石橋直子

昔話と詩吟が好きな高校国語教員です。隠岐に残る不思議な浦島伝説の調査をしています。『お…

石橋直子

昔話と詩吟が好きな高校国語教員です。隠岐に残る不思議な浦島伝説の調査をしています。『おしゃべりな出席簿』今井印刷から出版。https://amzn.asia/d/hFdtOI4

マガジン

  • とらねこの共同マガジン『トランスミッションⅠ』

    • 108,753本

    とらねこが運営する共同マガジン。グループ合計で参加者1,100名を超えました。フォロワ数2000名以上、120,000記事以上が収録されています。🌱コンテンツを広めたい方の参加をお待ちしています。🌱マナー:①連続投稿はしない②社会一般的に不適切な記事は投稿しない③トップ画面は変えない。参加希望の方は,マガジンの固定記事からコメントしてね(ง •̀ω•́)ง

  • おしゃべりな出席簿

    現役高校教員による学校エッセイ「おしゃべりな出席簿」の記事をまとめました。

最近の記事

中編小説 笠地蔵異聞(4)

はじめに 笠地蔵異聞の第四話です。前の話はこちらからどうぞ。 ―――――――――― 和宏は定年退職を機に移住したA町で、自治会費の集金に来た男から例大祭の行列に加わらないかと声をかけられた。提灯やらのぼりやらをもって、行列を作ればいいらしい。たった一度の打ち合わせでは、行列の構成について簡単な説明を受け、並び順を決め、ためしに公民館周りをぐるぐると歩いてみた。例大祭は夏日となり、スーツ姿で町を練り歩いた和宏は、散会ののち、商店の軒先で販売されていた缶ビールで喉を潤しながら周

    • 出席簿#10「見えない応援を受けとめて」

      【月曜更新…ならず】「おしゃべりな出席簿」5月27日、月曜日。 5月もまもなく終わります。 ↑…と書き始め、下書きはほぼ完成していたのに…。 気づいたら寝てしまっていて、 いまは5月28日火曜日の午前2時半。 3月末にnoteをはじめてから、毎週月木更新を保っていたので、静かにショックを受けています……。が、まあ、ここのところちょっとハードスケジュールだったので、身体が休息を求めていたのだと思うことにして、次回からは予定通りアップできるようにしようと思います。 さて、県総

      • 中編小説 笠地蔵異聞(3)

        はじめに 笠地蔵異聞の第三話です。前の話はこちらからどうぞ。 ―――――――――― もう、50年ちかくも前のことになる。和宏は母の死を機に高校を中退して上京し、放送局の下働きを始めた。謳歌したわけでもない学生生活だったが、いくばくかの屈託は残った。東京まで学生帽をもっていったのはどのような心理だったか。ある給料日、帰路につき、最寄り駅で電車を降りた和宏は、支給されたばかりの給料袋がなくなっていることに気づく。あちこちに借金をしながらなんとか生活をしていた。財布には小銭ばかり

        • 出席簿#09「校内大会 声援と軌跡を感じ」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」5月20日、月曜日。 気がつけば5月も折り返しですね。 以前も少し書いたのですが、私はずっと弓道部の顧問をしていました。いまは育休中で、しばらく高校現場からは遠ざかっているのですが、弓道部ってとにかく4月5月は大会が多いんですよね。春休み中から各地の弓友会による大会が毎週末のようにあって、中国大会県予選。それが終わってすぐに昇段審査、連休中も練習試合に明け暮れて、中間試験期間に突入。試験が開けたら今度は一気に学校全体が高校総体ムード……。

        中編小説 笠地蔵異聞(4)

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          中編小説 笠地蔵異聞(2)

