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我の強い資格者は帰る。

会社員を辞め悲惨な失業時代を得て警備員の職に落ち着いたが毎年現任教育を受けなければならない。
講師の「朗読」を聴き、モニターを観る。試験やスキルは要らない。
警備労務者として警備員は定期的に受講しなければならないという法律がある。
しかし有資格者は時間短縮或いは免除される。

梅田事務所には受講者は私一人だった。
講師は大抵警察OBの柔道有段者。
ビートたけし推奨者の私はOBの頭髪が不自然に黒いのが目に写りあきらかに「カツラ」であると即断定した。憂鬱な気分だったが急に嬉しくなった。
しかし物腰は柔らかいが多少緊張する。
マンツーマンなので刑事ドラマの取り調べを彷彿させる。

身の上話の後、朗読、スクリーンの映像。
緊張してる割に眠気が凄くコクリコクリ。

昼からもう一人出席するという。
資格者だという。
3年近く在籍しているので知ってる人なら少しお喋りできるなぁと思っていた。
昼休憩後、その男性はパーティーションでしきられた部屋に入ってきた。
挨拶もない。
後ろを振り向き顔を確認するとやはり知らない顔だった。
男は黄色い筆箱を出して準備し着席する。

警察OBが現れた。
昼からの授業開始。
OBは私と同じように威圧感なくむしろおだやか調子で「資格者」に名前を聴いた。
名前を一文字だけ言い違えた。
あまり聴かない苗字。
「資格者」は言い直す。
カツラ柔道OBが聴く。
「資格者とったのはいつ?」
「忘れました」
男の不機嫌な態度に気づくカツラOB
「困ったやっちゃなぁ」
カツラOBはパーティーション内から出ていき、業務電話で活気ずく事務所の奥に行った。

書類を手にして戻ってきた。
「令和2年だね?」
資格をとった時期を問い直す。
資格者講習だし普通の質問、確認だ。
カツラOBも物腰柔らかい調子で発音してる。
が、男は
「忘れました。」と明らかに不機嫌な調子。
男の態度はあきらかに理不尽、なにか「違う」ものと私は断定した。

カツラO Bもやはり激昂し、
「オッサンやる気ないなら帰れよ」
「横着なやっちゃ!」
大阪府警の激戦の現場を経験した悪を制する刑事にもどり男にそう怒鳴った。
事務所から二人何事かと入ってきた。
男は帰ります。といい何やらぶつぶつ言いながら筆記用具をしまいだす。
「オイどうした?」
男は
名前を間違えたのに謝りもせず講習がどうのこうのと発音したが聴きとれなかった。
男は帰り、事務所の欧米風の彫りの深い顔をした営業の社員は男の後を追って行った。

カツラ府警OBは、すみませんなと私にいい、私もいえ
アレは初めから感じがおかしかったと伝えた。

初見の不機嫌な男の態度は明らかに底の浅い行いだと私は断定した
おそらく業務シフトを詰められその中で講習を受けなければならないといったストレスを他者にぶつけるといったよくある人間の行為に感じたし、資格者の少ない会社で資格を持っているという傲慢、過信から派生した行為かもしれない。

もし男がなにか国家権力や理不尽な資本主義、利益優先の密室社会に対する正当な純粋な怒りなら共感しえたかもしれないが今回の事象は一般のありがちなただの男の不機嫌でそれは間違いと断定した。

帰りは1200円カットに行き美人美容師とビートたけしとブルーハーツとミックジャガーの話をしてスッキリした。
1週間終えトリスハイボールを買い独りの部屋に帰っていった。
明らかに薄くなった髪にホホバオイルを塗り酒を飲んだ。
酢豚を食べたくなったので駅前までいく事にした。
フライ麺は売り切れだった。
美味しかった。
酔い。寝た。
翌日白髪染シャンプーと白髪トリートメントをして乾かしホワイトニングニベアと乾燥気味の皮膚にヘパリン類似物質を塗り昼寝した。

昼寝から覚めタブレット純のラジオを聴くことにした。



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