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映画レポ「ソウルフル・ワールド」:ディズニー版"Perfect Days"

【約3,300文字、写真3枚】
映画館でディズニー映画「ソウルフル・ワールド」を鑑賞しました。その感想を書きます。以下、ネタバレありです。

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結論から言うと、ディズニーには珍しい哲学的、ヒューマンタッチな作品で満足度は高かったです。映画を見た後、深呼吸する機会が増えるでしょう。映像や音、独特の世界観も素晴らしかったです。また、ヴィム・ベンダース監督の映画「Perfect Days」が好きな人は、気に入る作品だと思います。

▼参考)直近で見たディズニー映画の感想

映画名:ソウルフル・ワールド(原題:Soul)
おすすめ度:★★★★☆
監督: ピート・ドクター
上映時間:101分
公開日:(Disney+の配信)2020年12月25日、(劇場公開)米国:2024年1月12日、日本:2024年4月12日
HP:https://www.disney.co.jp/movie/soulfulworld


▶︎鑑賞のきっかけ

2020年に「ソウルフル・ワールド」予告を見て、Disneyでは珍しいシックな雰囲気がすごく面白そう!と思いました。しかし、コロナにより映画館で上映しないことが決定。その後、Disney+で配信されましたが、私はDisney+に入会していないため、見る機会がなく時が過ぎていました。

今年の3月に映画館でドラえもん映画を見た際、本編前の宣伝で、「ソウルフル・ワールド」を4月から映画館で上映すると聞いてびっくり!これは見に行かねば、と思いました。

当時、色んなYoutuber(例:ツッチのムビログ)が絶賛していたことに加え、私の周りでも「ソウルフル・ワールド」を見るために、Disney+へ入会した人もいたため、とても期待していました。

▶︎あらすじ

ニューヨークでジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師ジョーは、夢が叶う直前にマンホールに落下してしまう…。彼が迷い込んだのは、ソウル<魂>たちが地上に生まれる前に「どんな自分になるか」を決める世界だった!そこでジョーが出会ったのは、やりたいことを見つけられず、“人間に生まれたくない”と何百年もソウルの世界に留まっている“22番”と呼ばれるソウル。夢のために地上での人生を取り戻したいジョーは22番に協力を求めるが…奇跡の大冒険を繰り広げる二人が、最後に見つけた<人生のきらめき>とは…?

公式サイトより

要するに、生きたい主人公・ジョーと、生まれたくないソウル・「22番」。ひょんなことから「22番」は、ジョーの体に乗り移り、生きる意味を見出し、新たな生を受けることを決意します。ジョーも生きる意味を「22番」から学び、元の体に戻って、新たな人生を歩み始めます。

ちなみに、原題は「Soul」で、日本語版は「ソウルフル・ワールド」です。「Soul」=「魂」、「ソウルフル・ワールド」=「世界(観)」を意味するため、受け取り方が変わります。メッセージ性を踏まえると「Soul」が正しい気がします。どういう意図があって改変したのでしょうか。

なお、韓国では原題のまま「Soul」、中国では「心灵奇旅心の旅」と「旅」を重視しています。国によって題名が変わるのは面白いです。

▶︎感想

✔️良かった点

良かった点は、1)Disneyでは珍しい哲学的なメッセージ性、2)独特の世界観(死後の世界)、3)リアルとコミカルが上手に融合した表現でした。

✔️作品のメッセージ

私は「ソウルフル・ワールド」のメッセージを一言で言うと「深呼吸しよう」だと思いました。ちなみに、エウレカセブンは「手を繋ぐっていいよね」、エヴァンゲリオンは「オタクよ、外に出ろ」でしょうか。

物語の中盤で、ジョーに乗り移った「22番」は、ピザ、飴、ベーグル、通気口からの風など、ジョーの言う「ただの生活」に感動し、生きる意味を見出します。それを見ていたジョーも、木漏れ日、木から落ちる種子、そよ風など、平凡な生活の中にも「新鮮な何か」を見出すようになりました。

