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奈良にめざめる②法隆寺

ザッ、ザッ、という自分自身の足音と、ゴーーンという優しい鐘の音。
幸いにも2月の割にはさほど寒くはなく、吐く息も白くはない。
軽快に歩を進める朝。6時くらい。

まだ日の出には早く、あたりは真っ暗です。

興福寺南円堂
早朝、興福寺南円堂の鐘が響く。

予想に反して、鐘を撞いていたのは近所に住んでいるらしきおじさんでした!
犬の散歩ついでに寄ったのかなー。

神社仏閣は健康的にめぐります。
開門目指して早朝行動、だいたい17時くらいには閉門に合わせて(半強制的に)撤退。
あとは食事と入浴を残すのみです。
奈良に到着した昨日も、20時には就寝というストイックさでした。

まるでアスリートのような真剣さで迎える、奈良2日目の朝です。

春日大社参道
早朝の春日大社参道。

奈良公園を通り抜け、春日大社参道を早朝散歩。
そういえば、暗くて見えないけど、たぶん鹿のフンが点在してるはず。

まあいいんです、気にしない。見えないから。

春日大社は冬季は7時から参拝ができます。
さらに9時から御本殿特別参拝で中に入れるのですが、今日のところは拝殿参拝のみで、おとなしく引き返します。

そのままホテルには戻らず、本日の目的地へ。

鹿
本日の鹿ちゃん。
朝から元気な子もいれば、夢の中の子もいる。

朝早く、なるべく開門時刻に合わせて行動するのはその方がじっくり見物できるからで、
修学旅行生や、ほかの観光客がまだまばらな時間帯を狙って動きます。
午前10時を過ぎるころからは、そういったライバルたちが次々あらわれますので、"じっくりタイム"が楽しめるスポットは、1日のうちでだいたい1,2ヵ所くらい。

本日の"メインじっくり"は、「法隆寺」に決めました。

奈良駅旧駅舎
JR奈良駅の旧駅舎。
奈良!という感じのナイスデザイン。

法隆寺へは近鉄ではなくJR大和路線を使います。近鉄奈良駅からは徒歩15分ほど。

地図上では、「奈良盆地」の"右上"のほうが奈良駅や奈良公園、法隆寺は"左下"あるいは"左中"のほうにあたり、大和路線はそのまま三室山の脇を抜け大阪環状線まで続いています。

良いことを知った。
今後のために「大阪ルート」を心に留めます。

「法隆寺」駅へは大和路快速で約11分。
さくっと着きます。
歓迎の看板をくぐり、聖徳太子の地、斑鳩いかるがへ足を踏み入れました。

古代史の土地だ、、!!
地名だけでときめいてしまって、すでに静かな興奮状態です。

法隆寺駅
歓迎してくれる「法隆寺」駅。
階段部は入母屋の瓦葺きになっている。

駅前からバスも出てますが、歩いて向かってみることにしました。
ちょうど近くの学校の登校時間帯と重なったようで、学生さんたちに混ざるような形での歩行隊形。

浮いている。
けど気にしない。

観光目的で徒歩で向かうひとって、あんまりいないのでしょうか。
しばらく進むと学生さんたちとも離れ、ひとりぼっちになりました。

細めの道を北へ向かって、国道25線にぶつかったところで西へ。
駅からだいたい20分くらい経ったころ、右手に見えるのが松の木の並木道。

法隆寺参道です。

ぼく以外に人も無く、
松も、砂利も、独り占めして南大門へ。
一歩進むたびに、ときめきが深まる心地です。

法隆寺参道
国道25号の「法隆寺前」交差点から、
南大門まで続く松並木の参道。
法隆寺中門
法隆寺中門と仁王像。後ろに五重塔も見える。
ワクワク感がやばいことになる。

南大門をくぐると、そこはもう飛鳥時代。
7世紀の世界。
昨日の東大寺よりさらに古い、原点のような寺院がそこに広がります。

「美しい。」
思わず口に出したくなる、景観です。
というか口に出しましたが、誰もいないし、気にしない。
それに本当に美しいので、聞かれてもまったく恥ずかしくないです。

