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SNS Shocking

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「SNS Shocking」は音楽家/記者の小池直也が主宰する記事×ポッドキャストによるハイブリッド・インタビュー企画。取材対象は今は亡き「テレフォンショッキング」を踏襲した紹介… もっと読む
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記事一覧

SNS Shocking#10「諸君、狂いたまえ」(ゲスト:luvis)

何事にもリファレンス過多な現代、人類は前例に縛られ過ぎている。私自身もそうだ。もちろん他人からの影響がゼロのアーティストは存在しえない。だが先人たちが礎を築けたのも自身が狂人であるだけでなく、当然ながらネット上のアーカイブを参照できなかったからだろう。 今や単なる過去の参照は「狂気」と相容れない。なぜなら膨大なデータを持つ生成AIが圧倒的に「正解」だし、圧倒的に「正気」だから。情報過多の令和にクレイジーでいることは困難を極める。リリースから25周年の椎名林檎「丸の内サディス

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SNS Shocking#9「頑張ることに疲れた女性たちへ」(ゲスト:annnk)

拙い自作曲のなかでも「ZipperGirls」という曲が好きだ。“『Zipper』のカヴァーガール、ジッパーを開けないで”というフックの導入は説明するまでもなく、<ファッション誌と服を開閉する機構>を掛けた歌詞。図らずも2023年の今聴くと「可愛い読モだけど、人格までは知りたくない」というルッキズムを歌っているようでもある。 『Zipper』や『CUTiE』は個性的な着こなしや尖ったキャラの読者が多く、「青文字系」の雑誌だと言われる。本カテゴリはきゃりーぱみゅぱみゅ、中田ヤ

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SNS Shocking#8「対抗文化フロム湘南」(ゲスト:Kenshiro Kameyama)

対抗文化=カウンターカルチャー。そのひとつのピークは60年代後半からのいわゆる「サマー・オブ・ラブ」だろう。多くのアーティストたちがロックやフォークで平和を訴えた時代だ。日本でも学生運動が燃え、新宿駅西口でヒッピーたちが歌っていたのは反戦フォークだった。 そして2023年夏、まったく無名のシンガーソングライターの曲がビルボードチャート首位に彗星の如く現れた。それがオリヴァー・アンソニー「Rich Men North Of Richmond」。“リッチモンド”と“リッチ”で韻

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SNS Shocking#7「音楽に己の美学と魂を」(ゲスト:LISACHRIS)

『THE FIRST TAKE』が炎上した。よく考えれば商業音楽でピッチ修正は不可欠だし、そもそも録音済の歌声かもしれないし、本当の1テイク目かさえ定かではない。企画タイトル自体がプロレスだと考えるべきだろう。それは既に昨年、本企画のステイトメントに記した通りだ。 では、それが悪なのだろうか。必ずしも私はそう思わない。当然エディットされた録音物にも感動し得るからである。ただ、音に魔法がかかっていればの話だが……。しかしながら昨今で成功といえば、バズを起こせたか/再生数や動員

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SNS Shocking#6「古い価値観の逆襲」(ゲスト:Yuima Enya)

刹那的なネット記事が「価値観をアップデートせよ」と叫ぶ。もちろん、某中古車屋に代表される旧時代的な組織は在り方を見直すべきだ。そして健康のために有機野菜を食べたり、ヨガやピラティスに通う意識の高い生活も大事だと思う。しかし同様に我々は敢えてジャンクフードを食らう自由も持っている。 1箱600円を超えても趣向を曲げぬ愛煙家たちに聞きたい。これだけ社会から悪習だとされながら、なぜ吸うのか。私からすると君たちは自身の健康と経済を賭して抑圧に抗っているように見える。煙が空間を満たし

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SNS Shocking#5「虚実にある、オリジナル」(ゲスト:堀京太郎)

「音楽はスタイルが大事だ」と言ったのは、ジャズの帝王と呼ばれるマイルス・デイヴィスである。ただ参照アーカイブが腐るほどあり、「新しい」といわれるものの大半が既存の要素の組み合わせな現代において、真に独創的なものを生み出すのは難しい。 しかし「スタイル」の語源は鉄筆「stylus」、つまりペンのこと。これが筆跡を表すようになり、個性という意味に転じた。つまり元来、書式やフォントのイメージであるからして、そもそも無から発想するものではない。要素を自分なりに解釈し、何かしらの新し

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SNS Shocking#4「未知に入らずんば道を得ず」(ゲスト:宮坂遼太郎)

「自分には上位互換がいる」 そんな発言を業界を問わず聞くようになって久しい。ネットやSNSの発達によって同業や同世代の優秀な人材が可視化されたことが理由のひとつだと思う。そして、こうした発言の語尾には対外「だから自分にはできない」という諦念や落胆が隠れている。下位互換のやることに価値はないと考えているのかもしれない。 一方で元来「上には上がいる」という言説に挑み続けてきたのが、アスリートやアーティストだ。たとえ「あの人に君は劣る」と言われても、彼らは走ったり演奏することを

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SNS Shocking#3「創造は具象と抽象にゆらめきぬ」(ゲスト:高橋佑成)

Awich「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR (Prod. Chaki Zulu)」の<Mステ出たから何? ヒットなきゃ続きはない~>におけるラップのリズムは2小節を12等分する、いわゆる2拍3連(12連/8拍)ではない。それよりも約8%遅い2小節を11等分する、敢えていえば2拍2.75連(11連/8拍)だ。これは非常に興味深い現象なのだが、ほぼほぼ議論されずにスルーされている。 それはさておき、Mステ出演とユニークな音楽創造とで本リリッ

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SNS Shocking#2「土着の音よ、次代に鳴れ」(ゲスト:細井徳太郎)

「自分なりのジャズやロックを後世に残したい」 そのような若手音楽家や文化人の発言を、ここ20年ほとんど日本で聞かなかった。そんなことを言えば最後、「ネトウヨ」とか「意識高い」などの表面的な言葉で一蹴されるだろう。だが29歳のギタリスト/シンガー・細井徳太郎は確かにそう語り、こちらの「なぜ、そんなに意識が高くなったの?」という意地悪な質問にも「普通かな」と自然体だった。 我が国における大衆音楽の発展には、西洋音楽やロック、ヒップホップといった流行を日本語に落とし込んだ歴史も

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SNS Shocking#1「誰にも媚びない無敵の人」(ゲスト:秋元修)

我々の生活や身の周りにあふれる音楽。その大多数が4単位のリズムや小節で進行し、ドレミファソラシドで均等にチューニングされたものである。しかし、それらに当てはまらない“揺らぎ”も存在する。律動における「ポリリズム」、音階における「微分音」はその一例だ。 ふたつの概念が揺さぶるのは1拍目と2拍目、もしくはドとド#の間。このミクロな世界はピンチアウトすればするほど無限に広がっており、探究すればするほど新鮮なグルーヴやメロディを違和感とともにもたらす。知覚できるようになれば、喧噪と

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SNS Shocking#0「本企画の発足に際して」

SNSは時にショッキングだ。他人の栄華を見て自分と比較する、そんな現代の病に悩まされる人は多い。しかし「SNS Shocking」とは、そんな憂鬱から来たタイトルではなく、今は亡きテレビ番組「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」に由来する。 「テレフォンショッキング」は1982年10月4日、番組の放送開始とともに司会・タモリ氏の念願だった「アイドルの伊藤つかさに会う」ことを目指し、ゲストの友達を次のゲストとして呼ぶという形式でスタート。それを果たしてからは「吉永小

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