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【予防運動日記】頭部を優先的に見るべき発達学的、比較解剖学的理由

頭の位置は体の前上に位置するため、頭以下全てに影響を及ぼします。
170cmの棒の先端に5kgのボールが乗っかっているのです。
想像するだけでその影響の大きさは理解できると思います。

しかし、頭の位置はかなりの頻度で傾きます。
原因としては、目の影響、耳の影響、咬合の影響、髪型の影響、寝方、スポーツや楽器への対応など、様々な感覚器の左右差や習慣によって。
頭部には感覚器が集中してありますので、その感覚器の左右差というのはとても大きな影響となります。

よく一般の方でも肩の高さが違うというのは気づかれるようですが、それも頭部の傾きの結果として起こっていることが多いです。
骨盤や足の状態もこの頭部の傾きを補正するために代償的に傾いたり偏ったりします。

しかし、医療関係者含めて多くの運動指導者は頭部についてあまり重きを置いていません。
また頭部を評価する術を持っていません。
ですから、頭部に関してはブラックボックスという状態のまま、代償かもしれない歪みについて躍起になって治療しようとするのです。

頭部を見ない理由の一つは、頭部は歯科の分野という医学の細分化の結果です。
頭部は歯科、首から下は医科というような暗黙の了解ができてしまっているのです。
僕も歯科の勉強をするまでは、そこまで頭部を評価することはありませんでした。
理学療法のシラバスの中にもほぼありません。
そういう意味で、これはシステムの問題でもあります。

さて、頭部を見る必要がある理由を重さだけでなく他の点からも説明したいと思います。

発達の視点

発達は、頭尾方向に進むという原則があります。
頭から尻尾に向かって順番に発達するという意味です。

感覚器が頭部に集中していることからも当然と言えば当然です。
生まれたての赤ちゃんは目は見えていませんから、基本的に外界を感じているのは聴覚と触覚です。
触覚もまだ十分に手足は分化されていませんので、基本は聴覚です。
そこから徐々に視覚が発達してきます。
音のなる方、そしてお母さんがいる方という感じで、焦点が定まってきます。

ですから、動きも頭部からおきます。
背骨は魚類や爬虫類と同じく、頭に誘導されていきます。
手足は本当最後の最後ですね。

進化の視点

冒頭に解説した5kgもある頭部が背骨のてっぺんにあるというのは、実は進化の中でヒトが獲得してきた特徴です。
直立している哺乳類はヒト以外にいません。

頭蓋骨の真下に大後頭孔という脊髄が出てくる穴があります。
この真下に穴があるのはヒトだけです。
他の哺乳類は下じゃなくて後方なのです。
このように、進化の中で獲得した特徴こそヒトが独特な移動能力として歩行を獲得した要なのです。

ヒトの頭部は特殊なのです。

姿勢やアライメントを確認するときに頭部をまず確認する必要があります。
それは力学的にそして発達学的に、進化学・比較解剖学的理由から当たり前のことなのです。

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