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「あの人たち、お母さんとお父さんみたい」

こんにちは!前回?数十分前?の記事で娘がテニスキャンプに参加したことについて書きました。

まさに、そのテニスキャンプの帰り道。娘と自転車を漕いでいた時のことでした。トラムの駅横を通った時に、40代くらいのカップルが見つめあってキスをしていました。

「あの人たち、お母さんとお父さんみたい」

と娘が一言。

「あ、そう?」と聞く私に「うん」と娘。
娘から見えている私たちの姿がふと感じられた瞬間でした。

テニスキャンプで上手くできなかったこと

テニスキャンプが始まった朝、最初のウォーミングアップとして、地面に置かれたハシゴを指示されたステップを踏んで進んでいくというものがありました。簡単なものからやや高度なものまで、娘は前の子に続きながら、たどたどしくステップを踏んでいたのでした。

帰宅して義則が「今日これやってたな!」と、自分が陸上をしていた時にもやっていたというステップを見せたのですが、娘はその真似が上手にできず悔しがっていました。そこで、義則が励ますつもりで、

「そんな簡単にできひんこともあるから!」

と言ったのでした。

「できない」という言葉に頭が強く反応すると言う娘

その後「ママもやってみるわ!」と言って娘とやってみたのですが、意外とステップが難しく(←ただの運動音痴)、「ちょっとでも出来るんやん、すごいやん」と純粋に驚いていました。娘は私のことはどうでもよくて(おい)、義則のように上手にステップを踏めないことがどうも悔しいらしく(負けず嫌い)、ちょっと涙を浮かべながら練習をして、最終的にはできるようになったのでした。

その後、一緒にお風呂に入った時、
「私は"できない"って言葉を言われると、出来ないんかなって思っちゃうねん」と娘。

「ん?どういうこと?」と聞くと、

「さっきお父さんが簡単に出来ひんって言ったやん?その"出来ひん"って言葉が脳に残るねん」とのこと。

「お父さんは、すぐに出来ないことにショック受けてるんかな〜って思って、そんなにすぐに出来なくても大丈夫やでってつもりで言ったんやとお母さんは思うんやけど?」と聞くと、

「うん、それはわかってる。パパは励ましてくれてるんやろ?でも、その"できない"って言葉が残っちゃうねんな〜」と娘。

なるほど。意図はわかるけど、言葉は引っかかるってことね。その後、「じゃあ、どう言われたい?」と聞いた私に娘は「こんな風に言われたい」という言葉を色々と教えてくれました。
そしてこの会話をきっかけに、娘は色々と話を始めてくれたのでした。

お風呂では深い話をする傾向がある娘

実はこれまで娘は「お風呂」という空間で湯船に浸かっている時に「心の内の話」をすることがよくありました。例えば「さっきのお母さんの言い方は嫌やった」とか「今日、実はこんなことがあってな」とか「お母さんはお父さんのどこが好きなん?」とか「お母さんはお父さんと何で結婚しようと思ったん?」とか。

これは義則にも同様らしく、義則と娘が一緒にお風呂に入っている時は何やら深い話をしている声が聞こえてくることがあります。

ひょっとすると「お風呂」という空間では特にすることがなく、相手と向かい合っているような状態なので、お互いリラックスしていて、娘は「あんな話やこんな話をしてみようかな」という気になるのかもしれません。

トラムの駅で見かけたカップルの話

今日、私はオランダの性教育冊子の翻訳作業をしていたこともあって、娘が帰りに見かけたカップルを私たちのようだと言ったことについて聞いてみようと思いました。

「今日、トラムの駅でいた人たち、お母さんとお父さんみたいやった?」
「うん」
「どの辺がそうやと思ったん?」
「キスしてたやん。お母さんとお父さんよくハグとかキスしてるやん。だから、2人みたいやな〜って」
「お母さんとお父さんがキスしてるの見たら、正直どう思うん?」
「良いと思うよ。仲良いんやな〜って思うから。嫌いな人とキスしいひんやん」
「まぁ、そうやな」
「キスしたりハグしてたら、仲良さそうやし、gescheiden(離婚)しないんやろうな〜って思う。心配しんで良いし。安心って言うの?そういう気持ち。良かった〜みたいな」

なるほど…
まさに、この日に翻訳していた性教育の資料にも書いてあったことを、目の前の自分の子どもが感じているのだとわかった瞬間でした。

「クラスの子のパパとママがgescheiden?りこん?とか別々で暮らしてるとかよくあるやん。そういうのはうちではないんやなって思えるからさ」

意外と多い、別居と離婚家庭

オランダの離婚率は高いと聞きます。娘のクラスを見ていても4割くらいの家庭は離婚をしていたり、別居していたり。かといって、子どもの子育てに限っては一緒にしていることも多く、離婚と子育ては別問題として捉えている部分も多く見ます。日本でも話題になっている「共同親権」というのが当たり前になりつつあるオランダ。かといって、子どもにとってはそれがかえって混乱になることもあるようです。

娘はクラスメイトの保護者が離婚しているとか、○○と放課後に遊ぶなら何曜日はパパらしいとか、パパとママが別々に暮らし始めたって△△が言ってた…など、色々と赤裸々に伝えてくれます。それも、子どもたちの間で隠すようなことではないからこそ聞こえてくるのだろうとは思いますが、娘は個人的に「うちはそうなってほしくない」という思いがあるのだと教えてくれました。