          はじめに 笠地蔵異聞の第二話です。第一話から読みたい方はこちらからどうぞ。 ―――――――――― 奇妙な地蔵たちを見た日の昼下がり、和宏は少しまどろんだ。 夢の中に母がいた。薄闇のなか、笠地蔵の昔話をしてくれていた。夢の中で幼子だった自分は、いつしか地蔵になっていた。周りは角帽をかぶっていた。自分もかぶっていた。ほの暗さと母の声に安らぎを覚えながら、野道にたたずんでいた。ところがふいに、黒い雲が湧き上って、空がおおわれた。雷鳴がとどろいた。と、思ったら大きな毛むくじゃらの

          中編小説 笠地蔵異聞(2)

          出席簿#08「寮に流れる不思議な時間」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」5月13日、月曜日。 あいにくの雨となった週末でしたが いかがお過ごしでしたか? 私はかつて勤務をしていた縁で、隠岐に行ってきました。数えてみると隠岐をあとにして、もう6年になります(といっても、実は当地で詩吟の指導をしている関係で、月に一回は海士の地に出かけているのですが、この話はまた追って……)。3年生を送り出して同時に離任したので、担任した生徒たちで大学や短大、専門学校に進学をした子たちも、だいたい就職しているころなのですが、何人か島

          出席簿#08「寮に流れる不思議な時間」

          中編小説 笠地蔵異聞(1)

          はじめに 隠岐に住んでいた頃に書いた中編小説を、これから何回かに分けて投稿していこうと思い立ち、第1回目を公開してみました。島で見た風景、耳にした話を散りばめつつ、笠地蔵に着想を得てまとめたものです。昔話の面白さも感じていただけたら嬉しく思います。 ―――――――――― 定年退職を機に妻と二人で地方に移住した和宏は、ある日の散歩中、道ばたの地蔵を見て足を止める。赤い頭巾をかぶって並んだ地蔵たち、そのなかの一体だけ頭巾をかぶっていなかったのが妙に気にかかった。「どうして、あい

          中編小説 笠地蔵異聞(1)

          出席簿#07「遠足の朝 止まったフェリー」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」5月6日、月曜日。 連休はいかがお過ごしでしたか? 島根県西部に住んでいる私は、 子どもと神楽を見に行きました。 転勤族で、県西部での勤務は現任校が初めて。 そんな私にとってかなり驚きだったのが、 県西部の神楽文化です。 神事芸能にして、エンタメ要素とサービス精神に満ちた、とても華やかな石見神楽。 小さな子どもたちにとってはヒーローショーのような存在で、客席最前列を子どもたちが陣取っていたり、一緒に踊る子がいたり…。 神楽のことは全く

          出席簿#07「遠足の朝 止まったフェリー」

          古典徒然#01 水辺に見た夢

          はじめに。鬼になろうとした男の悲喜劇。「清水」という狂言がある。主人公の使用人・太郎冠者(たろうかじゃ)は、厄介な水汲みから免れようと、清水のほとりに鬼が出たとウソをつく。ところが真相を確かめようと主人が清水に向かってしまい――。 わが身を映して、少しだけ「変わりたい」と思う。人はいったい何年もの間、この営みを続けてきたのだろう。狂言「清水」は、可笑しいのに、ちょっとほろ苦い、大人の変身の物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー いつもお読みいただきありがとうござい

          古典徒然#01 水辺に見た夢

          出席簿#06「遠足 楽しい出会いを探しに」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」4月29日、月曜日。 先週は少し雨の多い1週間となりました。 筍が旬の、この時期にしとしとと降る雨は、 「筍梅雨(たけのこづゆ)」とも言うのだとか。 先日は公民館の朝市で茹で筍を買いました。 中学生が掘ったものを提供しているというその筍は、 春の香がして、とても美味しかったです。 ようやく春めいてきたと思った矢先に雨が降ると、 少しだけ憂鬱になったりもしますが、 あの筍を育んだ雨だと思えばそれもまたいいか、なんて。 こういう言葉選びって