物語の後半で、ジョーはジャズ・クラブで演奏する夢を実現します。しかし、その達成感はジョーが思ったものとは違ったため、喪失感のようなものを感じます。そして、「22番」に自らの命を差し出すことを決心します(結果的に「22番」もジョーも助かります)。

その後、ジョーは自宅の扉を開け「一瞬を大切に」と自ら言い、深呼吸をして物語は幕を閉じました。

この映画では、夢や目標に対する考え方が示されています。しかし、私は「生きる意味」とは何か?を問いかける内容だと思いました。

当たり前の生活の中でも、立ち止まって深呼吸すれば、日々のささやかな喜び、新鮮な発見、センスオブワンダーを感じ取ることができます。辛い、つまらない日々だと感じていても、同じ日はありません。「一瞬を大切に」し、前向きに生きることを提案をしていると思いました。

この考え方は、ヴィム・ヴェンダース監督の映画「Perfect Days」とかなり似ている思いました。「Perfect Days」を事前に見たかどうかで「ソウルフル・ワールド」の感想も変わってくるかもしれません(逆も然り)。

✔️独特な死後の世界観

本作で特徴的なのが、生まれる前、死後の世界が映像で表現されている点です。このような死生観を表現する際、宗教的な背景が大きく影響すると思いました。監督のピート・ドクターは米国出身キリスト教徒だそうです。

人間に生まれる前のソウルは、「カウンセラー」のサポートも得ながら、性格のバッヂ(興奮しやすい、愛想なしなど)を7つ集めて、「どんな自分になるか」が決められます。

メーテルリンク(ベルギー人)の「青い鳥」でも、生まれる前に何になるか決められているシーンがあります。なお、仏教では、生まれた瞬間に白紙になる、と聞いたことがあります。本作の世界観は興味深いと思いました。しかし、私は、生まれる前から運命が決まっているのは腑に落ちないですね🤔

✔️おしゃれなデザイン

ジェリーに囲まれる「22番」とジョー(画像引用

キャラクターの中でも、カウンセラー・ジェリーのデザインやセリフがおしゃれで気に入りました。動画で見ると良さがより伝わると思います。

一方で、人間の顔のデザインに対する違和感がなかなか消えませんでした。カールおじさんというか、ガリガリ君というか…。口が異常に大きく、首が細かったり、手足が長かったり、何だか不気味な印象が拭えませんでした。

(左から)ジョー、カールおじさん、ガリガリ君

また、ピアノの演奏で、複雑なジャズ音楽をリアルな指の動きで表現しているシーンは息を飲みました。「のび太の地球交響楽」では楽器からエフェクトを出して誤魔化していたので、技術の差を歴然と感じました。

✔️その他の気付き

⚫︎リバイバル上映は儲からない
土日にもかかわらず、席は6割くらいしか埋まっていませんでした(9時からの1日1回上映だった影響もあると思いますが)。すでに公開された作品を映画館で見るというニーズはないため、あまり儲からなさそうです。

⚫︎Disneyで渋い作品は儲からない
映画館では、子供は少なく、大人が多かった印象でした。Disneyらしくユーモラスな絵ですが、内容が渋かったからでしょうか。映画のメッセージ「一瞬を大切に」は、人生経験の乏しい子供は理解できないため、結果的に、映画館ではなく、Disney+の配信で正解だったのでは、と思いました。

⚫︎子供は寝ずに全部見られた
子供曰く「すごく楽しかった!もう一回見たい気分。(ジョーと22番が)入れ替わるところが面白かった」とのことでした。今回は、夕方ではなく、朝9時から見たため、子どもは寝ずに起きて見ることができました。

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?ディズニーには珍しく、シックで哲学的なメッセージの映画でした。私は、特に、最後の深呼吸するシーンが印象的でした。一歩立ち止まって「一瞬を大切にする」余裕をもつ。平凡な日々の連続でも、新しい発見で満ちている。"Disneyが「Perfect Days」をつくったら?"とも言える作品だと思いました。ヒューマンタッチな作品が好きな人にはおすすめの作品です。

参考:Youtuber「ツッチ」の感想

*トップ画像の引用元

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