離婚が悪いとか別居が酷いとかそういう話ではなく、ただ単に娘はこの家族がずっと一緒に暮らしていけることを望んでいるということなのだと思います。

「お母さんとお父さんって離婚しないやんな?」
「今のところそのつもりはないけど、これから先何があってもあり得ないとは言えへんよね。例えばお父さんにお母さん以外に好きな人ができて、お母さんとはもう暮らせへんって言われたら、ひょっとしたら離婚するかもしれんし」
「そんなん酷い。家に鍵かけてお父さんを外に出さんかったら良い」

いかにも小学生らしい考えやな。笑
娘には世の中には「絶対」は存在しないことを伝えています。それは夫婦間の愛情に関しても同じ。

「お父さんの気持ちが別の人にあるのに家に鍵かけたって意味なくない?笑 そんなことしたってお母さんのこと好きになってはくれへんやろ〜。」
「そうか…」
「ずっと好き同士でいるためには、お母さんがお父さんのことを毎日大切にするっていうのが必要やし、お父さんがお母さんのことを同じように大切にするっていうことの積み重ねやと、お母さんとお父さんはいつも話してるよ。お母さん、お父さんのこと好きやと思う?」
「うん、お母さんお父さんのことめっちゃ好きやん」
「お父さんは?」
「お父さんもお母さんのことめっちゃ好きやと思うよ」
「うん。お母さんたちもお互いそう思ってるよ。だから、ハグもするしキスもするんやろうね。ま、今のところは大丈夫。心配には及びません。笑」
「よかった〜。離婚しませんように」
「お互い気をつけます〜」

「こうしてほしい」に耳を傾ける

他にも娘は「私が何かをしない時、例えば勉強のプリントを後回しにした時とかに"もうやらんで良いよ"って言われるのは結構傷つく」とか。笑

「お母さんと言い合いになって悲しくなって部屋に行った時に、お母さんが話をしようと思った時はノックして"今なら話せる?"って聞いて欲しい」とか。笑(無神経にドアを開けがち←)

「その時にまだ泣いてる感じがしたら、あと5分放っておいて欲しい」とか。笑(まだ落ち着いてないのに話しかけがちの模様←)

「私が何か言おうと思ってる時に、畳み掛けるようにお母さんが何か言ってくる時は悲しい気持ちになる」とか。笑

自分の母親としての行動を娘は意外と冷静に分析していて「あぁして欲しい」とか「こうして欲しい」ということを話してくれたことに感謝しました。

「わかってると思うけど、お母さんも完璧じゃないんよね〜。今日のあなたの育てるのはお母さんもお父さんも初めてやねん。でも、こうして欲しいって言われたら、次からはこうしよって思えるから助かる。気持ちを傷つけてたことがあったんやね、ごめんね。次からは言われたように気をつけます!」と言うと、

「うん、私もごめんねいっぱいある。お母さん大好き」

と湯船で抱き合ったのでした。

娘が用意した「気持ちポスト」

娘は結構な平和主義者で、聞かされる悩みはだいたい友だちの間に板挟みになってしんどいというエピソードです。「あっちの気持ちもわかるし、こっちの気持ちもわかる」という状態に悩むのが典型。

何とか皆んながしこりのように残った気持ち外にを吐き出して、みんなでそれを解決できたら…と思った彼女は、数週間前に、クラスに「気持ちポスト」というのを設置したらしく。嬉しかったことや辛かったこと、こんなのが嫌だったというのを書いてポストに入れることで、それを読んだ人たちで何とかしてみようよというのがコンセプトらしいです。

同時にそれが家庭内にも設置されていました。笑

まぁ、設置された割にここまでほぼ活用されてこなかったのですが。爆

気持ちポスト

今日、お風呂を上がった後に「ポスト入れました」と言われて(あれ、ポストってそういうもんやったっけ)。笑

「では、拝見させていただきます」と開いたところ、こんなお手紙が入っていました。

何故か"good job"と褒められる母

「きょうは はなし きいてくてれ ありがとう」

「あの言い方は傷ついた」も「ありがとう」も「大好き」も、娘がこの国の学校で学んでいるように家庭でも学んで欲しい。そういう想いを持って、私たち夫婦は、娘の前で包み隠さず「パートナーシップ」を平和的に構築する過程を見せてきました。

相手に声を荒げたり、罵ったりすることは絶対にしない。夫婦内で起きたコンフリクトやもめ事は、かならず平和的に解決するように心がける。そして同時に、仲直りのプロセス、そして夫婦間の愛情表現も大切にしてきたつもりです。

今も手を繋いで歩く私の両親は、どんなことがあっても別々のベッドで眠ることはありませんでした。それが私の中には「夫婦のかたち」として鮮明に残っているような気がします。

「あの人たち、お母さんとお父さんみたい」

そう表現した「あの人たち」が娘が見る私たちのイメージだということ。
私たちの関係を心配する必要が今はないからこそ、ひょっとして言えるのかもしれない「あの言い方は傷ついた」なんていう親への意見。

別々なようで、繋がっているようで。
生活の中にある色々はループのようなもの。

娘はいつも大切なことを教えてくれます。
さて、これから気持ちポストに私もお返事を書いてみようかな。
朝方、娘が嬉しそうに手紙を開くのを想像しながら、そう思うのでした。

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