日本で最初に世界遺産登録された「法隆寺」は、
西院さいいん東院とういんに伽藍が分かれ、仁王像の立つ中門を中心とした廻廊を持つのは、西院伽藍にあたります。
廻廊に囲まれた形で、金堂、五重塔が立ちます。

中門はくぐらずに左へ。
廻廊入口から中へ入ります。

法隆寺廻廊
廻廊。
中門を起点に東西へ続く。

完璧なプロポーションの美しい建物たち。いつまでも見ていられる気がする。
法隆寺にベタ惚れです。

法隆寺式伽藍配置
灯籠を挟んで南側と北側。
美しすぎる。

東に金堂、西に五重塔の横並びの配置は「法隆寺式伽藍配置ほうりゅうじしきがらんはいち」というそうで、仏さまのエリアと、僧たちの暮らしのエリアを廻廊で隔てる形をとります。
正面の講堂もかつては廻廊の外にありましたが、修復や再建を経て、現在のような廻廊と講堂が繋がる形になったそうです。

世界遺産法隆寺
五重塔。金堂。廻廊。
世界最古の木造建築群の面々。

廻廊の内側は全貌を見渡せる適度な広さで、技巧を凝らすというよりは、全体的に安定感と素朴さがあり、落ち着きを感じます。

ほんと良いなぁぁ、法隆寺。

法隆寺東大門
法隆寺東大門を抜ける。

時の経つのを忘れて、しばし太古の斑鳩へ心を飛ばしていましたが、再び足を動かすことにします。
ありがとう、法隆寺。

東大門をくぐり趣のある通りを抜けると、東院夢殿とういんゆめどの、そして中宮寺ちゅうぐうじが建ちます。

さて、ここまでいくつかの寺院を訪れてきましたが、奈良に来て大きく感動したことのひとつが、本尊はじめ仏像群の数々を実際に目にできるということ。
興福寺の薬師如来像や阿修羅像も、東大寺の大仏も、法隆寺の百済観音も、中宮寺の菩薩半跏像も、本堂や宝物館で相当じっくりと観察できます。
惜しくも写真撮影は禁止されているところがほとんどなので、とにかく心に焼き付けるように目を全開にして見ます。

公式HPで写真見られるんですけどね。

中宮寺
現在の中宮寺。元あった場所からは離れている。
小さなお寺ですが、本尊の菩薩半跏像は本当に素敵。

もともと予定していた滞在時間をあっさりオーバーしましたので、名残惜しくも速歩きでつぎの目的地を目指します。
まずはふたたび国道25号へ出て、「中宮寺前」のバス停へ。GoogleMapでバスの時刻表も確認できるので、とても便利。

「法隆寺駅」からJR大和路線に乗り、ひと駅西へ。
「奈良駅」方面には戻らず、大阪方面の「王寺駅」で近鉄田原本たわらもと線に乗り換えです。

近鉄田原本線
近鉄田原本線。
「王寺駅」から「新王寺駅」まで徒歩で連絡している。

運行間隔は約30分に1本。ちょうど目の前で出発してしまったので、駅員さんにお願いして、いちど改札外に出させてもらいました。

つぎの電車を待つ間に、駅前のVIE DE FRANCEでコーヒーとパンを。

クロワッサンを頬張りつつ、旅のお伴"GoogleMap"を開き、たくさん立ったピンを確認します。

実はぼくのGoogleMapにはおびただしい数のピンが立っていまして、黄色が"行きたいところ"、青が"行ったところ"、と活用しています。
初めての土地、"奈良"にも多くのピンが立ちました。

RPGにあるような、攻略すると地図が埋まっていくみたいな、そんな嬉しさと楽しさを味わえます。

自然と笑みがこぼれてくるので、傍からみると「いかがわしいモノでも見てるのか?」と勘違いされそうですが、気にしない。

楽しいので良いんです。

楽しい時間は過ぎるのも早い。
近鉄線に乗り込み、つぎに目指す"黄色いピン"は、
大和三山のひとつ畝傍山うねびやまの麓に建つ「橿原神宮かしはらじんぐう」です。

丸山直己

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