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太陽に愛された肌の子どもたち


最近公開された実写版リトルマーメイド。
上映が開始されるもっと以前からその配役について賛否両論あったことは、きっとご存じでしょう。

僕もディズニー作品は大好きです。しかしリトルマーメイドは一番好きな作品というわけでもなかったので、「黒人の起用は珍しいな」程度の認識でした。批判も集まっていることを知った際、イギリスで上演された舞台版ハリーポッターのたしか初演時(うろ覚えで申し訳ない)にハーマイオニー役が黒人女性で、それに対して作者のJ.K.ローリング氏が「作中でハーマイオニーは白人である」と書いたことはない!なんて話していたことを思い出した程度でした。アリエルも人魚って設定だったけれど人種の指定はなかったはず。そもそもで人魚に人種の概念が当てはまるのかもわからない。

そうでなくても、コミックスやアニメ作品を実写化するにあたりキャスティングでブーイングが巻き起こるのは、まぁよくあることで。リトルマーメイドの熱狂的なファンが自身の解釈との「解釈違い」によって、「思ってたんと違う」というのは大いに結構な話であるとオタク気質の僕は考えています。というのも、僕も実写版アラジン公開の際にランプの精ジーニーがゴリゴリにマッチョなウィル・スミスが演じることに大変な抵抗があったから、気持ちがわかる。だって子どもの頃から大好きなんだもの。ずっと憧れてきたのだもの。思ってたのと違うと思ったらそりゃショックですよ。だからそういう、「黒人だから」という理由以外は認められてもいいのではと思う。

一方で、動画SNSなどで黒人の小さなプリンセスたちが、アリエルが自分たちと同じ肌の色をしていることを喜んでいる様子を見て、僕もとても嬉しかった。
僕は通っていた保育園で、肌の色が理由で劇の役を決められたと感じて悲しい思いをしたことがあったから、憧れのプリンセスと自分の肌の色が同じことで喜んでいる子どもたちになんだかほっとした。


僕は“僕”という一人称を使っていますが、心の性別を男女のどちらにも定めていないxジェンダーで、生まれ持った身体は女性。両親は僕を女の子として育てました。
おそらく5歳くらいの頃に通っていた保育園で行われたお遊戯会で、僕はお姫様の役に大抜擢。しかしその劇は白雪姫やシンデレラ、かぐや姫ではなく「シンドバッドの冒険」。幼少期から───なんなら成人してからも僕は人よりも日に焼けた色をしていたので、子どもの頃はそのことで「ガイジン※主に黒人という意味」と控えめに言って揶揄われてきました。
だから子どもながらに「色が黒いから、この話のお姫様に選ばれたんだ」と思ったのを覚えています。本当は違うかもしれないけれど、「肌の色で役を選ばれた」と感じたのはなかなかにショックで。もしかしたら肌の色で揶揄われる僕に、「お姫様と一緒だよ!」と言いたかったのかもしれないけれど結局それも僕の肌が黒いからじゃないか、と思ってしまっていました。
本当は仲良しの友だちと一緒に、ジーニーに似た役どころの「宝石の妖精」の役がやりたかったと先生に言うも、却下。当時お気に入りのクラスメイトの男の子(可愛くて好きだった)が一緒に王子様の役をやるからと説得され、そのままお姫様を演じました。

因みに小学校に上がってからも「ガイジン」という揶揄いは時折あり、「まっくろくろすけ」と呼んだクラスメイトとケンカして、相手が池に落ちたことで僕だけが怒られたこともありました。
中学に上がってからの社会科見学で訪れた幼稚園では園児たちにも「ガイジンなの?」と言われたのも嫌な思い出です。

今は前ほどは自分の肌の色も気にならなくなりました。大人になってから海やプールなどのレジャーに行かなくなったというのもありますが、大人は大人に向かってわざわざ「ガイジン」なんて揶揄ったりしないというのが一番の理由かもしれません。(わざわざする人は差別に対して相当無頓着で生きてきたのだろうと思います。)
印象深い出来事として、20代の初めに読んだBL作品で褐色の肌を「太陽に愛された肌」と表現していたことがとても心に残っていて。
そうか、僕の肌は太陽に愛されているのか。と、そのたった一文でコンプレックスだったものがなんだか素敵なもののように感じられたのです。
その作品がいわゆる一時創作の商業BLだったか、なにかの二次創作作品だったかすらも今は覚えておらず、ただ「BLだった」という記憶のみなので作品をお伝え出来ず申し訳ないです。

話がそれてしまいましたが、肌の色でとやかく言われ、「私は肌が黒いからこの役はやれない」「肌が黒いから選ばれたんだ」なんて子どもたちに考えさせる世の中はどうなの。

海外のディズニーランドのショーの動画も好きでよくYouTubeで観ていますが、海外のパーク、特にアメリカでは「王子様と魔法のキス」のティアナや、「モアナと伝説の海」のモアナといった有色人種のヒロインが日本よりも人気があるように見えます。日本のパークでは大きく取り扱われてこなかった彼女たちの扱いはパレードのフロートやショーの演出も良いもので、大きな歓声も上がる。白人のプリンセスだけではなく、有色人種のプリンセスも求められている様子がひしひしと感じられます。
リトルマーメイドも、そりゃ、原作に忠実なほうが喜ぶ人もいるでしょう。僕もオタクだからオタクとか熱心なファンの味方をしたい。だけど、ディズニーのメインターゲットは僕たち大人のオタクではなく、やっぱり子どもたちであってほしい。だったら今回のリトルマーメイドのキャスティングも、そんなに悪いものではないのでは。

肌の色で選ばれる、選ばれないってやっぱりモヤモヤします。だけどこれでリトルマーメイドはアニメーションと実写、どちらも併せて考えれば肌の色を問わず子供たちはアリエルになることが出来ると思います。
そんな作品があってもいいじゃないですか。たとえ実写が自分の好みに合わなくても、大好きだった原作の素晴らしさはけして失われるようなものではないはずです。「私は実写よりも、原作のアニメ版が好き」で良いではないですか。今回は太陽に愛された肌の子供たちにも楽しんでもらえるアリエルだった、ただそれだけのことだと僕は思います。



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