          出席簿#06「遠足 楽しい出会いを探しに」

          浦島語り#01 蒼い糸の行方

          はじめに。「浦島」という名の恋物語。 なぜ帰った、なぜ託した、なぜ開いた、なぜ別れた。どれか一つでも階段が抜けていれば、結末は変わっていただろうか――。昔話としてよく知られる浦島は、かつて、人間の男と龍宮の女との恋物語だった。そこには別離以外の結末はなかったのだろうか……。  浦島伝承を男女の物語としてとらえ直し、その関係のほころびについて、また、いっとき民衆の願いを反映して語られたとされる幸せな結末について書き散らしたエッセイです。 昔々の白浜で 禁忌の箱が開きました

          浦島語り#01 蒼い糸の行方

          出席簿#05「春の、小さなかけ引き」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」4月22日、月曜日。 早いもので4月も残すところ1週間となりました。 連休のご予定はお決まりですか? 先日、かつての同僚先生とばったり再会しました。 「どうしたんですか?」と聞けば、 「ん?大会帰り」と返されて、 もうそんな時期か……と。 その先生とは部活動の主顧問・副顧問だった仲でした。 4月下旬から多くの運動部では 中国大会県予選が始まります。 かつての同僚先生は、 引率を終えて帰路につくところでした。 さて、学校生活の思い出と言え

          出席簿#05「春の、小さなかけ引き」

          短編小説 紡ぎ虫の糸はしー「蜘蛛の糸」異聞―

          芥川龍之介「蜘蛛の糸」より--考えたこと、ありますか?このときの蜘蛛は何を思ったのかと…… 紡ぎ虫の糸はし音声で楽しみたい方は、こちらからどうぞ。  草木には雨滴が光り、濡れた土の匂いが漂う午後でした。灰色の雲は流れてしまい、弱い日差しと生ぬるい空気が、だれもを惰眠へと誘いました。それは、透き通る糸の上で揺れる彼女についても同じ事でした。 足先にかすかな震えを感じ、蜘蛛は目を覚ましました。その振動はいつまでたっても断続的に伝わってきて、獲物がもはやどこにもいけないほどに絡

          短編小説 紡ぎ虫の糸はしー「蜘蛛の糸」異聞―

          出席簿#04「つながるきっかけ、新しい席」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」4月15日、月曜日。 桜の季節が一瞬で過ぎ去ったかと思えば、 もう初夏を感じさせる日差しが注ぐようになりました。 うちは先日慌てて半袖を出し、ようやく冬物をしまったところ。 寒暖差の大きな先週でしたが、皆さまお元気でしょうか? さて、今月の「おしゃべりな出席簿」は、席替えのお話。 皆さんは席替えって好きでしたか? あるいはもし現役学生の方がいらっしゃるなら、 席替えって好きですか?楽しみですか? 『おしゃべりな出席簿』はこちらからお求めい

          出席簿#04「つながるきっかけ、新しい席」

          松江怪談 夜松の女

          松江怪談 夜松の女音声で楽しみたい方はこちらからどうぞ。  ――松の近くで、煙草を吸ってはいけません。白い女が引き寄せられてくるからです。女が声をかけてきても、返事をしてはいけません。夜に巻き取られてしまうからです……。  ひんやりとした夜気が闇を溶かして、松江の町を包みます。風に乗って、一筋の紫煙が流れてきました。松の下で、一人の男が煙草をくゆらせているのでした。  「お寒うございますね。」せせらぎのような声に、男は、おや、と眉を上げました。いつの間にか、女が隣にい

          松江怪談 夜松の女

          出席簿#03「ちょっと緊張、春の挨拶」

          【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」4月8日、月曜日。新年度が始まって1週間が経ちました。 今日が入学式・入園式というところも多いのではないでしょうか。 外を歩くと、桜並木の優しい表情に春の訪れを感じます。 いよいよ新生活が動き出す、そんな気配があちこちに漂っています。 さて、今月の「おしゃべりな出席簿」は、入学式直後の出来事です。 この時期って春の交通安全週間でもあるんですよね。 こちらをお読みの皆さまも、 交通安全に気をつけて、春を満喫してください。 『おしゃべりな出

          出席簿#03「ちょっと緊張、春の挨拶」