です。役割は変わりますが、今後もみてねを世界一愛されるサービスにしていくために、熱量高くやっていけたらと思っています。

最後に、マネージャーをこれまでやってこれたのはメンバーのみなさま、事業部全体のみなさまの支えがあったからこそだと思っています。本当にありがとうございました。至らない点が多々あったことは自覚しつつ、今後に活かしていきますので、引き続きよろしくお願いいたします!


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