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奈良にめざめる④春日大社・平城宮跡・法華寺

3日目。最終日の朝。
よく歩き、そして走った昨日はぐっすり眠れたようで、さわやかな目覚めです。

身支度を整えて、アパホテルをチェックアウト。
お世話になりました!

ホテルの前の"三条通り"を歩いていると、奈良では珍しい近代洋風建築の建物の姿が目を引きます。
南都銀行本店です。

南都銀行本店
奈良唯一のギリシア様式建築として、大正15年に竣工。

ホテルへの通り道でもあるため、何度となくその前を通り、気になっていた建物。
設計は長野宇平治ながのうへいじ
竣工当時、営業開始に先立ち一般公開された際には、入場制限も設けられるほど人気を博したそうです。

三条通りをそのまま東へ行くと、
左手に興福寺、右手に猿沢池さるさわいけ、と挟まれる形になり、さらにまっすぐ進むと春日大社"一の鳥居"が見えてきます。
奈良旅の終わりは、まず春日大社参拝からです。

猿沢池
興福寺五十二段と、猿沢池のスタバ。

参道を歩くときは鹿たちも一緒です。
ひと懐っこかったり、怖がりだったり。性格もさまざまな神鹿たち。

うれしい。

すでに奈良到着の初日から彼らには心をつかまれていましたが、これはもう飼いたい、、!!
うっかりそんな想いに駆られますが、鹿たちは飼育されているわけではなく、野生なんですね。
冷静さを取り戻し、先に進みます。

春日大社
神鹿像の座る手水舎。
と仲良しの2頭。飼いたい。
春日大社
まるで道案内してくれるかのような子もいる。
飼いたい。

768年に本殿が整備され、本格的に春日社が成立。20年に一度の式年造替では、社殿や調度品の大修理と諸儀式が執り行われ、その歴史は60回を数えます。
60回を越えるのは伊勢神宮と春日大社のみだそうです。1200年続く儀式なんですね。

参道脇に立ち並ぶものも含め、境内には約3000基の燈籠が奉納されていて、室町時代から300年以上経つものも多く残るそうです。

春日大社の燈籠
石燈籠。鹿の意匠が刻まれたものも多い。

特別参拝に申し込むと、中門の前まで進み、より本殿に近い位置で参拝ができます。
その後はぐるりと廻廊をすすみ、終盤では吊り燈籠が幻想的な"藤浪之屋ふじなみのや"にも入ることができます。

春日大社
廻廊と吊り燈籠。
奉納者には戦国武将の名前も見える。
藤浪之屋
藤浪之屋。
吊り燈籠の美しさを体感できる。

ひととおりぐるっとまわりきると、"砂ずりの藤"と呼ばれる銘木の前に戻ってきます。
この時期はまだ花はなく、むき出しの枝が力強く絡まる姿のみですが、満開の季節にまた訪れてみたいところです。

最後は"慶賀門"と呼ばれる朱塗りの門から外へ。この門は、かつては藤原氏の関係者のみがくぐることを許される、特別な門だったそうです。
令和のいまは、丸山氏でも大丈夫。怒られたりしません。

砂ずりの藤
砂ずりの藤。
奥に見えるのが慶賀門。

そのまま奈良公園エリアを抜けて、近鉄奈良駅からバスに乗ります。
大通りをまっすぐ西へ。約15分ほどで、広大な敷地の広がる"朱雀門ひろば"へ到着します。

朱雀門に至る朱雀大路も再現された朱雀門ひろば。
遣唐使船の復原展示などもある。

こうして奈良に来るまで僕はまったく知らなかったのですが、国の特別史跡に指定されている「平城宮跡」では、文化庁主導で遺跡の整備や建造物の復原がすすめられ、国営の「平城宮跡歴史公園」として大規模な整備事業が行われています。

なかでも目玉となる復原事業では、奈良時代当時の材料や工法に限りなく近いものが使われ、往時のままの位置で、規模で、壮大なスケールで立ち上げるプロジェクトが現在進行形ですすめられています。

すすき野に浮かぶ朱雀門。
駆り立てられるロマン。

朱雀門を抜けると近鉄線の踏切があり、さらに遠くに第一次大極殿院だいごくでんいんの入り口、大極門と建設中の東楼が見えます。

まだ竣工して間もない、大極門。
東西楼完成の後、ぐるりと築地で囲われる予定らしい。

公園予定地の総敷地面積は約137haにもおよび、全国共通単位かもしれない東京ドームに換算すると、約39個分にも相当します。

数字にすると逆にピンとこない。というか、
「へー、すごいねー」程度に落ち着いてしまう感がありますが、実際にこの場に立つと、圧倒的なスケール感と同時に、いまはもう廃れてしまった旧都の侘しさや、過去への郷愁といった、複雑な感情や感覚が湧き上がるのを味わえます。

現在は敷地内を近鉄線が通っているので、乗車時は新大宮駅付近の車窓から、大極殿(2010年竣工)、大極門(2022年竣工)、朱雀門(1998年竣工)、の3つの巨大な建造物がとつぜん広野に現れる景観を楽しむことができます。

今後は線路の地下化が予定されているそうなので、この情緒たっぷりの姿を車内から楽しめるのは、いまのうちになりそうです。

東院庭園
東院庭園入り口と、併設する資料館。

向きを変え東へ歩を進めると、やがて東院庭園とういんていえんにたどり着きます。
1967年に発掘された遺構をもとに、1998年に復原完成されました。
日本式庭園の原型とも言われるそうで、質素ではありますが現在まで続く池泉回遊式庭園の楽しみ方がすでに奈良時代に成立していたことが伺えます。緑は少ないですが、梅が可愛らしく咲いていました。

東院庭園
東院庭園。
解説員の方に丁寧に教えてもらいながら回れます。

この公園全体が完成されるまでにはまだ相当な年月が必要かと思われますが、進捗見守りつつ完成の折には是非ともまた立ち寄りたいですね。

東院庭園を出てさらに東へ歩いてみると、ほどなくして法華寺ほっけじへ到着します。
光明皇后が総国分尼寺として創建した、皇室ゆかりの門跡寺院です。

光明皇后といえば聖武天皇の后にしてあの藤原不比等の娘でもありますから、さぞかし豪壮な寺勢を誇ったのではと想像が膨らみますが、現在の伽藍は豊臣氏によって再建されたもので、小じんまりとしながらも上品さを纏う寺院となっています。

法華寺
正式名称は「法華滅罪之寺」というらしい。
迫力ある名前。

本尊の「十一面観音菩薩立像」は国宝指定され、敷地内には2つの庭園や、休憩所として茅葺きの住宅を移築した「光月亭」もあります。
花の季節にまた、、というのを今回の旅で何度思ったことか。

法華寺
休憩所「光月亭」と、庭園「華楽園」。
花の季節にふたたび来よう!

実はこの法華寺、事前に調べて行程に組み込んだわけではなく、GoogleMapを開いたら近くにあった「ちょっと良さげなとこ」に立ち寄ってみただけなのです。
僕は旅先だけじゃなくて、例えば東京にいるときでも、時間が空いたらこの"ちょっと立ち寄ってみる"遊びをするのですが、奈良ではこうやって偶然ふらっと寄ってみたレベルの小規模な寺院でも、こうして1300年の歴史と大変な由緒を持ち、国宝に出会える、ということに驚かされます。

古代史の舞台"奈良"という土地の持つ懐の深さに心を打たれつつ、つぎのバスを待ちます。

こんかいの奈良旅もそろそろラストスパート。
最終日の太陽も、だんだんと傾きはじめました。

丸山直己

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